【書いてみた】コモンビート短編|異聞奇譚~生霊~
・未の刻、昼八つ
子ども達の授業が終わり、生徒達は各寺子屋から自宅や道場へ向かう時間。
『せんせぇさようならぁー!』
『ねぇねぇ聞いたぁ⋯?』
『あのウワサほんとかなぁ⋯?』
『まぁた出たって!怖ぁぁい!』
『きゃーっあははっ!あっ待って転ぶころぶぅ!』
ある寺子屋から、噂好きの女子生徒達が黄色い声をあげながら早歩きで門前へ向かっていった。
ほとんどの生徒は帰宅後、夕陽の頃まで自分で選んだ稽古に励む。
一人ひとり、稽古の内容は様々だ。
例えば。
男子が身体を動かし、体幹の逞しさを感じさせる体術。
剣を持ち、体術に合わせて剣術とする時もある。
女子はプチェチュムと呼ばれる扇や、ハンサンと呼ばれる衣を使いしなやかに舞い踊る。
身体を使うだけではない。
計算や現象を目に映し通し、頭脳を使って的確な答えを素早く弾き出す術。
物語創作や装飾品作成など、手や言葉を使って表現を紡ぐ事もまた“技術”と呼ぶ。
黄大陸はこうして、自らの得意分野を生かし、育み、寄り添い、力をつけ合っていく。
全ては大陸と、大陸の太陽である帝をお守りする事に繋がると信じて。
だが。
日が強く光れば、影がうつる。
そしてその影が、時に不可解な事件を起こす時がある⋯
・酉の刻、暮れ六つ
宮殿周りを中心に夕陽とランタンが灯り始め、やがて大陸全体を神秘に照らす。
それは大人達の仕事や、子ども達の稽古が終わる合図でもある。
『礼!ありがとうございました!』
『また明日な!』
『あ~腹減った~』
『今日の夜市、何があるかなぁ。』
夕陽が沈み、ポツポツとランタンが灯ると。
家路につく黄大陸人達を守る様に、ぱあっと明るく照らす。
火樹銀花と呼ぶに相応しいと、いつか帝も褒めたたえた光景である。
ランタンの下では夜市が活気づき、人々は夕食や食事の材料を買い求めてから家路につくのが習慣だ。
だが、人々を守るこの光が灯る時間は⋯短い。
・戌の刻、宵五つ
さっきまでのランタンのあかりと夜市の活気は消え失せ
ひっそりとした暗闇が景色を塗り替える⋯
・亥の刻、夜四つ
朝日が昇るまで。
大人も子どもも、眠りにつく時間。
そして。
ある寺子屋の師範達の顔が、もうひとつの顔に切り替わる。
一部の人間しか知られる事のない“陰陽師”という不思議な顔に。
「⋯もううわさになってるって事?」
舞師範・沙羅(さら)が切り出した。
「そのようですね。子ども達はうわさ好きですから⋯」
歌師範・新多(あらた)が答える。
「これだけ噂が広まってるなんて⋯あの方の耳にも、もう入っているんじゃ」
「その予感は、残念ながら的中だ。」
この寺子屋の総師範も勤める陰陽師の長・晏朱(あんじゅ)の手から、黄色と紫の彩りがされた巻物が軽くぽんと放り投げられる。
「勅令だ。くだんの件、早急に調べ、解決せよ。だと。」
やはり来たか⋯
という、面倒事を押し付けられた空気になる。
「あの方、いつもいつもどこから嗅ぎつけてくるのか⋯」
「失礼だぞ。仮にも帝だ。」
「⋯仮にもって⋯」
「⋯ごほん。話をまとめる。羅針盤を出してくれ。」
「はいはい。」
沙羅は佩玉(はいぎょく・腰飾り)を手に取り、封印を解いて陰陽師の道具に姿を変えた。
「まず。暮れ六つの時間。
剣術専攻の男子生徒が一人で夜市の買い物後に自宅に向かう途中に見た⋯
場所はここ。顔は見えなかったけど、ぼんやりした青白い光が人の形をしてたんですって。」
沙羅が羅針盤の場所に指を指すと、赤い印が付いた。
「それから丑の刻・夜八つの時間。
宮殿の護衛に当たっていた兵士達が見た⋯場所はここ。
若い男の顔つきだった⋯とは言ってるけど、はっきりしない。」
同じく羅針盤に赤い印が付く。
「どちらの時間も“何か”を見てもおかしくはないさ。丑の刻(午前二時~三時)と逢魔が時(夕方)だ。」
「共通項は⋯頭に花の飾りが見えた、という事。」
「簪(かんざし)の事···ですよね?
