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ロバート・マッキーのギャップ理論をキャラクターアークに応用して考える

物語を作る上で、キャラクターがどう成長し、変化していくのかは非常に重要なポイントです。その成長を描くために効果的な手法の一つがギャップの連鎖です。ロバート・マッキーの「ギャップ理論」を基に、このプロセスを解説しながら、キャラクターアークにどのように応用できるかを探っていきます。



ロバート・マッキーのギャップ理論とは?

ロバート・マッキーは、彼の著書『STORY』で「ギャップ理論」を紹介しています。この理論の核は、キャラクターが目的を持って行動するが、期待通りの結果を得られないという現象です。このズレ、つまり「期待と現実のギャップ」が物語に緊張感を与え、観客を引き込みます。
マッキーは、ギャップが物語の推進力であり、キャラクターが次々と予測外の障害や結果に直面することで物語が進んでいくとしています。


ギャップ理論とキャラクターアークの関係

では、ギャップ理論をどのようにしてキャラクターアークに応用できるのでしょうか?
キャラクターがギャップを経験することで、その結果として葛藤が生まれ、それがキャラクターアークに繋がることがよくあります。
つまり、ギャップは物語の推進力であるだけでなく、キャラクターに内面的な成長や変化を促すためのトリガーとなる場合があります。


1. キャラクターの行動と期待

物語の中でキャラクターは、何か目的を持って行動します。
彼や彼女は「こうすればうまくいく」と信じているものの、現実はそう簡単には進みません。
たとえば、キャラクターが問題を解決しようとするも、その結果が逆に状況を悪化させるなどのギャップが生じると、物語は新たな方向に進みます。
ここで重要なのは、「期待と結果のズレ」が物語に緊張感を与え、次の展開に繋がるということです。


2. 思わぬ障害の発生

ギャップが生じることで、キャラクターは予期しない障害やリアクションに直面します。
この障害が単なる物理的なものではなく、キャラクターにとって感情的・心理的な打撃を与えると、物語に深みが生まれます。
たとえば、信頼していた人物に裏切られたり、自分が正しいと思っていた選択が間違っていたと気づかされるような障害です。
このようなギャップによって、キャラクターは一度立ち止まり、自分自身や状況を再評価することを余儀なくされます。この再評価こそが、キャラクターアークに繋がる重要なステップです。


3. キャラクターの深層が露出する

予想外の結果や障害に直面することで、キャラクターは普段は見せない内面的な側面を引き出されることがあります。
たとえば、冷静沈着なキャラクターが感情的になったり、強気なキャラクターが不安を抱えたりする瞬間です。
このようなシーンで、キャラクターの新たな一面が観客に示され、キャラクターに深みが生まれます。


4. 葛藤とキャラクターアーク

最終的に、キャラクターはこのギャップや障害を乗り越えるために、新たな行動を取らなければなりません。
つまり「変化」や「成長」をしなければなりません。
この選択の積み重ねが、キャラクターの成長や変化を促し、結果としてキャラクターアークが形成されます。
物語が進む中で、キャラクターは繰り返しギャップに直面し、その度に内面的に成長していく過程が描かれます。
最終的に第二幕の終盤あたりで、最も大きな障害・ギャップが訪れ、そこで主人公は大きなキャラクターアークを迎えることになります。
ここに至るまで小さなギャップと成長を繰り返してきたため、それらが布石となり、クライマックスのキャラクターアークへの納得性と感動を生み出します。


具体例:『アイアンマン』と『スター・ウォーズ』

『アイアンマン』のトニー・スターク トニー・スタークは、物語の冒頭では自己中心的でプレイボーイの天才発明家です。しかし、彼が自らの兵器が引き起こした被害を目の当たりにした時、その結果は彼の期待を裏切ります。このギャップがトニーに大きな葛藤をもたらし、彼は自己犠牲のヒーローとしての道を選び取ることになります。このプロセスで、彼は何度もギャップに直面し、その度に成長を遂げるのです。
『スター・ウォーズ』のハン・ソロ ハン・ソロは、物語の最初では利益優先のキャラクターですが、仲間と過ごす中で次々と予想外の障害に直面します。その結果として、彼は自己犠牲的な行動を選択し、リーダーシップを発揮するキャラクターへと成長していきます。この変化も、ギャップを通じてもたらされたものです。


例:『ダークナイト』のバットマン

『ダークナイト』のバットマン バットマン(ブルース・ウェイン)もギャップの影響を強く受けるキャラクターです。
彼はゴッサムシティを救うために闘いますが、彼の行動は度々予想外の結果を生み出し、ジョーカーの策略によって自分の価値観や信念を試されます。ジョーカーによって作り出されたギャップが、バットマンの内面に深い葛藤をもたらし、最終的に彼の信念を強化しながらも、代償として大きな犠牲を払うことになります。

例:『僕のヒーローアカデミア』の緑谷出久

緑谷出久(デク)は、ギャップ理論が強く働くキャラクターの一例です。無能力者として生まれながらも、ヒーローを目指すデクは、仲間たちや社会の期待に応えようとしますが、しばしばその過程で自身の無力さに直面します。
彼の努力が結果に結びつかないギャップが、内面的な葛藤を生み出し、彼がいかに成長し、ヒーローとしての役割を果たしていくかが描かれています。特に、「オールマイト」という理想の存在との比較や、周囲からのプレッシャーが彼に強い影響を与え、彼のキャラクターアークを形成しています。


まとめ

ロバート・マッキーの「ギャップ理論」は、物語の進行を強化するための強力な手法です。期待と結果のズレが物語に緊張感をもたらし、キャラクターが直面する障害が物語を豊かにします。
このギャップがキャラクターアークに直接結びつく場合も多く、キャラクターの成長や内面的な変化を促進します。
マッキー自身は、ギャップが必ずキャラクターアークに繋がると明言しているかどうかわかりませんが、この手法を応用することで、物語に深みを与え、観客に強い感情的なインパクトを与えることができるのです。


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