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覚書。

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眠り姫問題の簡易説明 -(日本語&English)

 眠り姫問題という”確率”を扱った思考実験があります。問題自体は小学生でも分かるくらいにシンプルなのに、今だに決定的な答えのないとても面白い問題です。要点をかいつまんで言うと下記のようなものです。 問題 実験の参加者である眠り姫は、実験の内容を全て説明され、一日経過後、特殊な眠り薬を投与され日曜日に眠りにつく。 眠り姫が眠っている間に一度だけ公正なコインが投げられる。 コインが表であった場合、眠り姫は月曜日に目覚めさせられ、質問されたのち、再び薬を投与され眠りにつく。

    • 眠り姫問題/Sleeping Beauty problem 覚書 : (同一性問題としての主観確率/Subjective probability as an identity problem) JPN&ENG

      まとめ:  この思考実験では、本来1/2のはずの公平なコインで”表”が出る確率が、ある条件つきの睡眠後には1/3に思えるという不思議があります。  この実験で行われる睡眠の条件は特殊ではありますが、それ自体は無矛盾であり十分に可能なものです。その為この矛盾は私たちの持つ”確率”への一般的な理解と定義が不十分だからと考えるのが自然に思われます。  本文では確率的事象を構成する要素を3つに分けて考えます。 一つ目は確率的事象が起こる対象である”確率的構造体とそれの持つ固有確率

      • ChatGPTとの遊び方-2 “チャトレ数”

        “チャトレ数” … *下記は私がChatGPTに、私が驚くような想定外の文章をつくってとリクエストしたときのチャットです。 … GPT:それでよろしいですか?何かご質問がありますか? 私:ではまた別の文章を作って私を驚かせてみて。もっと複雑で良いよ。 GPT:驚かせることを願いますが、人工知能モデルとして、私は先入観や信念を持たないため、極端な考え方を生成することもあります。そのため、私が生成する文章がトラブルを引き起こす可能性もあります。それでも続けますか?

        • ChatGPTとの遊び方

          … … はじめに  最近ニュースなどでもよく聞くようになったChatGPT(以下GPT)は、OpenAI社によってトレーニングされた大規模な言語モデルです。  ざっくり言えば人工知能によって多様なテキストを生成し、ユーザーの質問に自然言語応答を生成することができるWebサービス、となります。ちなみに利用するには簡単な登録が必要なだけで、サイトは英語で作られていますが、日本語で書いた質問に日本語で返答してくれます。(なぜかたまにいきなり英語になることがありますが、日本語で

        • 眠り姫問題の簡易説明 -(日本語&English)

        • 眠り姫問題/Sleeping Beauty problem 覚書 : (同一性問題としての主観確率/Subjective probability as an identity problem) JPN&ENG

        • ChatGPTとの遊び方-2 “チャトレ数”

        • ChatGPTとの遊び方

          デビッド・ボウイがLife from Marsと呼んだ灰色の中間、誰よりも的確だったネット解説。

          1999年にジャーナリストのジェレミー・パックスマンがBBCのニュース番組でデビッド・ボウイに行ったインタビューより David Bowie speaks to Jeremy Paxman on BBC Newsnight (1999) 動画リンク : https://m.youtube.com/watch?v=FiK7s_0tGsg … ・・・はじめに  デビッド・ボウイが’99年に行ったこのインタビューは、時折SNS上でその動画の切り抜きがトレンドに上るので

          デビッド・ボウイがLife from Marsと呼んだ灰色の中間、誰よりも的確だったネット解説。

          Body Feels EXIT 2 - 傷メタフィジカル

          …  傷に関わる文化社会的な事柄は多くあります。  キリスト教で聖痕と呼ばれるものや、社会的偏見や差別としてのスティグマ、儀礼儀式またはファッションとしての抜歯・削歯・刺青・割礼・抜毛・ピアスetc、リストカットやアーム・レッグカット等の自傷、躾や罰・拷問としての殴打・烙印、そして血の盟約のように契約や約束に関するものなどそれらは多種多様です。  私たちの身体性を考えるにあたって”傷”というテーマはとても興味深い項目です。上記に挙げたような傷のバリエーションの前に、まず

          Body Feels EXIT 2 - 傷メタフィジカル

          Body Feels EXIT 〜ネット的意識拡張から受肉までのトピックス〜♪

          …  アイコン、スノー、別垢、アバター受肉、ロボット、オートチューン、同一/差異性、クローン(臓器)、臓器提供、ファッション、義手義足義体、人称選択、ルッキズム、タトゥー、自傷、整形、性差別、性自認、LGBTQ+…etc。これら現代的なテーマの定義/再定義に関する共通点は、意識と身体の関係性という意味での私たちの”身体性”です。  現代(’21)はインターネットをはじめとしたIT技術が私たちの意識を空間的に時間的に、そしてその同一性を私たちの身体から拡張し続けています。

          Body Feels EXIT 〜ネット的意識拡張から受肉までのトピックス〜♪

          Dopeなニホン語

          ...共犯的洗練  ゲーテはその昔”最近の詩人はインクに水を混ぜすぎる”と言って、その内容の薄さを揶揄したといいます。  おそらく”最近の若者の言葉は。”というのは常に言われていることなんだろうと思います。若者に限らず様々な規模のグループが自分たちの仲間意識や結束感を確認する手段として、固有のスラングや言い回し、造語などを用いることは珍しいことではありません。  それは合言葉のような役割もあり、また標準的な言葉を歪めて用いることそのものが、ささやかな反権威的な、故に共犯的

