K値について
5月17日に西村大臣が会見で、新型コロナウイルスの感染状況に中野貴志教授が提案されたK値も参考にしていきたいと述べられた。その際、K値を専門家会議で紹介したのが私であると紹介されている。実際、5月14日の専門家会議の参考資料に私が提出した資料がHPにアップされている(K値については安田洋祐さんが分かりやすい解説をされている)。
5月14日の専門家会議の提言本文では、緊急事態宣言の感染状況に関する解除基準はつぎのようになっている。
①新規報告数:直近1週間の新規感染者の報告数がその前の1週間の報告数を下回っており、減少傾向が確認できること(別添1参照)
・これは、新規感染者数の直近の増減度合い(傾向)を反映した簡便な指標である。ただし、報告数が既に非常に少ない都道府県では、1,2件の増加によって要件が満たされないわけではないこと。
②直近1週間の 10 万人あたり累積新規感染者の報告数:0.5 人未満程度
・積極的疫学調査などにより新規の感染者及びクラスターに対してより細かな対策が十分実施できていた頃の水準であり、地域におけるリスクの高いクラスター感染などを丁寧に追跡調査することにより、二次感染の拡大を未然に防止することなどにもつながることから、まずは、こうした水準が目安になると考えられる。ちなみに、東京で言えば、感染拡大が生じる前の 3 月上・中旬頃の新規感染者数の水準に該当する。
・なお、人口の少ない都道府県などでクラスター感染(集団感染)が起こった場合、直ちに、上記①、②の基準を満たせなくなるような事態も想定される。感染経路が特定できているクラスター感染(集団感染)については、周辺地域への影響が限定的であることが分かっているのであれば、こうした影響を除去して判断することも考えられる。
〇 その他、地域の感染の推移を表す実効再生産数(図 2、図 3 参照)、また、地域の感染が制御できているかを表す感染経路不明な感染者の割合なども参考にする。
〇 また、この感染症は、人と人との接触によって拡大することから、大都市圏など近隣県や移動の多い都道府県における感染の状況についても考慮していくことが重要である。
①の条件が感染状況のトレンド的変化を示すものである。②の条件は感染者数のレベルがクラスター対策が可能なものであるかを判断するものである。さらに、「地域の感染の推移を表す実効再生産数、また、地域の感染が制御できているかを表す感染経路不明な感染者の割合なども参考にする。」感染症の感染状況を判断する標準的な指標も参考とすることが明記されている。また、①の条件は、実効再生産数と関連のある指標になっている。同時に、①の条件は、K値とも対応した数字であることを安田洋祐さんが数学的に示している。一方、①の条件だけだと判断を間違う可能性があるのも事実である。
仮に、感染が再燃してきて新規感染者数に上昇トレンドが見られているとする。そして、ある週にクラスターの報告があり一時的にトレンドよりも多い新規感染者が報告されたとする。すると、この週は当然、前の週よりも新規感染者数が多いので①の基準が満たされない。しかし、次の週になると、前の週にクラスターの報告があったために、トレンド的に新規感染者数が増えているのにもかかわらず、前の週よりも新規感染者数が少なくなる可能性がある。このように①の条件だと一時的な感染者数の影響が2週に渡って逆の影響を与えるのでトレンドの変化を判定する際には注意が必要になる。この点は、K値でみると分母が累積感染者数と大きな数であるため一時的ショックが数値に与える影響は当該週だけになるので、トレンドの変化を見る際に適している。
解除基準については専門家会議で提言されているとおりであるが、トレンドの判定について補完的な指標としてK値を参考にする価値があるのではないかと考えて、参考資料として提出させて頂いた。
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