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2024年上半期の書き残し②SHISEIDO GALLERY

  銀座7丁目の資生堂パーラーの地下にあるギャラリー、フリーで小ぶりということもあり、気楽に立ち寄れるのですが、上半期に見た展示で良かったものを3つほど。 

1.君の存在は消えない、だから大丈夫。

  3月に開催されていた「shiseido art egg」第17回目の一人、野村在氏の展覧会タイトル。このタイトルにしびれた。

展示室壁に書かれたタイトル

野村 在は、写真や彫刻を素地とした様々なメディウムを通して、生と死やその間に横たわるものを露わにすることを試みてきました。本展では、亡くなった人の写真を水に印刷する写真装置や、今後、数十年間において稼働し続けるパフォーマティブな作品を発表します。過去、現在、未来が交差し、アナログからデジタルへと変容する情報媒体を独自の視点で捉え、人間の本質や存在の在り方について問いかけます。

展覧会サイトより引用

  なんと言えばいいのかな。「断捨離する!」と言って、多少なりとも生活を身軽にしようとしつつも、嵩張らないからデジタル上には膨大な記録が残っている。写真を撮ることもSNSに投稿することも、こうやってnoteを書くことも、どこかに存在を残しておきたいという潜在的な欲求(あるいは不確かな存在への不安)があるのかな、ということを身につまされました。

Untitled(君の存在は消えない、だから大丈夫):ずっとDNAデータを打刻し続ける機械。白い山が打刻されたテープ。天井にあるのが打刻機。後ろの額縁に書かれているのが指示書で、アーティストが没しても打刻を止めてはいけないとなっている。いなくなっても、DNAデータとしてずっとここに存在し続けるというもの。
ファントーム:亡くなった方々の写真を水に印刷するというもの。私はてっきり写真そのものがどうやってか水の中に描かれるのかと思いましたが、画像を抽象イメージに変換してふわふわっと色がゆーっくりと出てくる。で、自動で浄化されて透明になった後に次の絵(の変換されたイメージ)が・・・というもの。1枚が終わるのにかなり時間がかかり、ぼーっと眺めてしまった。

  観念的ではありますが、古くから人間の欲求である「不死」をこういう風に捉まえたんだな、と新鮮。

2.ブタデスの娘

  同じく「shiseido art egg」第17回目の一人で4月に鑑賞した岩崎宏俊氏の作品。アニメーション&インスタレーション。記憶をトレースするうちに、本当に自分の記憶だったのか、後から改竄された記憶なのか、親から聞いたから覚えているような気がしているだけで、本当は覚えていないことなのか、そういう自分の記憶のあやふやさが奥底で不安となる感触を思い出すような作品でした。

岩崎 宏俊は実写映像をトレースしてアニメーションを制作するロトスコープという手法に着目し、芸術表現としての可能性を探求してきました。本展では、パンデミックの影響で直接会うことの叶わなくなった人や残された風景の記録映像をトレースしています。作者はその行為が追憶であると捉え、大プリニウスが『博物誌』に記した絵画の起源、「ブタデスの娘」が離別する恋人の影の輪郭を壁に写した行為と重ね合わせます。ロトスコープを通じ、描くことや記憶の在り方を問い直す試みです。

展覧会サイトより引用

  記憶のうつろう感じが、モノクロと光と影で繊細に表現されていました。白一色で天井の高いこのギャラリーで見ると本当に綺麗。

これは壁に映された影絵
アニメーション
アニメーション:ちょっと鉛筆で描いたパラパラ動画のような・・・
アニメーション:動いていく動いていく
アニメーションのような表現をガラス板上で表現
夏の蜃気楼のような・・・

3.オドル ココロ

  エッジの効いた若手のものも取り上げますが、このギャラリーは資生堂ブランド発信基地なので、自社ブランドの過去クリエイティブもよく展示しています。それはそれで懐かしくて面白い。昔の広告は尖ってたなあ、と懐かしく振り返れます。今回はパッケージ!

今年は、明治初期から2010年代までに当社が世に送り出してきた資生堂のクリエイティブワークのなかから、心躍らせるパッケージデザインと広告デザインに注目し、商品展示、映像、音を通して「オドル ココロ」を複層的に表現する展覧会を開催します。開発担当者やデザイナーたちの遊び心やチャレンジ精神が発揮された200点以上に及ぶ商品、並びに広告約70点を集め、資生堂ギャラリーの空間にて圧倒的なスケールで紹介します。

展覧会サイトより引用

  オイデルミンなどは、広告展等でよく見るので・・・それよりも「昔、祖母の家のお納戸に大事にしまったままだった頂き物」を発掘したような感じの商品が楽しかった。昔はお中元やお歳暮なのか、石鹸を頂き物で箱でもらった記憶が・・・あやふやですが。

「ホネケーキ」のこの丸い感じ、記憶の片隅に・・・しかしホネってハニーだったのか
このデザインではありませんが、「ドルックス」は祖母&母の鏡台の引き出しにあった気がする
MG5!これこそがアフターシェーブローションって感じ。お父さんが使うイメージ。昔はパッケージデザインがあまり変わらなかったので、しっかり刷り込まれてます。(多分ブランドとしては少しずつブラッシュアップしていると思いますが・・・)
この黄色いサンオイルは子供の頃浜辺で見かけたはず・・・「オイル!」って感じのオイルだった。しかし日焼け止めじゃなくてオイルを使っていた時代が恐ろしい・・・
パーキージーン!お姉さんグッズのイメージがある。欲しかった・・・
このタコとマンボウは記憶にあります。

<余談>展覧会巡りにはいくつか定番コースがありますが、この資生堂ギャラリーとポーラミュージアムアネックス、大日本印刷のギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)が(個人的に)銀座3大フリーギャラリー巡りとなっています。この界隈は汐留のパナソニックミュージアム、銀座松屋の展覧会、京橋のアーティゾンミュージアム(ブリジストン)や丸の内の静嘉堂(三菱)、有楽町の出光美術館など、企業関係美術館が充実しているので、どれかに行く時には周辺の展覧会情報をチェック。
  加えて最近は三の丸尚蔵館が開館したし、そこまで行ったら竹橋の東京国立近代美術館が・・・いや、竹橋だったら東西線から銀座線乗り換えて三越前の三井記念美術館か?と毎回、どう組み合わせると効率良く、でもボリュームバランスもほどほどに鑑賞できるのか、カレンダー見ながら悩んでます(でも楽しい)。

<おまけ>ということで、この界隈のフリーギャラリーで良かった作品を。

鉄骨のゴッデス@ポーラミュージアムアネックス
鉄骨のゴッデス@ポーラミュージアムアネックス
ヨシロットン 拡張するグラフィック@ggg
ヨシロットン 拡張するグラフィック@ggg
表彰と趣意(第2回)@ポーラミュージアムアネックス
表彰と趣意(第2回)@ポーラミュージアムアネックス
ポスターと家具の共演@BAG
ポスターと家具の共演@BAG

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