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【プロセカ】ワンダショ書き下ろし曲を語る Part2
こんばんは、飛び亀です。
今回は、先月のPart1のつづきです。
引き続き、プロセカの誇る数々の「書き下ろし曲」の中で、ワンダショメンバーへの書き下ろし曲に絞って語っていきます。
こちらの記事では、12曲目の「星空オーケストラ」から、現状の最新となる「成敗いたAAAAAす!」まで語り尽くします。
※あと、またしてもえむちゃんの話が重めです。
ごめんなさい。
※今回は「世界を照らすテトラッド」のみ意図的に配信順ではなく最後に回しております。
12. 星空オーケストラ
公式動画(3DMV)
DATA
えむイベント書き下ろし曲(3曲目)
作詞・作曲 水野あつ
編曲 雪乃イト歌唱 ワンダーランズ×ショウタイム × 巡音ルカ
語りたいこと
この曲には、2面性を感じています。
いえ、歌詞がダブルミーニングになっているとか、そういう凝りに凝った曲というイメージがあるわけではありません。むしろ非常に純粋に、仲間の絆を歌った曲です。それで、どうして2面性を感じるのか。
それはもちろん、ワンダショのイベントストーリーのせいに他なりません。
まずストーリーを知らずにこの曲を聞いた人は、えむちゃん書き下ろしらしい可愛らしい曲、そしてワンダショらしいミュージカル曲だと感じるでしょう。(この曲はイベント終了時に発表されているため、僕は「ストーリーを知る前に聞く」体験はできませんでした。)
そして歌詞を見て、「仲間たちがいつも一緒にいるよ」「一緒に手を繋いで歩き出そう」というような、深い絆で結ばれた仲間同士で一緒に夢を追っていくようなイメージを抱くのではないでしょうか。
それがまず1面です。
しかし、この曲が書き下ろされたイベント、その前後のワンダショのお話を読んでみてください。少し意味合いの違ったもう1面を肌身に感じるはずです。既に読んでいる方々は、この感覚、分かるんじゃないでしょうか……
何を隠そう、この頃のワンダショは「別れ」が1つの主題になっていました。そしてこのイベントは、なんとえむちゃんが仲間との別れが近いことに気付いてしまうというお話なのです。
お別れをしても、夢を追う仲間を応援する。今の「ワンダショ」がなくなってしまったとしても、ずっとずっと応援する。そんな心構えをするえむのお話でした。
このストーリーを踏まえて、この曲の雰囲気や歌詞を見ると、いかに切ない曲かという感想をもちます。
「君と会った日を思い返した」
「ずっとみんなで一つだよ」
「いつまでも側にいるよ」
「君と日々過ごした時間が宝物だよ」
「色とりどり煌めいた この場所でまた会おうね」
そう、みんなとの思い出はずっと宝物。別れたって、想いは一緒だよ。
だから、またここで会おうね。約束だよ。
こういう受け取り方をすると、3DMVのえむの表情も含め、心が痛くなるような曲に感じるわけです。ああ、ワンダショの別れは避けられないものだけど、またいつか会おうと約束をする。そうやって、前に進んでいくんだ。強いなぁ、青春の子たちは……
本当にそう感じていました。当時は。
――実はその後、ワンダショの物語は進み、仲間たちの別れを主題とした一連の展開はいったんの終結を迎えました。そして、その流れを汲んで「えむの誕生日ライブ」が行われた2023年9月9日、改めてこの「星空オーケストラ」が歌唱されたのです。
僕は、このときに初めて先述の、表の面である「深い絆で結ばれた仲間同士で一緒に夢を追っていく」曲として、星空オーケストラを受け取ることができたのです。すごく感動しました。二重に感動しました。
そういうわけで、この曲を2面性とご紹介させていただきました。本来の楽曲の意図とは異なるかもしれませんが、この二重の感動を皆さんにもぜひ味わってほしいです。
だから、これを読んだ記憶は消してください(笑)