ですが、簪をさしてる人は大人も子供も関係なく沢山います。
最近は婚約関係なしで、お洒落や魔よけの意味で挿してる子も多いです。」
「その簪にも共通項がある。
赤い、曼珠沙華の簪。」
「⋯その簪を数日前から挿している生徒がいるな⋯でも曼珠沙華なんて、別に珍しい花ではないでしょ?
時期になれば田んぼのあぜ道にいっぱい咲いてるじゃない。」
「曼珠沙華⋯毒抜きをすれば食料に、不吉な意味も慶事の前触れの意味も併せ持っている。」
「うーん⋯曼珠沙華ってのに意味があるんでしょうか⋯
それとも⋯もっとこう他に何か、何か別の意味が⋯」
「⋯今回も動くしかなさそうだな。全ては」
「「「神秘の力に輝く黄金の国の為に」」」
『おぉ!という事は、出動されるのですね!?』
どこからか自称・寺子屋の番人である夕星(ゆうつづ)が、盆に人数分の食前茶を乗せ、にゅっと顔を出した。
うわっ!と全員が驚く。
毎度の事なのに慣れない。
別室の台所で夕食を用意していたはずなのに、この男もどこから聞きつけてくるのか分からない。
『おぉこうしてはおれません!急いで準備を!』
夕星は慌ただしく茶を置いて部屋を出た。
彼だけは何故か、陰陽の力を持たない。
その分、何とか寺子屋や陰陽師達の役に立とうと毎日躍起になっている。
・子の刻、真夜九つ半ば
陰陽師達は武器を手に持ち、寺子屋の番人に顔を向ける。
「⋯参る。留守を頼んだ。」
『ご無事の帰還を。寝ずの番でお待ちしておりますゆえ!』
「寝てていいぞ。」
『なっ!な、何を言いますか!
陰陽の力がない私が出来る事は限られています!
だからこそ』
「あーはいはいはいそこまで、留守をお願い。
戸を閉めたら鍵をすぐかけて外には出ないでね。」
沙羅が寺子屋の番人をぐいぐいと玄関から室内へと押し込む。
『あっまだ話は終わっては』
ばたん!
