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#160_生産緑地の「2022年問題」とは
住宅街を歩いていると、家々の合間に急に畑が広がっていたりして、東京なのに、そこだけのどかな感じになったりします。これはだいたい、そこが「生産緑地」に指定されているからです。
ざっくりいうと、戦後の経済復興とともに都心部に人口が集中し出しますが、当時はまだ東京にも農地が多かったので、増える人口に対応する宅地の確保が課題だったようです。その対策の一環として、固定資産税や相続税が宅地並みに設定され、農地が宅地に誘導されていきました。
一方、それだとバランスを欠くので、その土地で農業を営むことなどを要件として、農地並みの低い税率での課税とするなどの優遇措置についても認めました。これが「生産緑地」です。
そして、その根拠法である生産緑地法の改正により、この生産緑地の指定要件が緩和されたのが1992年であるところ、生産緑地は、指定後30年経過すると、指定解除し得る状態になります。この指定解除に関連しては、自治体に対する買取申出の手続などが必要になりますが、そのあたりを端折って結論をいえば、指定解除に伴って、それまで生産緑地だった土地が、一気にマーケットに売り物として出てくる可能性があります。それにより、需給のバランスが崩れ、地価や地代に大きく影響するのではないか、という点が懸念されています。
これが、大量の生産緑地が生まれた1992年の30年後、すなわち2022年に顕在化するのではないか、というのが生産緑地の「2022年問題」です。
ただ、これ、以前は不動産業界まわりでけっこうホットなイシューでしたが、実は今はそこまで問題視されなくなっていると思います。というのも、国が、生産緑地法の改正により、「特定生産緑地」という制度を新設しましたので。
おおざっぱにいえば、指定後30年を経過する生産緑地については、特定生産緑地の指定がなされることで、さらに10年間同じような状態が継続されますし、その10年間が経過する場合も、繰り返し指定することが可能となるようにしました。
ここからは私見ですが、このコロナ禍で、生産緑地を買い取る十分な予算など自治体にはないでしょうから、自治体としては、土地所有者に対し、特定生産緑地の指定を受けることを促すでしょう。他方、土地所有者としても、この状況下で売りに出す自信は持てないような気がします。いったん指定後30年経過してしまうと特定生産緑地の指定を受けることができないこと(≒生産緑地をやめて売りに出すかどうかを考える時間は、実はそんなに残っておらず、その間にコロナの影響を脱しているかわからないこと)を考えると、とりあえず今回は特定生産緑地の指定を受けて、様子をみる選択をするのではないでしょうか。
こうして、問題はひとまず先送りになった感があります。ただ、抜本的な制度変更がなされたわけではない以上、この問題は、10年ごとに再燃するような気がします。