※などとしたためているうちに、つい先日コロコロのインタビューで、作曲の水野あつさん本人が「二面性」を強調されていました……やっぱり意図的だったのか……もっと早く書き終わればよかった……
13. Mr. Showtime
公式動画(2DMV)
DATA
司イベント書き下ろし曲(3曲目)
作詞・作曲・編曲 ひとしずく×やま△
歌唱 ワンダーランズ×ショウタイム × 巡音ルカ
語りたいこと
この曲は、まず司の曲として非常にカッコいい。というか、この曲の書き下ろされた司イベントがとんでもなくカッコいい。ここまでずっと進化を見せてきた司の演技。それでもぶち当たる大きな壁。しかし司は自らの不甲斐なさを、力不足をその身に全て受け止め、その悔しさをもって演技力を一段上のステージまで伸ばすのです。さまざまな経験を積んで、どこまでもスターへの道を駆け上がる司。彼を応援するワンダショの面々。しかし、誰かが夢に近づくことで、ワンダショの別れもまた一歩近づくのでした。
この「Mr. Showtime」は、そんな司本人を、そしてワンダショのこれまでとこれからを全て内包したような、とんでもない曲です。
まず1番、2番の歌詞は、ワンダショそのものを表現したような印象です。MVでも人形劇でメインストーリーを演じていますが、Aメロはどことなく各キャラのネガティブ面を表している感じがしますし、Bメロやサビはワンダショの存在そのもの!といった言葉が並んでいます。ワンダショってまさに「近道ばかりも 味気ないだろう? エンジン全開! GoGoジェットコースターで 山も谷も全速!」って感じでやってますからね。
ちなみに2番の寧々の歌唱力が光るAメロ、そして2番サビだけメロの異なる「不完全燃焼」のところ(まさに不完全燃焼な感じで音が下がる)、そういうオシャレさも好きです。
そしてCメロ。
ここは天馬司という男を表現したような歌詞だと思っています。
凡な才の煩悩が 這う這うの体でゆく
欺し欺してナルシスト 気張れや気取れ一等星
かませ
ハッタリも上等! 自信過剰?
見切り発車 ブレブレ走行
大見得切り 大目玉、食らっても
尽きぬ好奇心 止められやしない!
ハッタリでも自信過剰でも、見切り発車でも見栄でも叱られても、好奇心(ワンダー)は止められない! さあ走れ、一等星(スター)に向かって!
そう、司はそういう男です。
そしてそして、落ちサビ~ラスサビは……ワンダショのこれから、つまり「別れは来るけど、一緒に夢を目指そう」ということがもうハッキリ描かれていますね。
「まだ終わらない 終わりたくない それでもいつかは……」
「閉園時間が来るまで 一層 踊り明かせ 歌い明かせ」
「忘れやしない 嘆きやしない 「別れ」じゃないから」
「閉園時間」があまりにも人の心を抉る……
星空オーケストラでもそうでしたが、はっきりといつまでも一緒にはいられないことを意識させつつ、決して忘れない、それは本当の「別れ」じゃないと歌う。これは、本当にこの時期のワンダショのお話にはグサッと刺さってくる内容です。そういうことを各曲それぞれの表し方をしてくるから、もうたまらんのです。
14. 箱庭のコラル
公式動画(3DMV)
DATA
寧々イベント書き下ろし曲(4曲目)
作詞・作曲・編曲 koyori
歌唱 ワンダーランズ×ショウタイム × KAITO
語りたいこと
エモを集めてエモで固めてエモく歌った、エモさの集大成のような1曲。歌詞も曲調も3DMVも全てが心を洗い流していく、爽やかさと切なさという2色の涙で。(何が言いたい)
この曲は本当にメロディの美しさと、寧々ちゃんの歌声を最大限活かしたような音域と伸び、そしてラスサビの転調とドラム隊(ゲームカットとフルバージョンで入り方が変わりますが、甲乙つけがたくどちらも良い)。もうどうしようもなく良くて、聞いているだけで涙が出ます。