戸を閉め、納得のいかないため息が寺子屋の中から聞こえた後、内側から鍵がかかった事をかちゃかちゃという音で確認する。
晏朱が剣を抜き、上に手早く掲げると
剣から光が空へ向かって放たれ、四方八方へ広がりながら光が消えた。
「よし⋯」
陰陽師は出動する時、寺子屋と宮殿を結び、大陸に結界を張る。
目に見えない結界が張れた事を確認し、剣を収めた。
行こう。と陰陽師達は顔を無言で見合わせ頷き、先程の羅針盤が導き出した方角へ急いだ。
・丑の刻・夜八つ
「そろそろ、来るかぁ⋯?」
物陰に隠れた三人の陰陽師達は、武器をじわじわと構え待つ。
その時だった。
うわぁぁぁ!と男の叫び声がした。
場所は近い。
声の方向へ走り向かう。
しばらくしないうちに陰陽師達はその光景を見て一瞬固まった。
気絶して倒れている男の前には、青白く浮かび上がっている人間のようなもの。
「⋯気絶してる間に済ませるぞ!」
晏朱の声に同意し、陰陽師達は武器を構えた。
“ミテ⋯ミテ⋯”
ふわふわと浮いた青白い身体。
頭に赤い曼珠沙華の簪を手で押さえ、ゆっくり宙を回転していた。
武器に力がこもり、目の前の“何か”にぶつけ浄化をしようとした。
その時。
「待って!お願い待って下さい!」
新多の静止で、二人はぴたりと動きを止めた。
“フフッ⋯キレイ⋯フフッ⋯”
やがてその生身の人間ではない“何か”はスッと姿を消した。
「⋯あの、顔⋯」
「どうして止めたの!消えちゃったじゃない!」
沙羅が新多の肩に掴みかかり問いただすが、晏朱がすぐに静止をかけ、視線を新多に移し静かに問う。
「⋯何か考えでも?」
「あの顔⋯見覚えがあります⋯私の教室の生徒です⋯」
晏朱と沙羅は顔を見合わせ、二人で新多を見る。
「⋯一旦戻ろう。話を整理する必要がある。」
気絶していた男が意識を取り戻す気配を感じた三人は足早にその場を去った。
『先生さようならぁ!』
『ねぇねぇ聞いたぁ?』
『また出たって⋯』
『怖い怖いこわーい!きゃはははっ!』
未の刻からは稽古場に行くか帰宅になる。
よって、申の刻・夕七つのこの時間は寺子屋に生徒はいない。
裏の顔を知らない人間がいない、この時間。
この時間から、師範と陰陽師の境目が付きにくくなってくる⋯
「今日の八つ時菓子~は⋯あれ?夕星は?」
休憩室に入った沙羅は、夕星が用意した様々な花の練り切り菓子と茉莉花茶の一揃えを手に取った。
「急に何か思い立ったみたいで⋯資料室の埃落としをするそうです。」
ひと足先に休憩室にいた新多は練り切りを一口大にし、口に入れてほのかな甘さを味わった。
「あの男も考えてる事が読めないな⋯まぁいないなら丁度いいや。
例の女子生徒に、簪の事を聞いた。」
女子生徒の話はこうだった。
~稽古場で職人専攻室の横を通った時に、あの男の子が曼珠沙華の簪を眺めてて⋯寺子屋で見かけた事はあったけど話した事はありません。でもそれよりも、何だか簪が気になって、思わず見せて欲しいと声をかけたんです。簪は見れば見るほど欲しくなって、男の子に譲ってほしいとお願いしました~
「多分、半ば強引に押し切って譲ってもらった。そう言う感じだと思うの。
で、問題の男子生徒は?」
「体調崩して休みです。というか⋯ここしばらく来ていないんです。」
「え?」
「最近来てない事が気になってはいたんです。
そしてあの時見えた生霊の顔⋯
さっき家に行って来ました。
母親が出迎えてくれたんですけど、何だかやつれてて⋯
母親の話だと、目を覚ましている時間が短い⋯いえ、もうずっと眠っているそうなんです。」
「声をかけても揺すっても起きないって事?」
「そうです。だから⋯念の為、式神をつけておきました。
その帰りに稽古場に立ち寄って職人専攻の師範の話も聞いてきました。
