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クライアントは依頼したくて依頼している訳ではないという話

 我々フリーランスはクライアントからの依頼を受けて仕事を行っており、収入減として大事にしなければならない存在だ。クライアントを失えば収入が減り、失業なんてことにもつながってしまう。そんなクライアントが仕事を依頼する理由を考えてみたい。

考えるきっかけ

 少し前にとあるライターの方がnoteに書いていた記事を読み、その方はどうも納品した文章のほとんどが改変されており、自分が仕事を行った意味があったのだろうか?と嘆いていた。

 気持ちは分からないではない。私もライターではないが、音楽の仕事で同じような状況に陥った事がある。私の場合はアレンジの仕事で躓いてしまった。

 アレンジの仕事はオケ制作と言い換えても過言ではないのだが、結構この仕事は作曲家が平行して行う事が多い。というのも、昔と違って今はDTM環境が整ってきた事もあり、作曲家のデモの時点でそれなりのレベルの音源を制作する事が出来てしまう。そして作曲家がアレンジを行うのであれば、作曲家がそのままアレンジの世界観を出してもらったほうが楽曲のらしさを出すことが出来るという事もあり、そのままアレンジも作曲家が担うケースは多い。

 また、予算的な話もあって、いちいちアレンジャーを別の人にするメリットが減っている事もある。

 しかし、作曲家が考えるアレンジと、クライアントのイメージするアレンジが必ずしも一致するとは限らず、アレンジの方向性が違うとなってしまうと、アレンジどころか最悪曲そのものが没になる可能性が出てきてしまう。

 とはいえ、作曲家は思っている以上にアレンジの仕事は好きではない人が多く、そうじゃなくても描いていたアレンジをオケデータにしていく為には打ち込みや録音といった工程が必要となり、更にはミックスも行っているので手間と時間が非常に掛かっている。それを「ノー」の一言で潰されようものなら、それまでの作業はほぼ全てパーである。

 だからと言って、作曲家のエゴをクライアントに押し付ける訳にはいかない。クライアントは欲しいデータを受け取る為に依頼をしているので、要求に合わない作品を納品されても困るだろう。お金を払うのはクライアントだからだ。

 というようないざこざの発生リスクをお互い背負う形となるので、フリーランスの仕事というのは結構辛い部分があり、アレンジャーを別の人にしてそのまま通ってくれるのであれば、正直個人的にはホッとする部分もあれば、損をする部分もある。

 私が目にしたライターの記事でも同じような事を書かれていたのだが、きっと私と同じような事が起きていたのかもしれない。

結局クライアントの要望に答えられるかどうか

 クライアントの要望に答えるよりも、クリエイターが堪えてしまってはどうしようもない。酷いオヤジギャグを挟んでしまったが、クライアントの要望とクリエイターの意向が合わない時が一番地獄ではないだろうか?

 時給が下がってでも打ち合わせは時間をかけた方が良いし、相手の時間を奪ってでも打ち合わせの時間を確保した方が、納品時のトラブルは減るし、依頼が取り消されても面倒ごとに発展しなくて済む。クライアントも面倒な事にはなりたくないと考えているから。

 とはいえ、時間をかけても無駄な時は無駄である。何故ならクライアントが必ずしもその分野に詳しい訳ではなく、楽曲は欲しくてもその楽曲がピンと来るかどうかの判断を下す事が出来るとは限らない事。ライターで言えばライティングの依頼をしたはいいが、その文章が実際にプロジェクトに有効かどうかの判断を下せるかはまた別の話だ。そこは提案力でカバーをする事も出来るが、大体裏目に出るだろう。

 何より依頼をして、叩きの原稿を読んでから、クライアントがそれを弄ってしまいたくなる場面というのもよくある話だ。クライアントの中には最初から何かを作る事は苦手でも、ある程度のものが揃えばそこからは手を加えられる!って人も居て、そういうタイプの人は納品した後の物を弄る傾向にある。

我の強い人はクライアントと仕事をするのではなく、本当のソロで仕事をする方が幸せかもしれない

 耳の痛い話というか、意見というか、現実的な話をしたい。フリーランスで仕事をしていると、自分のやりたい仕事をやりたくてフリーランスになったという人は多い。私もハッキリいうとそういうタイプである。