イベントストーリーは、寧々ちゃんがミュージカル俳優になるためにスター(司じゃなく現役のスター)の指導を受けて徹底的に修行し、また一段成長し、大きな公演を成し遂げるお話です。そして、この曲の歌詞は寧々ちゃんのこれまでの成長と想いをすべて詰め込んだような、そんなものになっています。
何かに怯えて、耳をふさいで、曖昧なままで、押し潰されて歌えなくなっていた私。でも、もがいて手を伸ばした先にあったのは、過去の私からのエール。そして、あなた(出会った仲間たち)。だから、未来への壁が高くても、私は歌って、笑うんだ。
めちゃくちゃ意訳ですが、この曲の歌詞を全体的に寧々寄りに解釈するとこうなると思っています。特に大好きで何度も泣いてしまうのがラスサビ冒頭、つまり転調直後のこの歌詞です。
叶わない願いならセカイは始まる事も無くて
あなたに出会う事も無いままで
しつこいようですが、この時期のワンダショのお話は、それぞれの「夢」と「別れ」に着々と近づいている展開でした。それを踏まえてこの歌詞を見ると、もうしんどくてしんどくて仕方ないのです。
「これが叶わない夢だとしたら、わたしたちのセカイだってなかったよね。そうしたら、みんなに出会うこともなかった。出会ってくれてありがとう。みんなのおかげで今、夢に向きあえているよ。」
またしても勝手な解釈ですけど、この歌詞からは寧々の、いやワンダショみんなのそんな想いを感じます。もうあまりにも心動かされすぎて、ずっと泣いてる。
あ、あと単純に、
青空の終わりと夜空の始まりの間で
私は押し潰されそうになった
ここの表現が上手すぎる。「青空の終わりと夜空の始まりの間」は、夕方、夕焼けのことですね。これに「押し潰されそうになった」をえむが歌う歌詞割りがやばい。えむちゃんは、苦手なものが「夕焼け」だったんですよねェ……うん、夕焼けの3DMVも綺麗すぎる。
でもやっぱり最後の、ワンダショが輪になって踊るシーンなのよね、最高。
15. キラピピ★キラピカ
公式動画(2DMV)
DATA
えむイベント書き下ろし曲(4曲目)
作詞・作曲・編曲 nyanyannya(大天才P)
歌唱 ワンダーランズ×ショウタイム × MEIKO
語りたいこと
1周回って2周回って、そして3周回って、もはや語ることはない。(謎の暴論)
「ワンダショの物語 第2部フィナーレ」の幕を引くザ・ミュージカル・ソング。それがこの曲「キラピピ★キラピカ」です。ちなみに★は白抜きされていない方。この曲が書き下ろされたイベントストーリーがいかなる内容だったのかは、過去の記事にて長々と書き連ねているので今回は省略します。
ワンダショとして、いよいよ本格的なミュージカル曲をもらった形になります。やっぱり歌詞もそうですし、あっちこっちに飛んでいく曲調も、愉快な掛け合いも、どこをとってもワンダショらしい。また歌詞も「世界は私の心のまま」(自分の人生は自分の心次第)ということを、とっても楽しく、ワクワクする形で表現しています。特に最初の「雨が降った日には 抜けるような青い傘をさして 夏の空にするわ」がシンプルで好き。
あとは、サビごとに出てくる「おまじない」が毎回少しずつ違うのがかわいい。
「生まれたてのおまじない」
「ひみつのポケットにおまじない」
「ちっちゃな手にギュッと握ったおまじない」
「キラピピ★キラピカ」というおまじないを一言呟けばあら不思議、「世界は私の心のまま」になるよ。そんなところでしょうか?
でも、最後の「ちっちゃな手にギュッと握ったおまじない」という表現を見ると、やっぱりおまじないは「夢」のことも表しているんじゃないかなぁ、なんて感じちゃいます。えむちゃんへの書き下ろしなので、特にね。
そして、この曲でみなさん注目する部分は、やっぱりここでしょう。
「でもね……私の物語はここでお終い」
「じゃあ 始めよう――いま! 次の物語を」
もう本当にここはね、最高。ありがとう、天馬司。
いや、ほんとに。「終わりじゃない」とかじゃないんですよ。終わったなら始めよう、次の物語を――「物語が終わったらどうなる? 次の物語が始まる!」なんですよね!