男子生徒は職人を専攻してて」
「⋯別に職人なら、男だろうが女だろうが」
「最初はどこにでもある様な、女性が付けても控えめに見える飾りだったり、男女ひと組の婚約用に使う簪を作ってたらしいんです。
それが少し前から、大振りで目立つ飾りを作り始めたらしくて。」
「急に?」
「そして、最近作り上げたのが例の曼珠沙華の簪。
あまりにも出来がよかった⋯というか、よすぎたそうなんです。
だけど次の日に曼珠沙華の簪は男子生徒の手元にはありませんでした。
譲りましたと答えたそうです。」
「ふぅん。」
晏朱が練り切り菓子と茉莉花茶の一揃えを持って座る。
「ここからは俺の推測だが⋯多分あの男子生徒は身体と心が合致していない。」
「⋯どうゆう事?」
「身体という外見は男だ。だが心という中身は女なんだろう。」
「それって⋯」
「男は男らしく、女は女らしく。
我が大陸では当たり前過ぎて誰も疑いやしない。
だが俺の推測が正しければ⋯だ。
女らしく嫋(たお)やかでいたいのに、男らしくと育てられ、本当に着たいと思える服も着れない、身につけたい宝飾で自分を飾りたくても飾れない。
万が一、親や周りに知られれば生徒本人もただでは済まない。
好奇な目で見られ、変人扱い⋯最悪、病人扱いされて後ろ指をさされる事だ。
今まで必死で隠していたんだろう。」
「⋯神や仏は、随分と酷な事をするものね。」
「⋯話を戻す。
加えて、最近の幽霊騒ぎ。
多分正体は⋯あの男子生徒の生霊だ。」
「じゃあ、男子生徒が起きない理由は⋯」
「現実と生霊の狭間で彷徨い始めているんだろう⋯
このままだと本当に人間ではなくなってしまう。」
「急がないと⋯」
新多が佩玉を羅針盤に変え、男子生徒に憑けた式神の場所を確認する。
すると意外な場所を示していた。
「⋯へっ?」
「何だなんだぁ?そんな変な声出して」
「⋯ここ⋯ウチの寺子屋じゃ⋯」
その時だった。
『きゃあぁぁぁあ!』
羅針盤を通して女子の悲鳴が耳に届く。
「この時間は⋯寺子屋に生徒はいないはず。」
三人は顔を合わせ頷き合い、陰陽師の証である武器を手に取って教室へ向かった。
『あ⋯あ⋯』
曼珠沙華の簪を挿した女子生徒が廊下でへたりと座り込み、後退りをしている。
その前にいるのは⋯
“フフッ⋯ミツケタ⋯ミツケタ⋯ワタシノ⋯”
青白く浮かんでいる生霊。
顔がはっきりと見える様になっていた。
沙羅が女子生徒の背後に回り「ごめんね」と呟いて気絶させた。
「待って!」
新多が生霊の前に立ち塞がる。
“⋯ジャマシナイデ⋯”
「危害を加えれば元の身体に戻れなくなるぞ!やめろ!」
晏朱が生霊に向かって呼びかけた。
“ソレハワタシノ⋯ワタシガツクッタ⋯ワタシノ⋯ワタシガ⋯”
ごおっと強い向かい風が三人と女子生徒に立ちはだかり、吹き付けた。
「うわっ⋯」
息苦しく、前すら向けない。
“ワタシ⋯イキテテモ⋯クルシイ⋯”
「⋯っ!本当は!」
そんな中で、新多が大声でまっすぐ男子生徒に問いかける。
「本当は!どうしたかったの!!」
その声を聞いてなのか、生霊が唸り声をあげる。
同時に向かい風が次第に弱まってきた。
“ホントハ⋯ホント、ハ⋯”
向かい風が更に弱まり、すっと止まった。
「っ!今だ!」
三人の陰陽師達が各武器に力と念を込める。
「光と闇の狭間で迷える魂よ!」
「神秘に輝く黄金の国のもとに、我らの声に応えよ!」
「己の声を認め!今こそ心を満たせ!」
武器が生霊に向けられ、光が矢の様に放たれた。
光は生霊に命中した後、きゃあああと甲高い断末魔が響いた。
ぽろぽろと涙を流した生霊の影が徐々に消えていく。
“ホントハ⋯ワタシタクナカ⋯ッタ⋯
ワタシトシテ⋯イキル⋯ツヨサガ⋯ホシ⋯
ツヨク⋯ナリ⋯タ⋯”
