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社会に出て出会った人たち

秘書の仕事はやりたいけれど、好きなんだけれど、私の堪忍袋の尾が切れて以降、どうも仕事に身が入らない。

割り切ってやらねばならないと頭ではわかっていても「この人の為にこれ以上はやらない、やりたくない」という気持ちが勝ってしまう。それはそれでまたなかなか私にとってはしんどい。

やれるのに、上司が動きやすいように、先回り、先回りして、周りとの調整も…本当はもっと出来るんだけど、やりたいのに…何故か自制してしまって仕事に付加価値がつけられない。

それをしない自分に対してしんどくなった。

そんなある日、いつも通りに起きて電車に乗って会社に向かっていたら急に「今日会社に行けない。無理だ」と思った。

そして電車を降りて会社に電話をした。

「急に体調が悪くなったのでお休みさせて下さい」と。

そのあと母に電話をした。

「今日会社休んで富士山見に行ってくるから。夜には帰る」と。何故か急に富士山が見たくなった。

いつも通りに出勤した娘からそんな電話を受けた母だったがすんなりこう言った

「わかったわ。ゆっくりしておいで」と。

普段から家でその上司があぁだった、こうだったと悪態つく私の話を聞いていた母は直ぐに察知したのだろう。

母の上司への評価は「何だか色々問題ありそうな人だけど憎めない感じのする人よね」だった。

今なら私もそう思える。

でもね、その時朝から晩まで一緒にいて彼の為に仕事をしなければならなかった私の限界を超えていた。

決して悪い人ではないんだけどね…自分でもわかっている。

でも自分の為に人を、部活たちを利用する姿をこれ以上見たくないと思った。

総武線から何に乗り換えてどうやって行ったかはっきり覚えていないのだけれど、富士山の麓を走る見延線に乗ったのは覚えている。

ローカル線なので途中で地元の高校生達が乗ってきた。各駅停車。窓の外には私の大好きな富士山。ゆる〜い空気感。

何時間揺られていただろう。

甲府に到着した頃にはもう夕方だった。

その頃になると私の気持ちも癒されたのか「帰らなきゃ!」と現実が見れるようになっていた。

甲府から特急に乗って新宿につく頃にはすっかり暗くて会社帰りの人で駅は溢れていた。いつもの光景だった。

でも何故か心に余裕が生まれていた。

そこから満員電車に揺られ千葉の自宅へと帰った。

富士山効果凄い‼️

会社を休んだ罪悪感は多少はあったけれど、秘書という仕事柄、今なら休めるというタイミングもわかっていた。多分それがわかっていたから今日無理→今日なら休んでも大丈夫、で富士山に行っちゃったんだな、私…と思った。

でもこんな感じで日々過ごしてた私の異変に気づいたのか、尊敬する前の上司が私の話を聞いてくれた。

私の担当する上司がどんなキャラかは皆わかっていてもどうにもならない、諦める人が殆どの中…尊敬する前の上司は相談に乗ってくれたのだ。そして彼は今まで通り有言実行の人だった。

「どうする?この先彼の秘書を辞めて違う部署に移りたいか?どうしたい?」

そんな事を聞かれたのを覚えている。

「例えば⚫️部署に異動して〇〇さんの秘書になるという方法もある。またはこの部署の〇〇さんのところとか、」

幾つかの案を提示してくれた。

今のこの部署で、みんなが私の上司からの粛正を恐れて絶対に意見しない中、彼だけが一生懸命私の話に耳を傾け何とか私の環境を改善しようと考えてくれたのだ。

ただそのプランに私が乗っかってしまうと他の人に少なからず影響が出る。

何よりも相談に乗ってくれた上司に一番の影響が出るからだ。それだけは避けたいと思った。

その場でとても考え込んでしまったのを今でもよく覚えている。

すると

「じゃぁ、君が〇〇さんの秘書を辞めたいと思っているって僕が伝えようか?今度海外出張に一緒に行くから、その時に話してみようか?」と。

その時、私はこう思った。

私の気持ちを伝えてもらうだけだったら相談に乗ってくれた上司にはそんなに迷惑かけないのではないか?と。

私が「もう無理ー」という気持ちに気付いていながら気付かないフリをしている今の上司に第三者から言われたら彼も少しは反応するかもしれないと思った。でもそれよりもこうして相談に乗ってくれる上司にすがりたい気持ちになっていたのでしょう。この時の私は…