実はバーチャルシンガーのメインストーリー(ワンダショ)でも、次のようなことをKAITOさんが言っています。
「ショーには必ず終わりがあるけれど、終わりから始まるものがある。それは、次のショーを楽しみにする気持ちだよ。」
これに近いものを、キラピピにも感じます。そういう意味でも、本当に集大成感がある曲ですね。
あ、あとですね。
大人になったいま、この歌詞も大好きなので最後に紹介します。
みなさんもぜひ噛み締めてください。
自由はもっと欲しいけど
行く先の決まった汽車には乗りたくない
大人って ね! 大人ってつまらない
そうね 遊び方を忘れた人を大人というなら
発想が大事よ 『さぁ掴まって!』
走っていれば止まってないし
飛んでる間は落ちてはない
ね! 何処までも行ける 『いくつだって』
16. フィラメントフィーバー
公式動画(3DMV)
DATA
司イベント書き下ろし曲(4曲目)
作詞・作曲・編曲 栗山夕璃
歌唱 ワンダーランズ×ショウタイム × MEIKO
語りたいこと
進級して、新しい世界に旅立ったワンダショに送られた最初の書き下ろし曲。それがこの「フィラメントフィーバー」でした。
ストーリーは、修業として外部の劇団に参加したワンダショが初めてリアリティ寄りの公演を練習することになり、セリフ数個の脇役を命じられた司がその役作りに四苦八苦するお話。結局、その脇役の人生そのものを作り上げることで、半ば主役のように捉えて演じるわけですが、逆説的に司は元来「主役級しか演じられない」タイプであることも示されたと言えるでしょう。今後どうなるかはわかりませんが、それもまたスターの宿命でしょう。
さて、曲調としては非常にワンダショらしく展開に富んでいる……というと前曲のキラピピ★キラピカもそうでしたが、あちらが大団円感強めだったのに対し、こちらはショーそのものを最初から最後まで見ているような気分になる曲です。
いや、よく分からんですね。何にしても久々にイベントストーリー側からの重圧なしに聞ける曲で、トンデモワンダーズ~にっこり^^調査隊のテーマあたりの頃のように、「楽しぃ~!」という気持ちでいられます。
上記の動画を見ていただくと分かりますが、3DMVもショーらしい動きマシマシ、スポットライト強めで、プロセカ3周年のMVアップデートの恩恵がはっきり分かるものになっております。イントロの練習風景、アウトロのごっつんこ、月光。言うまでもなく最高ですが、主役の司くんをはじめ、各キャラスポットがあたってパート分けがあるのも良いですね。
歌詞は基本的に司くんのことを語ったものなのですが、ところどころ各キャラにも当てはまる部分がある感じがします。
というか逆ですね。例えば、えむが歌う部分はえむのことを、類が歌う部分は類のことを表現しているように思えるのですが、歌詞全体を俯瞰してみると全部司にも当てはまるなぁと。例えば2番の
変わっていく時の流れから逃げて
自分すら見失ってしまった
ここの歌詞はえむちゃんが歌っているので、えむちゃん自身のことかな、と考えることもできます。が、メインストーリーで自分の本当の想いを忘れていた司にも当てはまるのかな、なんて想像も膨らむんですね。
しかしこのあたりの切ないパートとサビのテンションの落差が本当に良いなぁ、この曲。
そうそう最後に、曲名にもなっている「フィラメント」。これはもちろん電球のジグザグしている部分、つまり電気が通ると光を放つ部分のことです。まさに輝ける未来のスター天馬司を表している言葉というワケ。司という光が世界を照らす。そう歌うこの曲のサビは、まさに未来の彼の姿を歌っているとも言えますね。
17. サイバーパンクデッドボーイ
公式動画(2DMV)
DATA
類イベント書き下ろし曲(4曲目)
作詞・作曲・編曲 マイキP
歌唱 ワンダーランズ×ショウタイム × 鏡音リン
語りたいこと
