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ゲームシナリオにハリウッド脚本術は使えるのか?おすすめ本の紹介とともに

ここ数年、ハリウッドの脚本術の本が色々と出版されています。

ハリウッドで定評のある本は、どれも非常に論理的にわかりやすく説明しており、シナリオを書く人にとっては何かしらの発見がある読み物かと思います。

ただ、何度か商業用のシナリオを書いた経験がないと、ピンと来ないことが多いかもしれません。
「ハリウッド・リライティング・バイブル」については、ゲーム業界に入ったばかりの頃に読んだのですが、正直ちんぷんかんぷんでしたが、何本かシナリオを書き、ユーザーの反応などを見て、「なぜあそこが受けてないのか」「こういうところが受けるのか」とわかった数年前に読み返した時、目から鱗が落ちまくるほどに感動しました。

で、こういったハリウッドの脚本術がゲームシナリオに使えるのか?
といいますと……
まあまあ、いや、結構使える……
という感触です。

ゲーム脚本は映画の脚本とは作法が違うので、そのままでは流用できませんが、どんな脚本でも行う「セットアップ」だったり、主人公に強い物語上の動機をもたせることだったり、……「全てを失って」の瞬間を用意したり、そういった大きな枠組みとしてはゲームの脚本でもかなり使えると感じています
これまで、こういったハリウッド脚本術を参考にしながら複数本のシナリオをリリースしてきましたが、この枠組を応用して作った大外れということはほぼ無く、割と狙った通りの反応を得られることが多かったです。

ちなみにですが、自分がゲームの脚本を書くときにこの使い方としては下記のようなイメージです。

①主人公の物語上の動機とそれに対する障害となる要素(ライバルや主人公の能力的問題点や乗り越えるべき壁など)を設定する

②最終的に主人公が目的を達成する上で立ちはだかる最大の試練を考える

③他、起承転結の「承」で盛り上がる出来事を考える(主に主人公の動機に対する障害になるもの)。主人公周辺のキャラクターがどう主人公に関わることで、主人公の葛藤や危機感が高まるのか?はたまた、キャラが立つのか?

④脚本術の構成のフレームワークに従い(例えばブレイク・スナイダー・
 ビートシートなど)エピソードを配置する。

 不足するエピソードがあれば考える。

⑤ゲームデザインに応じて構成を柔軟にカスタマイズする
 その際、上手く乗っからないエピソードは捨てる

まあだいたいこんな感じかなぁ。思いついたプロセスを覚えてない脚本はこの限りでは有りませんが。

こうして進めていくと、意外にも脚本作成に悩むこと無く、スルスルと書ける感じでした。それと、脚本上の問題点が比較的発見しやすい。
そして、ディレクターやプロデューサーなど、承認をもらう人にも「このエピソードはこういう理由で必要です」と説明しやすいですし、物語の軸がぶれてしまうような追加エピソードを入れて迷走してしまったりすることも減ります。

もっとも、BBSは映画の分数、鑑賞方法に適したフレームワークですので、メディアの性質や配信形態、ゲームデザインに応じてカスタマイズしながら使用する必要があります(主に上述④の段階において)。たとえば序盤に紹介すべきシステムが多く、セットアップが長くなったり。アクションゲームとかだと目玉となるボスやシステムが提示されるので、劇的な始まりが遅めになっても意外と間が持ったり。

正直、自分の勘やインスピレーションだけで書いていると、安定しないように感じています。つまったり、スランプになったり、自分だけが面白いと思っているけど、全く伝わっていなかったり。

そういったユーザーとのすれ違いを防止する上で、作法やロジックは非常に役に立ちます。

要するに、こういう型を知っておくと、構成を考える時の目安にはなります。型は応用してこそ!ということで。知っておいて損はないと思います。

下記、おすすめ本となります。


■『ハリウッド・リライティング・バイブル』リンダ・シガー
・難易度:★★☆☆☆(★が多いほど難しい)
・解説
 こちらも素晴らしい。
 物語の構成の基礎を学べる。超有名なバイブル。
 目からウロコが落ちまくるものすごい良書だが長らく絶版
 自分は3回は読みました。
 こちら、復刊ドットコムで長らく投票受付しているが、
 未だに復刊叶わず。失われるべき邦訳でないと思うので、
 気になる方はぜひ投票を!

 https://www.fukkan.com/fk/VoteDetail?no=46257


■『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』ロバート・マッキー
・難易度:★★☆☆☆(★が多いほど難しい)
・解説
 すばらしい。自分の中ではバイブル。
 
ハリウッドでは超有名な本らしい。
 ピクサーの脚本チームの多くも彼のセミナーの受講生だとか。
 シナリオの経験がある程度ある人にとっては目からウロコの内容。
 ただ、分厚い。語り口はわかりやすく、面白い。
 自分は3回は読んでる上に、勉強ノートまで作成。
 本当にいろいろな発見がある本。
 序盤は結構難解で抽象的な内容が中盤辺りから具体的になる印象。


■『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』ブレイク・スナイダー
・難易度:★☆☆☆☆(★が多いほど難しい)
・解説
 ブレイク・スナイダー・ビート・シート(BBS)という
 映画の物語の構成素を時系列に沿って15に分ける理論を提唱。
 内容は平易でわかりやすい。
 このBBSを頭に叩き込んで映画を見ながら参照すると、
 非常に勉強になる。なにより優れた脚本のテクニックや構成が
 記憶に残るのでとてもいい! 引き出しが増える!

こちらの記事でも紹介しています。
https://note.com/fmaro/n/nb2f890e7b6fa


■『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』シド・フィールド
・難易度:★★★★☆
・解説
 三幕構成を解説する代表的な本。超有名なバイブル。必読本のような立ち位置。
 非常に重要なノウハウを解説しているが、語り口が難解。シリーズが他に2冊でているが、
 どちらもスルスルと頭に入ってこな印象。
 シナリオを書いたことがない人が読んでもあまりピンとこないかも



■『シナリオの基礎技術』新井一
・難易度:★☆☆☆☆
・解説
 ハリウッドではないが、
 日本で珍しく論理的なシナリオ構成論を展開する本。
 多数の脚本家を排出する
 有名なシナリオ学校「シナリオ・センター」の教本。
 やや内容が古いが、語り口も平易で基本的なことがわかりやすい。


……と、私のオススメ本はこんなところです。

ちなみに、ロバート・マッキーは『ストーリー』の中でこう語っている。

本書で論じるのは原則であって、ルールではない。
ルールは「このようにしなくてはならない」と命じるが、
原則は「こうすればうまくいく……そして、記憶に残るかぎりずっとそうだった」と示唆する。
このちがいは重要だ。「出来のよい」作品を真似て書く必要はない。
それよりも、われわれの芸術を形作る原則のなかで、よい出来であることをめざすべきだ。
経験が浅く自信のない作家はルールに黙従し、訓練不足で反抗的な作家はルールに従わない。真の芸術家はうまく型を使いこなす。
本書で論じるのは永遠に変わらない普遍的な型であって、公式ではない。

いや、ほんとその通りかと。
ハリウッド脚本術はロジカルで明晰で切れ味が鋭く、いわば強力すぎる剣。
つかいこなす経験や感覚や応用力がないと、この剣に振り回されてしまう。
初心者ほど原則に振り回されて、テンプレートなものしか書けなくなってしまったり、杓子定規に構成にこだわったりしてしまう姿を見てきた。

ここ、注意かと思います。





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