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【Re】2023.09.21 東京

1ヶ月、あっという間だった。

海外で過ごす1ヶ月はもっと長く感じるし、早く日本に帰りたくなるかと思ってた。全くそんなことはなく、今、旅の延長のような心地で日本へ帰国している。


旅をするなかで、いくつか気づいたことがある。

まず、日差しと暑さがとにかく苦手ということ。ヨーロッパの人たちは日光浴が好きで、レストランではテラス席の方が人気が高かった。でも、私は店内の方が落ち着いたし、テラスのあるホテルでも結局ずっと室内にいた。ヨーロッパの暑さは日本のように湿気がなくカラッとしているけど、苦手なものは苦手。疲れて、元気がなくなってしまった。逆に、ロンドンの地下鉄駅を出た瞬間、冬のにおいがする風が吹いたときの胸の高鳴りは忘れられない。

次に、思った以上に一人の時間が必要なこと。一人というのは、精神的にもだし、物理的にも。誰もいない鍵のかかった部屋で過ごす一人の時間が必要で、そういう時間がないと思った以上に疲れてしまうらしい。ずっとそう過ごしていられるほど内弁慶でもないけれど、他人の気配がしたり、人の多い場所にいると、暑さと同じくらいエネルギーが吸い取られてしまうみたいだった。

それから、前よりもうんと、不測の事態への対応力と精神的余裕がついていたこと。今回トラブルはほとんどなかったように感じているけれど、数年前の私だったら違っていた気がする。

例えばジヴェルニーで乗り場が分からずバスを逃したり、帰りは電車の時間ギリギリになってバックパックを背負って走ったり。ブリュッセルで交通チケットの購入を何度もミスをしてお金を無駄にしたり。ヴェネツィアのホテルを1泊無駄にしたり。そして、帰国時にミュンヘンで搭乗拒否されたり。

ミュンヘンでの搭乗拒否は、22時近かったし搭乗20分前、まさにゲートをくぐろうとした際のできごとだったので、さすがに途方に暮れそうになったし、ちょっとだけ涙が滲んだ。でも、ごねてもしかたないとサービスセンターに向かってとぼとぼと歩いている間「まあ今帰国できなくても困らないし、なんとかなる」「むしろ面白い経験かも」と、自分の思考が積極的に捉え直しをしようとしていることに気がついた。サービスセンターで案内を受けた時点ではまだ不安があったけど、スタッフに笑顔でお礼を言えたことが、誇らしい。

そして、旅は必ずしも非日常ではないということ。旅をするときはいつも、ぼんやりと特別な体験を求めるような気持ちがあった。でも今回、思った以上に滑らかに、ヨーロッパという異国で過ごす時間は流れていった。私はここでも日常を過ごせるんだな、と思った。海外に住むという選択肢も、今後の人生で望むことがあれば選ぶことができそうだ。

本当はもっとその土地に馴染むような過ごし方をイメージしていだけど、無理して英語やコミュニケーションを頑張ってまで、私はそれを望んではいなかったらしい。
そういえば、以前受けた講座の課題で「自分は人間関係に優劣・深い浅いといった概念が少ない」というのに気づいたんだった。

今回も、ポンピドゥー・センターで出会った日本人の母娘、ホステルで話しかけてくれたタイ人の女の子、朝いってらっしゃいを言ってくれた男の子、素敵な笑顔で接客してくれたレストランのスタッフ、プリトヴィツェで同じバスになり、ドブロブニクで再開した韓国人のご夫婦。そういう、ほんの一瞬交わった縁を、きっと一生忘れない。もちろん、ご縁に引き寄せられてベルリンとプラハで一緒に時間を過ごしてくれる人がいたことも。

やや慌ただしくも様々な国を見て、感じて、違いを知って、さすらうように旅するのが、私はけっこう好きなのかもしれない。狭く濃くよりも、広く軽やかに。それに、移動が好きなことにも気づいた。

帰国すれば、移動こそないものの、延長戦の日常が続いている。たまにフリーランスとしての仕事をしながら、たぶん、ゆるやかに次の仕事のことを考え始める。

思うのは、またこうやって長い旅に出たいし、それができる生き方をしていたい。旅と同じように、軽やかにいろんな人と関わりながら、颯爽と生きていられる自分でありたい。

仕事やプロジェクトには情熱を傾けるし、細部までこだわるけれど、手放す時はあっさりと。縛られず、縛らない。そういう自分でいたいなあ。

やりたいことは、今のところ出発前と変わっていない。建築への興味の再確認。30代のうちに大学に通いたいし、英語もできるようになりたい。そのためには先立つものが必要なわけで、とりあえずはまた仕事を頑張ろうと思う。

今回の旅は、8年仕事を頑張った自分からのご褒美みたいなもので、昔の自分に心からありがとうを言いたい。でも仕事を頑張れたのは、いつだって楽しいと思えるものを選び取ってきたから。次も、かならず。

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