ひょんなことから映画制作に携わることになったワンダショ一行の中で、類が演出の先輩から多くのことを学んでいくストーリーの書き下ろし曲……なのですが、なんと一般には「あんまりストーリーと関係のない書き下ろし」と言われている曲です。類の声優さんも、
「いい意味でストーリーに関係のない楽曲」
と表現してオススメしています。ただやはり、なんとなく類に重なるところのある歌詞だなぁとは感じますね。まあ今回のイベントストーリーとは確かにあんまり関係ないのですが、「キャラクター自体にフィーチャーしているけどストーリーそのものとの関連は薄め」な曲は他にも少なからずあるかなと思います。特に初期の書き下ろしはその傾向が強いですし、何なら1つ上のフィラメントフィーバーもそうかもしれません。
それで、どんな歌詞かと言うと、全体を通して「バズメロディへの明確なアンチテーゼ」を歌った曲になっています。「バズ」が何を指すかは明確な定義はないでしょうけれど、ただの「人気」とはまた違って、より早く、より数を取れるコンテンツが「バズった」と言われます。そのためには、より広い範囲に刺さるものでなければならない。逆に分かりにくいもの、特定の人にしかハマらないもの、スルメ系などはバズれないのかなと思います。
そこで歌詞を見ると、「音楽なんて全部ファッション」「芸術より数」「歌詞とかどうでも良い」という態度に対して「ふざけるな」「意味わかんねぇ」と繰り返す。このメッセージ性があまりにも直球でロックなために「ストーリーと関係ない」と言われてしまうわけです。が、
君の伝えたかった物は どうしたんだい?
このあたりが類の過去と重なってくるからこそ、書き下ろしなんだろうなと感じます。特にワンダショの歌うセカイ版ラスサビでは、原曲と異なり「僕の伝えたかった物はどうしたんだい?」と歌っています。かつて自分のやりたい演出を周囲に受け入れてもらえなかったけれど、迎合せず一人でのショーを続けた類。彼が歌うからこそ、「バイバイバズメロディ」が光るのです。
まあ結構この曲自体もバズメロディっぽいのが皮肉効いててロックですよね。司くんのがなり最高です。
18. オペラ!スペースオペラ!
公式動画(3DMV)
DATA
えむイベント書き下ろし曲(5曲目)
作詞・作曲・編曲 ナユタン星人
歌唱 ワンダーランズ×ショウタイム × 鏡音レン
語りたいこと
最&高!とはこのこと。
えむちゃんらしい、そしてワンダショらしい可愛くてエモいナンバー。
この曲が書き下ろされたのは、新しい修行先の劇団で和風劇の主役「牛若丸」を演じることになったえむが、お客さんに「伝わる」ような演技を身につけていくお話。
――と考えると、こんな宇宙宇宙してるなんて「またイベストと関係ない曲?」という印象も一瞬受けます。が、「君のシグナル探索中」「あった! 君の受信アンテナ」「想いがラブが壮大すぎて伝えきれない」などなど、伝える・伝わるに関係する言葉が散りばめられているのです。今後もお客さんの受信アンテナに、えむちゃんの夢を届けていけるといいね。
……危うくまたえむ記事になりそうなので話を戻しましょう。
この曲はコールあり、掛け合いあり、わんだほいありで、是非ともリアルライブで盛り上がりたいポイントがたくさん詰め込まれています。一方、落ちサビではグッと来る雰囲気の中でグッと来る歌詞が歌われます。
これはドラマじゃなくて 君と僕はこの宇宙でいま生きてる!
リアルな生を歌うえむちゃんとレンくん。控えめに言って最高です。
それに加えてサビのメロディラインにも工夫があって、1番サビでは「ぜんぶ乗せて~」のレンくん歌唱が低音に下がるのですが、ラスサビの「ぜんぶ乗せたーい!」はこれでもかと高音えむが炸裂するんです!カタルシス!!
そう、この曲の良さはこういうちょっとした緩急にも詰まっているのです。
あ、そうそうこの曲、ラスサビの高音えむを除くと、あとは全体的に低音えむなんですよね。メイン歌唱であるえむちゃんの音域が絶妙に活かされているところも推しポイントなのです。高音も低音も、聞きたいえむ音程の詰め合わせ!