 だが、そういうタイプのクリエイターはほぼ100%納品物に対する修正依頼を嫌がっていると思う。大半の方は納品物を100%全力で出しているものだと思うのだが、それに修正を要求されるので、思い描く形からは遠ざかる。それが辛い所だと思うのだが、基本的にクライアントの描く形とクリエイターが描く形は違うものだと思って良い。例えオーダーシートの通りに作ったとしても、求めている事が書いてある事と違うという事がそもそも起きやすい。先にそれ言ってくれない?って事もあるし、根本的にクライアントのオーダー自体が要求している事と実際にやらなければならない事が合っていないなんてこともある。

 料理で言えば分かりやすいかもしれない。オーダー的には塩分のあるものを要求しているが、それ塩分じゃなくて、酸味じゃね?っていうような、噛み合っていない場面もある。

 しかし、クリエイターはそういう認識の違いを見抜く力も必要となる。それかオーダーミスをハッキリ説明して論破する力が必要となる。もっとも後者の場合は厄介なクライアントを切ることが出来る一方、仕事は確実に減るので、よほど仕事が入ってくる人で仕事を選べる人か、少ない仕事で確実に受注していく道を選ぶ人じゃなければオススメはしない。

 と、ここまで色々書いてみたが、これらの内容以前に納品した内容で納得してもらえないと気に入らないって感じてはいないだろうか?

 その気持ちが全くゼロの人は少ないと思うが、その気持ちがかなり強い人は、そもそも仕事の依頼を受けてはいけないのかもしれない。

 自分で描きたいもの、表現したい物を曲げたくないのであれば、それはクリエイターではなく、アーティストに近いのかもしれない。音楽家であればシンガーソングライターやミュージシャン。コンポーザーではないのかもしれない。ライティングで言えばライターではなく、ブロガーなのかもしれない。こういうタイプの人ははっきり言うと、依頼を受けて行う仕事は必ずストレスが強く襲ってくる事となるので、クライアントの為に動けないのであれば、それはきっと受けてはいけない仕事なのかもしれない。

そもそもクライアントも自分で出来るのであれば自分でやる

 これが現実だと思っている。私も作曲家をやっているので、コンペで作品を提出する時には仮歌が必要になるし、仮歌を入れて送っている。そしてその仮歌を入れる為に仮歌シンガーへ依頼をしてデモソングを制作している。

 そんな私でもはっきり言えば、仮歌シンガーへ依頼をして納品なんてしたくはない。コンペは100%収入に繋がるものではなく、採用されて初めて収益化となる仕組みなので、選ばれなければタダ働きも良い所で、タダならまだ良い。まだね?まだ。仮歌の依頼料を払った上で採用されないのであれば、タダどころか出費しかないので純粋な赤字である。

 それを不採用×納品数=赤字として仮歌を依頼してみよう。とてもじゃないがサイフがもたない。

 もしその仮歌が自分で歌えるとなれば、その赤字を出さなくて済むこととなるので、私が歌えるのであれば真っ先に予算を削る対象となるだろう。

 とまあ、現実的にそうも行かないので、誰かに仕事として依頼をする訳だ。というように、誰かが依頼をしてくれるからこそ、我々フリーランスの仕事は存在しているという事。

 そして、その振っている仕事は自分で出来るのであれば自分でやるよね~ってなるような内容なので、やはり納品物が納得いかなければ当然修正依頼は出るし、最悪納品物を弄ってでも最低限の形へ持っていこうとする。

 私も仮歌に関して細かくディレクションをする事もあるが、予算や時間の都合を考えると、ピッチ修正を細かくやる方が予算や時間を守る事が出来るかも?って考えている。

 こうして考えると、恐らく世の中の納品物の9割は、納品されたままの形で世の中に出ている方が、レアケースなのではないだろうか?

色々考えてみたけれど

 結局何を言いたいのか良く分からない文章を3000文字以上書いてしまったが、フリーランスの仕事について色々考えてみたお話だ。

 少し頭の中の整理が出来た部分があるとすれば、単価の高くて楽な仕事は無いという事。単価の高い仕事は多分フリーランスには回ってこないし、回ってきても難易度の高い案件だろう。だからフリーランスにお願いするんだろうし….

 それが嫌なら低単価で楽な仕事、きつくても短時間で終わる仕事を多くこなした方が、現実的な収入には繋がるのかもしれない。

 音楽の制作でも単価の低い仕事は、尺も短いし、ライターであれば、短い文章を作成する仕事もある。

 やらないよりはマシなのかもしれないと思えば、このまま続けるかスッパリ辞めるか考えるきっかけにはなるのかもしれない。言ってしまえばフリーランスの仕事は必ずしも音楽やライターでなければならないというものでもないのだから。

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