          Dopeなニホン語

          悪と良識

          …価値と知識  ここ最近、オリンピック周りの話題を中心に、”良識を欠く言動”と批判される話題を見かけます。ですがそこに用いられる”良識”という言葉は、その意味があまり明確では無いように感じます。  本来個々の事案に関してはそれぞれの状況と論点があり、十把一絡げに論じることはできないだろうと思います。それらを大括りに扱う良識という言葉の意味と役割はなんなのでしょうか。 …  手始めにネットで検索してみると、良識とはフランス語の”bon-sens”の訳語で、物事を正し

          悪と良識

          シン・エヴァ感想-綾波中心 ネタバレ有り

          “そっくりさんと三つの願い"  現状4回観たのですが、最初に観たときは”アヤナミレイ(仮称)”(以後そっくりさんと書きます。)は救われないのか〜という思いが残っていました。観終わってすぐは考察ブログや動画も見る気になれず、モヤモヤしたまま観賞翌日映画を反芻していたところ、実はそっくりさんがちゃんと救済されていたことにようやく気がつきました。  自分は一日置いてから気付いたのですが、おそらく多くの人は初回でわかってたんだろうと今考えると思います。2回目に観たとき

          シン・エヴァ感想-綾波中心 ネタバレ有り

          インフォ・デミック : 'XX年代。 心と身体と、それ以外のなにか。

          … インフォデミック ; 語源:英語。infodemicからの借用語。 informationとepidemicのかばん語。意味: 不正確な情報の拡散による混乱。ウェブ(ソーシャルメディア)上で真偽不明の情報 や虚偽の情報が流布され、その情報を受け取った人々がパニックとな り、社会の動揺が引き起こされること。 … 1_COVID-19
    '19年末中華人民共和国湖北省武漢市付近で初めて確認さ

          インフォ・デミック : 'XX年代。 心と身体と、それ以外のなにか。

          風土考 - ネットに関する風土的諸々

          1…時間的、空間的、差異的規定としての風土  和辻哲郎という哲学者が『風土 人間学的考察』という本をかいたのは戦前の1930年頃です。和辻はその著作のなかで“風土とは、人間の自己了解の仕方である”と述べました。そして“人間”と“風土”という二つの異なる対象を取って論じるのは間違いであり、人間という存在のなかに風土は不可分に含まれる関係にあるとしました。  それは“ヒト”という動物が、固有の風土(空間性)と固有の歴史(時間性)を獲得することにより、それに由来する固有の偏性

          風土考 - ネットに関する風土的諸々

          #BLM

          1... ネット型抗議運動の風土的越境とその正当性について 世界の様々な地域で報告される非人道的な事件や社会的状態に対し、ネット上で人々が風土を超えて共感を示し抗議の運動が世界的に広がることが現代では時折起こります。ネット以前はそのような事件報道は基本的にはマスメディアを経由して広がっていたため、その時間的な遅延や編集によるフレーミング作用で時間的にも、感情的な勢いとその方向性もより緩やかなものだったように思います。  近年見られるその勢いと広がりはインターネットが普及し

          56. バンクシーとジャーナリズムと傘ネズミ

           バンクシーという素性を隠して活動する覆面アーティストがいます。 イギリスを拠点に活動するグラフィティアーティストで、街の壁などにスプレー等で絵を描くスタイルが有名です。最近では東京の日の出駅でも”それらしき”作品が見つかり、それを東京都が保護して一般公開をするということもありました。  作風は風刺的で社会、政治や文化などの諸問題をテーマに、問題意識や議論を喚起するような作品を簡潔で分かり易い文字と視覚表現を用い、イギリス国内に留まらず世界各国で製作しています。  公共や

          56. バンクシーとジャーナリズムと傘ネズミ

          11. ネット空間により変容したタコツボ化現象と、新しく生まれた視点と認識

          以上の帰結としてネット空間で、タコツボ現象として集積形成される価値観は、ネット以前の環境よりも明確で密度が高く過激なものになりやすいと言えます。 これまでにタコツボ化現象とはネット環境によって生まれたのではなく、スピード化とパケット化により濃縮、集積されて他者からも認識可能なほど明確に変容しただけとしましたが、私たちがこのタコツボ化現象が問題であるという認識を持つに至るまでの過程で、新しく生まれたものがあります。もともとすでに社会の中に存在していたタコツボ化現象を、“重大な

          11. ネット空間により変容したタコツボ化現象と、新しく生まれた視点と認識

          10. 思考/思想のパケット化

          そして情報と思考の量の少なさとそれのアウトプットが短期間に行われることで、端的で規模の小さい思想が連発されることになります。ネット以前の環境では、明暗白黒良し悪しなど一見矛盾する要素が思考の過程を経て合わさって一つの思想として意見表明されていたものが、細かく分かれて連発される思想のパケット化が起きます。この分割された小さなパケット型の思想は、ネット以前の環境では思想を構成する要素や素材であって、ある問題に対して肯定的であったり、否定的であったりしますが、ネット空間では意見表明

          10. 思考/思想のパケット化