……結局えむ語りばっかりなので別の話もしますね。
まず1つはサビに繰り返し出てくる次の歌詞。
ちいさな星から みれば悲劇も
宇宙からみれば 喜劇だ!
ここは、かの有名な喜劇王チャップリンの至言「人生はクローズアップで(近くから)見れば悲劇、ロングショットで(遠くから)見れば喜劇だ」を引用したものと考えられています。チャップリンを引き合いに出すワンダショ、ついにここまで来たか…という思いに駆られますね。ワンダショとしては「キラピピ★キラピカ」で歌ったことと同様、自分の人生を楽しめるかどうかは自分の心次第といった意味合いでしょうか。これもまた笑顔を生むための魔法の言葉ですね。
そして2つ目は、3DMVの話。ぜひ改めて上記の動画を見ていただきたいのが寧々ちゃんの表情。いかがでしょうか、なんだかニコニコで明るくないですか?
もちろん、寧々が感情を乗せて歌ったり演じたりできるようになったのは、ストーリー的にはもっと以前からです。でもたまたま曲調的な理由で、また3DMV演出的な理由で、今までこういう「楽しそうな」寧々ちゃんが目立つMVってあまり無かった気がするんですよね。ちょっと動きが小さかったり、ツッコミ役だったり、真剣に歌って踊っていたり。そうした役回りが多かった寧々ちゃんが、ニコニコで動き回り、あろうことか手を振りながらカメラに入ってくる。控えめに言って最高です。こうした寧々ちゃんの進化は、実は次の曲でもいかんなく発揮されています。
19. 成敗いたAAAAAす!
公式動画(3DMV)
DATA
司イベント書き下ろし曲(5曲目)
作詞・作曲 じーざす
編曲 ワンダフル☆オポチュニティ!歌唱 ワンダーランズ×ショウタイム × 巡音ルカ
語りたいこと
なんて楽しい曲なんだ…ワンオポさんありがとう……
時代劇村で司が壁登りして泥棒忍者さんを捕まえるお話の書き下ろし曲(これは本当)。ワンダフル☆オポチュニティ!さんのワンダショへの書き下ろしは2曲目になります。1曲目はそう、あの「にっこり^^調査隊のテーマ」。だからこそ期待値も高かったわけですが、これはその期待をさらに超えた、ワンダショワンダショした楽曲です。
何より、ついにワンダショに降り立った和風曲というのがいいですね。前曲の宇宙から七変化、和風ながら掛け合い中心で、かつ寧々の歌が映えるパートもある、司の「いよぉ~~」もある、2番にはにっこりオマージュのパートもある。とんでもないネタの詰め込み方です。
というか3DMVのクオリティの上がり方がすごいですね。もはや2Dと融合してきているというか。ぜひ上記の動画をヘビロテしてくださいませ。
さて、カッコいいパートはあるものの全体的にはジョーク曲のようにも聞こえる(見える)わけですが、歌詞をよくよく見ると、しっかり「ワンダショ」の今が詰まっています。
泣けど笑えど この世は情け 夢路は
みちづれじゃ~
1番サビの前半。旅は道連れ、世は情け。
ワンダショは世界の笑顔のために日々奔走しています。そして「夢路は道連れ」、夢を4人で一緒に追うと決めた彼らだからこその表現ですね。これを”あえて”えむちゃんが歌うのがまた良いですねぇ。
そしてもう1つ、サビの後半。
想い焦がれて 夢の続きを
僕らの願いを 守るため
一緒に夢を追う4人に共通する想い、それは「世界中の人を笑顔にしたい」という願いなのですね!
20. 世界を照らすテトラッド
公式動画(3DMV)
DATA
ユニット書き下ろし曲(進級・ワールドリンク)
作詞・作曲・編曲 OSTER project
歌唱 ワンダーランズ×ショウタイム × 初音ミク
語りたいこと
今回はこの曲のみ、あえて実装順ではなく最後に持ってきました。実装自体はサイバーパンクデッドボーイの次になります(この楽曲がアフターライブで使われたワールドリンクイベントもタイミング的には同様)。なぜあえて最後に紹介するかといえば、これが進級記念の第2ユニット曲だから――そう、4人で一緒に夢に向かって飛び出した今のワンダショに向けられた新たなユニットソングだからです。
作曲はOSTER氏。「ニジイロストーリーズ」以来、ワンダショ書き下ろし2度目の登板になります。さすがOSTER project、これぞまさにショーミュージック!!!
