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アパレル業界のDX化のハードルとは?-太古の昔を振り返り、現代のアパレル産業を考察する-

本格的な3D・CADの導入には、ハードと正規商用ライセンスで1端末辺り300〜500万円程度の予算が必要である。
導入にあたり、自社にどのシステムが適しているかをしっかり見定める必要がある。更に一種類だけのシステムでオールマイティーに行かないのが現状で、いくつものツールの購入や開発の必要がある。これに加えて、オペレーションのできる人材や、周辺機器等のネットワーク設備、社内部署、社外との運用体制の確立が必要になる。そしてオペレーションを修得する為に、PCの基本知識以外にCAD習得に半年程度、生産性とクォリティーを上げるには1年程の習熟期間が必要である。更にリアルなデジタルサンプル制作のためにはマテリアル、パターン、縫製仕様や物性の知識に加えて光学、CG、映像の専門的知見やセンスも必要である。
1年ほどかけてスキルを身につけた3Dモデリストは、テンプレート等の利用や、パターンや素材CGデータ活用などの効率化で1日あたり数型程の3Dサンプル制作が可能であるが、そのための豊富なデータベースやアセットも必要不可欠である。
現在、日々の業務や資金繰り、現行のビジネススタイル、導入費用、人材育成、データベースの構築など3D・CAD導入はかなりハードルが高いのが現状である。

話は変わるが、生産された製品が半分以上廃棄されるアパレルファッション業界であるが、それには店舗ごとの在庫ロスやサンプル等の生産ロス、マーケティングの甘さなどによる商機ロス等様々な要因がある。
9兆円産業の中で5兆円近く廃棄ロスがあるとして、その1%でも節約するだけで500億円の市場である。これは、新たな顧客獲得による販売の拡張ではなく、社内のフローの効率化で獲得できるいわば埋蔵金の様な金脈と言えるだろう。これを掘り当てるにはAIやDX等によるデジタル技術に頼ることに期待を寄せる見方が多い。
しかし、現在のアパレルファッション業界では、この、必要数の倍以上生産する事で成り立ち維持されている雇用や金融等の経済システムが存在している。今ここで必要数分しか生産しなくてよい高度な効率化をしようとしても安易に業界の為とも言い切れないのである。DX化して、リードタイムを徐々に減らし、時間をかけて生産の労働にゆとりを持たせ、繁忙期をコントロールする等して、価格や就労人口や生産ラインの減少を進め無駄な生産を減らしてゆかなくてはならないのも大きな課題であるはずである。

サスティナブルな施策やSDGsの取り組みは地球環境の悪化を食い止めるだけではなく、それによる人類の豊かな社会を築くという目標もあり、このバランスをどうとるかが難しい所である。現時点ではこういう取り組みに加担し啓蒙する事に注力し人類全体の意識を高めるところから始めなければいけない。

1万5千年前に人類が衣服を纏った壁画が残っている。
最近行われた、先史以前の人体に寄生していた虱の遺伝子解析によれば17万年前~8万年前にアフリカで生息していた人類の先祖は体毛が退化していたと言う。最直近の氷河期は7万年前~1万年前で、1万年前には今の新人類が出現している。5千年前には国家が形成され3千年前には黄金を身に纏う迄に至る。8万年前~7万年前のこの期間に、知能を持ち始めた原人が、体毛の代わりに衣服を纏い氷河期を生き延び、今の人類に進化しえた可能性がある。そして、4万年前の縫い針も発見されている。そうであれば、7万年以上昔、衣服が発明され、これにより種族の進化と言う大きな課題を人類は克服してきたのだが、ここにきて人類は経済活動に頼る社会に大きな転機を見いだしさらなる進化を果たす事が出来るのだろう。

文責:小畑正好


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