個展前に画家が思う事。
ある日、初夏のある静かな夜、街の喧騒が遠くに聞こえる中、パレットを前にして筆を握りしめていた。時計の針は深夜を指している。
締切は明日。
だが、作品が自分の思い描いていたものとはほど遠く、心は焦りでいっぱいだった。
「このままではいけない」と自分に言い聞かせ、筆を走らせる。夜が更けるにつれ、周りの静けさが一層深まる中、心の中で葛藤が続いていた。
「締切を守ることは大事だ。でも、それよりも守るべき約束は、昨日の自分の作品を超える事。」その瞬間、ふと自分の中のプロとしてのプライドに気づく。
単に「締切を守りました」と言われても、それは余り意味はなくて観客様に「これを買う事が出来て本当に幸運です」と言われてこそ、初めて自分の努力に光が差したと言える。
夜中まで描き続け、朝が訪れた頃には疲労感が全身を支配していた。それでも、作品が「イマイチかな」と評価されることもある。無視される事もしょっちゅうある。イイネさえ貰えない時もある。
あの時の挫折感は忘れられない。心のどこかで、もっと良いものを描かなければならないという強迫観念が渦巻いていた。画家としての自分を受け入れることができず、孤独に感じることもあった。時に自分を押しつぶしそうになる。
しかし、そんな中でも、時折訪れる「理解者」に出会う瞬間がある。それは、まるで星空の中でひときわ輝く星を見つけたかのような、特別な体験だ。
ある日、展示会が終わった後、訪れた観客の一人が近づいてきた。「あなたの絵、古いモノを尊重し受け入れて乗り越えてはみ出して行こうとしている所が凄く良いなと思うから買いたいのだけど買う事はできますか?」と言われた瞬間、胸が熱くなり、言葉にできない喜びが溢れた。まるで、自分の魂が誰かに届いたような感覚。
その言葉を聞いた瞬間、長い間抱えていた不安や心細さが一瞬で消え去るような感覚があった。
自分がどれほど努力してきたのか、そしてその努力が誰かの心に響いたのかを実感できた。画家という職業が持つ特別な喜び。それは、ただ単に作品を創り出すことだけではなく、他者とのつながりを感じることができるからこそ、辞められないのだ。
この瞬間のために、どんな苦労も乗り越えられる。これが「プロの画家」としての誇りなのかもしれない。
もちろん、夜遅くまで描き続けることもあれば、評価されない作品を抱えて悩むこともある。しかし、その中で見つける喜びが、すべての苦労を打ち消してくれる。
これからも自分の色を求め、道を歩み続けたいと思う。苦しみも、喜びも、すべてがこの道の一部なのだから。
このnoteは、全然まだ見られてないし、余り告知しても意味がない気はするのですが、良かったら
いらしてくれたら幸いです。以下が個展情報となります。
・個展 "名画と花の織りなす物語"
会期 : 10月16日(水)〜21日(月)
会場 : 銀座三越ギャラリー7階 東京
杉田陽平在廊日
10月16日水 14時-20時
10月19日土 11時-20時
10月20日日 11時-20時
トークイベント
10月20日14時-15時
現代アートコレクター黄皓×杉田陽平