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#15 愛犬失踪事件@上海から学んだこと
こんにちは、上海在住のKumaです。
1年前の今頃、我が家の犬が失踪した。私はその時香港に出張に行っていた。詳細は割愛するが、夫が犬を連れて出かけていた場所で、少し目を離した瞬間に逃げ出したのだ。
パニック状態の夫から電話をもらい、今すぐにでも駆けつけたいが、翌日にしか上海に戻れないもどかしさと不安、寒空の中自分の居場所もわからず上海の広い街のどこかでお腹を空かせている我が娘(犬)のことを思うと胸が痛かった。
当時彼女はまだ7ヶ月の子犬、位置情報のチップの手術を翌月に控えていた。去勢手術もまだしておらず、ありとあらゆる結末を考えるとゾッとした。
結論から言うと、行方不明になってから4日目の午後、いろんな人に助けられて無事発見することができた。
この失踪事件を通して、学んだことが3つある。
優しい中国の人達
捜索は中国人の友人達に助けられ、中国語でのチラシ作りから始まった。最後に姿が見えなくなった場所周辺にとにかくチラシを貼りまくったり、犬の散歩をしている人を捕まえては配りまくった。
逆の立場だと、知らない人からのチラシなんて目を合わせないようにしてしまうが、こちらの人は結構「どうしたの?」とむしろ声をかけてくれた。そして、事情を説明すると、周りにも声かけてみる!はやく見つかると良いね、などと温かい励ましの言葉をくれたりした。
アパートにチラシを貼らせてもらった時も、「この位置よりも向こうのほうが見る人がもっといると思う」などとアドバイスをくれた。
チラシの印刷に立ち寄った小さな印刷店のオーナーも、あんたも元気にならなきゃいけないから、大変だねぇ。とみかんを食べさせてくれ、話をしてくれた。
捜索している途中で知り合った見ず知らずの犬を飼っている女性は、「私も心配だからできることをやるわ!」と毎日、空いてる時間を見つけては一緒に探してくれた。彼女は最後に発見する時まで一緒にいてくれた。
私の友人もドローンまで持ち出して一緒に毎日探してくれた。私には何かあった時にこんなに手を差し伸べてくれる人が異国の地にもいるということ。みんながくれた時間や温かい言葉、中国の人たちの優しさを教えてもらった。
やっぱり諦めないこと
私より1日早く捜索を開始していた私の夫は、3日目あたりにして心が折れ始めた。寒空の下ゴールのない中でチラシを配り続けるのは心身共に疲労してくる。こんな広い街で探すなんてもう無理だ!と弱音を吐きはじめた。
私としては、”今もどこかで私達のことを待ってる愛犬がいるのに、私達が足を止めたら絶対に会えないよ”と彼を励まし続けた。私がやらなかったら誰がやるという想いと、あとは一緒に探してくれている人達のことを思うと諦めるわけにはいかなかった。
結果、4日目に私の友人が第一発見者となり、病院近くの草陰でうずくまっているところを見つけることができた。見つかった事に安堵した夫は道端に座り込み子供のように泣きじゃくっていた。
当たり前だけど、難しいこと、それはどんな状況でもあきらめずに前に進み続けること。改めて犬に教えてもらった気がする。
日常の当たり前が1番の幸せ
我が家に犬のいない4日間は本当に地獄だった。道行く犬を散歩している人を見るだけでも涙が出るし、家に帰れば彼女が当たり前にいた空間がそこにあり、何をするにもとにかくつらかった。
すごく変な言い方になってしまうのだが、事故や病気という何かしらの要因が分かっていて失うよりも、行方不明になり今どこで何をしているのか、生きているのかも分からない状況というのはかなり辛いことだと思った。
自分の中でそこに大切なものが無いという理由が見つけられないからだ。
忙しいとき、疲れているとき、少しでも朝の散歩を面倒くさいと思った自分を恥じた。それがどれだけ幸せなことだったのか。
人間は失ってから気が付くというけれど、本当にそうだ。当たり前に大切な人が隣にいて、愛する人や犬が毎日いること、それそれ以上の幸せなんてないんだということを実感させてもらった。
犬は1年前に失踪した記憶を覚えているのだろうか、かわいい寝顔を見ながら、その姿を見ていられることに幸せをかみしめた土曜の夜だった。