でも相談に乗ってくれた上司にとっても受け入れ難い人だったのは間違いない。部下を守る意識も高く正義感も強い人だったから私の今の上司とは正反対。

そしてそんな真反対な2人が海外出張へ行って帰ってきた。

「帰りの空港で話したよ。〇〇さんはもう貴方の秘書は出来ないと言ってますと」

おー!本当に言ってくれたんだ。

「その時どんな反応でしたか?」

「深妙な顔してたよ」

そっかぁ。

と思った。

そして同時にそんな役をさせてしまった前の上司に申し訳ないと思った。これ以上迷惑かけられないなと。

だって、部下から「貴方の秘書が…」って注意されたって構図だもの。よく考えたら、彼の性格を考えたら私の尊敬する上司の立場が危うくなる。

もうここまでやってもらっただけで十分だと思った。

私が嫌だ、だから担当を代わってもらう。これは割り切ってしまえば簡単なことなのかもしれないけれど色んな人を巻き込んでしまう事になってしまう。

自分ひとりの為に申し訳ない…

そう思う気持ちの方が勝ってしまった。

海外出張から帰ってきた今の上司に私は呼ばれた。

「00から話聞いたよ。お前が俺の秘書を辞めたいって言ってるって」

「………そうです。はっきり言って嫌です。私が相談しました。言ってくださいと。」

「そっかぁ…」 心なしかしょんぼりする上司。

私はそれをみて決心した。

私はもうこの今の状況を受け入れる覚悟をしよう、と。

この人のことも仕事として割り切ろう。

何よりも相談に乗ってくれた上司をこれ以上巻き込みたくない。私が覚悟を決めればいいんだ。と。

同時に相談に乗ってくれた上司に申し訳ないと思う気持ちが大きくなってきて不安になってきた。

あぁ。。。私が相談したことで彼が粛清の対象になってしまう…と。

怖くなった。

でも心を決めた。

そして相談に乗ってくれた上司に伝えた。

「とても言いづらいことを私の代わりに伝えて頂いて本当に感謝しています。でも私が異動することで普通に仕事が出来ていた人に影響が及ぶのも正直きついです。だから私は今のところでやってみます。ここまで動いて頂いたのに本当に申し訳ありません」と。

この時上司がどんな気持ちで私のその話を聞いたかは正直わかりません。

ただ私はこの後「やってしまった…」と。

しばらくの間後悔した。

その後しばらくして私の尊敬する1人目の上司に引っ張られて彼は部を異動していった。

あぁ、良かった。そう心から思えたのは彼らがその後どんどん出世をしていってから。

ヤクザみたいな世界だよ、と会社の上層部にうごめく人間関係を聞かされていたけれど、仕事も優秀で、人格者でもある彼らが責任ある立場になった事で「この会社もまだまともだったな」と思うことが出来た。

でもね、私の最後のゴマスリ上司もその後同じく重要なポストについたのだからサラリーマンの世界も色々。

人との出会い。運は大きい。

幾ら仕事が出来ても幾ら言ってることが会社の為であっても結局は人間関係。両方が兼ね備えていないと生き残るのは難しい。出世したいなら。。の話。

上に行けば行くほどね。

だから思う。

サラリーマンとはそういうもの。それを前提に割り切って要領良く立ち回る。それは無理、出来ないなら潔く諦める。だって自分が選んで入った世界、道だもの。

全て自分が選んだ道、結果。

だから私も受け入れようと思った。

そして私は自分を守るためにも変な遠慮をするのをやめた。出来ないものは出来ない。 

でもやれる事は、やらねばならない事はやろう。それが私の仕事。自分が選んだ以上。

とは言え、この上司とは腐れ縁で。

私が社内結婚、退社し、夫となった人と海外駐在した後も交流?関係は続くのです。

彼の話になるといつも最後はこれ

「仕事絡まないといいおじさんなんだけどね〜」

でも私も結構なキャラなのかもしれない。

上司である事を忘れて人として対等であろうとするが為に上司呼び出して説教したり…一歩間違えば即クビだ…苦笑。

逆に私はその上司に弄ばれていたのかも?しれない。苦笑。

この後もこの上司は私の日記に度々登場します。

この後始まる海外での暮らしの中にも漏れなく…苦笑

続く…

mai











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