ドイツから初上陸、Urban ArtのMUCA展@森アーツセンター・ギャラリー
今年の現代美術ラインで一番、期待していたのがこの「ICONS of Urban Art MUCA」展。人気のバンクシーからカウズまで、ストリート・アート系の人達の作品をコレクションしているMuseum of Urban and Contemporary Art (MUCA)から初来日ということで、混雑しそうなタイミングを避けて鑑賞してきました。
この展覧会を知るまで、MUCAを知りませんでした。てっきりNYにあるのかと思いきや、ドイツのミュンヘンに。
今回、10人のアーティストを取り上げ、作風やMUCAでの展覧会写真、インタビュー映像等、多角的に解説してくれています。アーティストと作品のセレクション、そのプレゼンテーションまで全部良かった。写真も撮れるし。今はもうメジャーなアーティストばかりですが、元々ストリートで作品を展開していたからこそ、作品自体がパブリックに共有されることで有機的に広がっていくのを良しとしているのかな。
全員個性的で全部の作品を載せたい!この感動を共有したい!チケット平日でも2,200円しますが(まあ最近は2,000円超えは普通になりつつありますが)、バンクシー系が好きな人は観に行く価値あり。フライヤーのコピー「バンクシーからカウズまで」のあたりは鉄板ですが、それ以外のアーティストもびっくりするくらい良いです。
まず入口からこのKAWSの「コンパニオン」のフィギュアがお出迎え。そして、広告をリデザインした作品。もう今やブランドとのコラボでポップカルチャーの大御所。
このShepard Faireyもカッコいい。スタイリッシュだけど政治的メッセージが込められている。ポートレートに描かれている人も、ジミヘン、マーティン・ルーサー・キングJr、ボブ・マーリーと、何が彼をインスパイアしているのか伝わってくる。
こちらはINVADERの作品。70-80年代のビデオゲームに影響を受けて、世界中の都市の壁にピクセルアートを展開しているそう。ルービックキューブをピクセルに見立てて使った絵も面白い。
そして、このSwoonが今回、特に気に入ったアーティストの一人。元々はミクストメディアを使ったストリート・アーティストで有名に。そして、切り絵や貼り絵で大規模なインスタレーションを展開。紹介映像を見ていたら、切り絵を小麦粉と水で作ったペーストで多層的に貼って不思議な存在感を出していた。色合いが全体にアースカラーなのが何か新鮮。アーバン・アートって全体的にメタル、プラスティック、コンクリート、エレクトリックな感じがする中ではちょっと異質。独特の世界観。
次のVHILSは、壁や扉を独自のやり方で削って大型ポートレートを作成しています。弾丸をドドドドっと撃つと絵ができている、というシーンが映画やアニメではありますが、そんな風に制作したんじゃないか、と思わせる。「現代の都市考古学者」とも称されるそう。確かに、都市の壁にこんな風に痕跡が残って近未来の人が見たら、新しい遺跡に見えるかも。
今回、一番の衝撃がこのRichard Hambletonの「シャドウマン」シリーズ。等身大くらいあるこの不気味な影男。凶々しいオーラが作品の中から発している。家にあるだけで殺人事件が起きそう・・・私としてはスティーブン・キングの小説と同じ気配の作品群でした。創作活動を始めた当初は、舗道に殺人事件の被害者の輪郭を描き、偽の犯罪現場を演出することで人々に衝撃を与えていたとのこと。その後、1980年代にNYの庭や路地に、人々を驚かすために描いたこの人影が、謎の男「シャドウマン」の仕業と呼ばれるようになったと。うーん、都市伝説。
それ以外のアーティスト作品もちょっとずつご紹介。
作品数はそれほど多くはないですが、どれも面白いし刺激的。ちょっと残念だったのは、ミュージアムショップの品数がとても少なかったこと。最近はそこで稼ぐと言わんばかりに充実した展覧会が多かったのでがっかり。特に、ここ森アーツセンター・ギャラリーは、不思議の国のアリス展とかヒグチユウコとか、これでもか!というくらいショップが充実していたイメージがあったので意外。
バンクシーはペストコントロールも厳しいし、他の展覧会でもほとんどアイテム無かったから、アーバン・アートの人達は作品撮影や共有はいいけど、商品開発は厳しいのか?。うーん、フィギュアやポスターも作品だったりするから、安いコピーは作らないぜってところなのかな。
<おまけ>エドワード・ホッパーの「ナイトホークス」、見た記憶はある・・・調べたらシカゴ美術館にあるそうです。この静かなホッパー的ナイトライフがバンクシーによってガシャンと破壊されている。何がってアメリカの象徴的な深夜のダイナーの絵なのに、なぜイギリス人がフォスタービール?登場人物が都会の孤独を味わっているところだったのに、全員注目!と巻き込まれ事故状態。面白すぎる。