いや何回言うねんという話なのですが、「これこれ、ワンダショはこれよ!!」と思わず唸ってしまうような豪華な演奏、目まぐるしい展開、愉快で少し切ないメロディライン。ワンダショの4人がぴったり音楽に合わせて踊りながら代わる代わる歌う3DMV。紙芝居を飛び出す2DMV。まさにまさに、ワンダショの今を体現した夢のようなユニットソングとなっています。曲調、曲の雰囲気自体はもう動画で聞いてもらうしかない。聞いたことがないという方がもしいるのならば、今すぐ少し上に戻って聞いて――いや聴いていただきたい。
細かいところで言うとラスサビの本当にラスト、「歌を歌うよ 僕らの声が
世界を照らす その日まで」の部分(MVで4人がくるくる回るところ)、バックで4つ打ちでバイオリン?ひいてるのが好き。同じくOSTER氏のマージナルの間奏を思い出して好き。それ以前に、ラスサビの演奏爆発感が好き。
さて、そしてこの曲は、ユニット曲としてもう120点のワンダショのための歌詞になっております。例に漏れず好きな箇所を挙げ始めると枚挙にいとまがないわけですが、いくつか紹介していきましょう。
パッと咲いちゃって
キュンとなっちゃって
笑顔のショウタイム
グッと来ちゃって
もっとずっとって
終わらないフェスティバル
まずは冒頭。
早口なんで流しがちなんですが、なんかここだけで体現していますよね。ワンダショを、そしてショーというものを。
観客を色んな気持ちに、色んな表情にさせてくれるショウタイム。しかし、ショーはいつか終わるもの。もっとずっと、終わってほしくない!
そう、4人の旅も…!
――そんなポエムを上手に歌詞にしたというわけですね。やっぱり作詞ってすごい。
お次は4人がソロで歌う場所をピックアップ。
個性と孤独って似てる?
なんてメランコリックなクエッション (類)
Ah Ah 戸惑った過去も
今では大切なピース (寧々)
ひとりの笑顔 (えむ)
みんなの笑顔 (司)
あの日の喝采の中で見た憧れ (司)
類は1番のはじめの方。いきなり「類にそれ歌わせるか…!」と類オタクの息の根を止めにかかったパートです。言わずもがな、類は自らの演出への想いを通した結果、孤独になった過去があるわけです。なんてメランコリックな問いかけなんでしょう。そうなのかもしれないし、そうでないのかもしれない。何せ類は、両方を体験しているわけですからね。個性が孤独を呼び、個性が仲間を呼んだ。
寧々は2番より。セリフを飛ばして失敗した過去も、何ならワンダショとの初対面で戸惑った過去も、すべて大切なピース。ワンダショにいるから自分の今がある。それをたびたび表に出すようになった寧々ちゃんらしい歌詞です。寧々の書き下ろし曲は「ワンダショって最高!」が毎回のように入り込みますからね。詳細は、ここまでの解説を参照のこと。
そして、えむは司とセットのところを持ってきちゃいました。ラスサビ直前(落ちサビ部分)ですね。えむが「一人の笑顔」と歌い、司が「みんなの笑顔」と歌う。もうそれだけで初期のお話を思い出してエモさが爆発する。単純に見れば一人からみんなへ、どんどん笑顔を広げていこうという話です。でも、やっぱり「一人→みんな」というと、一人で頑張ろうとするえむちゃんを司が諭し、みんなの笑顔に巻き込んだあの頃のお話を思ってしまいます。泣ける。
そして司はというと、その少し前のCメロっぽいところですね(展開が多いからDかEくらいなのかもしれないけど)。これはOSTER氏自身もおっしゃっていた気がするのですが、「あの日の喝采」が幼少期に咲希と見たスター(天満さん)のことなのか、自身が初めてショーを成功させたメインストーリーラスト(あるいはワンマジ?)のことなのか。いくつか意味が込められているようです。何にしても、司の憧れは「みんなを笑顔にするスター」。そこに向かって突っ走ってほしいですね。
そうそう、ミクさん→4人と繋ぐここ――
一人じゃ出来ないことだらけなのは
神様の粋な計らい
だってその方が
ちゃんと手を取り合えるから
――至言ですね。ポジティブ変換(ポジティブ・リフレーミング)の王様ですよ。これ、ワンダショに限らずプロセカのテーマなんですよね。「一人でできないことも、みんなでなら」って、Journeyをはじめいろんな書き下ろしで歌われています。青春時代の子たちに何より伝えたいことなのでしょう。すごくいい。仲間って大切だよ(遠い目)。
長くなってきましたね……
でも、最後に1つだけ言わせてください。
(1番サビ)
こんなもんじゃないよねって一緒にまだ笑いたい
だって旅の途中だから
(2番サビ)
ほら顔をあげて前だけ見てればOK
ゴールはまだ先だから
(ラスサビ)
こんなもんじゃないよねって一緒に笑っていようよ
だって旅は長いんだから
こんなところで!