やがて夕陽の光が寺子屋を差し込んだ瞬間、生霊は完全にその姿を消した。
「⋯思った通り、だったか。」
「褒められ、認められた反面。
自身が身につけたいものを身につけられず、自分ではない他人を飾っている悔しさ⋯」
「その二つの気持ちがせめぎ合って、自身の調和が取れなくなってしまったんですね⋯」
「⋯浄化は叶った。あとは」
「⋯本人の心次第。」
晏朱が気絶したままの女子生徒に式神を付け、技をかける。
女子生徒はふわりと身体を浮かせ、すっと姿を消した。
女子生徒は自室で、目を覚ます事になる。
『先生おはようございまーす!』
「おはよう。」
『あー!おはよう!』
『おはよう!』
『そぉいえば最近、聞かなくなったよね?』
『え?何だっけ?』
『ほらぁ!あのうわさ!あの⋯』
『何のうわさ?』
『えーと⋯あれ?何だっけ?』
人のうわさも⋯とは、ああゆう事。
新多はくすっと微笑んだ。
寺子屋の玄関から門前に視線を移したその時。
例の男子生徒と女子生徒の姿が映った。
男子生徒の手には、あの曼珠沙華の簪。
『返す!』
『え⋯』
『父様に叱られたの。
もらったってちゃんと説明しても、強引に押し切って奪ったも同然の事をしたんだろうって言われちゃった。
それに⋯』
『⋯それに?』
『⋯な、なんでもない!
私にとって曼珠沙華はやっぱり不吉だったって事!
と、とにかく返す!』
女子生徒はそそくさと男子生徒から離れて行った。
女子生徒もまた、何か思う所があったのだろうか。
「⋯おはよう。」
新多は、呆気にとられていた男子生徒に声をかける。
『あ⋯先生。おはようございます。
長く休んでおりまして、ご心配をおかけしました。』
男子生徒は落ち着いた様子で返事をした。
「身体の具合は」
『それが⋯何と説明して、よいやら⋯
実はここ数日の事はあまり覚えてないんです⋯』
「え?」
『母や父の話では、深く眠り続けていたそうです。
あまりにも起きないので医者も呼んだそうですが、どこも異常ないと言われてしまい、ついには祈祷師の元へ相談に行く寸前だったそうです。
何だか⋯長い夢を見ていた気もするのですが、それも覚えていなくて⋯
ですが、身体も気持ちもすっきりとしています。
遅れていた分の勉強も取り返さないと。
今日からまた、よろしくお願いします。』
「無理はしないで下さいね。⋯その簪」
『⋯僕が作ったものです。さっきの人に譲ったんですが何故か返されて⋯』
男子生徒は少し苦笑いをしながら簪を手ぬぐいに包んで鞄にそっと片付け、一礼し教室へと向かった。
「ふぅむ、清々しいな。」
「本当に何事もなかったかの様な⋯そんな感じね。」
二人の様子を見ていた晏朱と沙羅は新多に声をかけた。
生霊の気配を感じない男子生徒の背中を見ながら、三人は安堵の表情を浮かべた。
「もし。」と新多がぽつりと言った。
「もしも、いつか世界がひっくり返ったとしたら⋯
あの子みたいな子も、私たちみたいな存在も普通になるんでしょうか⋯」
「何だ急に⋯だが、そうだな⋯。」
晏朱が少し考え、答える。
「いつか時代が変われば、普通じゃない事も普通になるだろうよ。
例えば⋯女子が剣を振り回して、男子がプチェチュムを振りかざす、とかな。
男らしく、女らしくではなく。
“自分らしく”扱えば。
意外と新しい発見があるかも知れないぞ。
いつかこの時代に飽きた誰かが、前例という名において新しい時代を築いてくれるさ。」
「⋯自分らしく、か。」
沙羅が柔らかい笑みを浮かべながら呟く。
『始業前の鐘を鳴らしますよ~、おはやく~。』
・辰の刻、朝五つ半ば
寺子屋の番人の呼びかけに急かされ、何事もなかったかの様に。
今日も日常が始まる。
全ては
神秘の力に輝く黄金の国の為に。