味が分かる
幼い頃に周りの大人によく言われたこと。「大人になれば分かる」、「この味が分かったら大人や」。
例えば、煮物、酢の物、わさび、おせちのかずのこ、ビール。幼い頃はこれらの何がうまいのか分からなかった。むしろ苦手な味だった。それらを「うまいうまい」と、餅つきの時に臼に入った餅に毎回水をリズムよくつけるように、口に運ぶ大人たちが理解できなかった。
しかし、最近、"大人の味"を味わえるようになったと実感出来たことがあった。
ある日、いつものように素振りをしていた時のこと。
私のルーティンは、あらゆるアトラクションを兼ね備えたテーマパークに行くように、あらゆる作品を取り扱うサイトへ入園する。そこで、ザッと1週間分の「人気ランキング」みたいなものをザッとチェック。ここで仮想の相手を見つけられなければ検索ワードを入力する。
この検索ワードだ。
素振りを始めてかれこれ10年弱になる。これまでの私は、やれ「jk」だの、やれ「jd」だの、やれ「mm号」だの、それはそれは純愛ドラマに出てくるカップルのように思わず鼻をつまみたくなるほど青臭いものだった。
それが、不倫ものから寝取られもの、人妻ものへと趣味趣向が変化し、遂に「熟女」というワードで検索をかけたのだ。
それまでは、「熟女もんなんかオッサンしか見んやろ。てか、オッサンも若いピチピチの方がええやろ。ほんなら熟女芸人にしか需要ないやん！」と思っていた。
それが今はこの味が分かる。人生の酢いも甘いも一通り経験した、心身ともにその年齢でしか出せない味を纏い始める、それでいてどこかただよう"隙"を見せる。この"隙"が、日々を必死に生きている若者の心を魅了する。
私は一瞬にして、妙齢な女性が魅せる"隙"の虜になってしまった。と同時に「これが大人の味なのか。」と思いを巡らせる。
身体、ルックス、思考、価値観、それに加え趣味趣向までもが確実に大人の階段を登り始めている。少しずつ、あの頃見た大人な近づいているのだろうか。