ポジティブ変換しつつ匂わせる!
ワンダショの、いつかのお別れを!
えむ推しとして言わせていただくと、3DMVでは「だって旅は長いんだから」でえむちゃんがアップになるんですよね。勘弁してくれ、毎回涙腺に来る。あたしたちのハッピーエンドぉぉぉぉ!!
ん?
ふと気付いたんですが、先程書いた「ラスサビの最後に『マージナル』っぽい音が入る」という話。ここにかかってくると考えたらオシャレですね。
「マージナル」(マージナルマン)というのは、二つの集団に属していてどっちつかずで揺れている状態の人のことを指すのですが、こと心理学においては青年期の子どもと大人の間を揺れ動くさまを表現した用語です。モラトリアムにも近いですね。まさにステージを飛び出しつつ延長戦に入ったワンダショも、今はマージナルに存在しているのかも知れません。
おわりに
感情爆発から急に真面目な話にまとまってすみません。
というか全体的に同じような話ばっかりしてるなぁ。1年前のワンダショお別れ時空に囚われている。
閑話休題。
ここまでワンダショ書き下ろしの全曲を聴き直してきて思ったのは、「ワンダショらしい曲」っていうのは何なのかということ。これは他のユニットも同様で、明らかに「ユニットらしい曲」はあるのだけれど、そうでない雰囲気の曲もしっかり歌いこなしてくれる。それがプロセカのキャラクターたちです。人間らしく複雑性があるとも言えます。基本的に各曲が、キャラクターそのものではなくストーリーに対して書き下ろされているからこそ、という面もあるでしょう。例えば「夢の途中、輝く星たちへ」に対して、にっこり^^を書き下ろされても違いますからね、やっぱり。
それでも「ユニットらしい曲」があるっていうのは、それぞれのユニットソング(1曲目も2曲目も)が方向づけているところはある気がします。ワンダショであれば、セカ始、そしてテトラッド。元気でワクワクして、ちょっぴり切なさもあるミュージカル、いやフェスティバル。
……そう考えると、そりゃ何でもありユニットって話になるよね。
でも書き下ろしとしては、ユニットとは別の「各キャラらしい曲調」っていうのもありますね。
司は「まさにショーを見てるみたい!」っていう感じの曲がそれらしい。全部だけど。
えむは、「かわいくて元気いっぱい!」と「儚さ」が両方刺さってくる二面キャラなので、曲もそうなる。
寧々は、とにかく彼女の伸びやかな歌声を発揮できる曲がいい。やっぱり全部そうなってる。
類は、ちょっとひねってクールな曲が来る。それが彼らしくてまたカッコいいという。
他のユニットでも、それぞれ「ユニットらしい曲」ってのはおおよそ分かるんだけど、「そのキャラらしい曲」は掴みきれていないかも。
ぜひ、今後他ユニットでも考えてみたいと思います!
今回も長文でしたが、読了感謝!