FAA CPL 取得のための超オススメのタイムビルディング⑥
FAA CPL 取得のための超オススメのタイムビルディング⑤ではJCAB事業用訓練の準備をして日本での就職も視野に入れよう(FAA CFI + JCAB CPLは強力な武器です)テーマをお話ししました。
今回はFAA CFIの訓練を開始してFAA CPLの翌日にはCFI資格取得を目指そうというテーマでお話しします。
日米、おそらく世界のどこの航空局でも同じ考え方で教官資格を付与していると思います。
訓練生を試験に合格させることのできるレベルに引き上げる
そのためにはインストラクターとしての知識と技術が必要です。パイロットとしてと言う以外に、相手がいるので教育心理的な知識と技術が必要になってきます。
知識と技術
アメリカの場合ですが、インストラクター資格に必要な要件としてプロパイロット資格と計器飛行証明が必要です。すでにそれらの知識と技術は有しているのであとはそれらを他人に伝えるという知識と技術と言う観点で考えます。
先日実施されたRedbird Migration2020のBreakout Sessionsの一つで高評価が集まったEric Crumpさんの動画を紹介します。
タイトルはCFI: Can’t fully instructとなっていて、これからインストラクターを目指す人にとってはぜひ見ていただきたい32分の動画です。インストラクターを指導する立場の人やスクールの方々にもお勧めです。インストラクターにとっては耳の痛い話です。
要は教えることができないインストラクターがほとんどだ!と驚愕のお話から、だからどうすればいいのか?という提案です。
結論は「教える練習とカスタマーサービスの練習しよう」
クラブ組織が航空の裾野を広げ航空の安全を確保する理由の回でもお伝えした内容ですが、お互いに教え合うことが実はすごく大切なことなのです。
引用元:NPLスクール
知識のレベル
飛行機に限らず全ての学習において上の図のような4段階のステップを経て進みます。
1 無意識的無能(知らない)
2 意識的有能(知っているができない)
3 意識的無能(意識すればできる)
4 無意識的有能(無意識でできる)
教官を目指すようになるとすでに4つ目のレベルに達している人たちです。何も考えなくても資料を探し準備して飛ばせるレベル。
そのレベルに達すると最初の無意識的無能のレベルを忘れているケースがほとんどです。
例を出すと、自動車免許を取得してすでに数年経つ方が、車を運転したことがない人に車庫入れ操作や縦列駐車の方法を説明することを考えてみてください。
玉那覇がオススメするのは、最初の訓練から自分のできなかったところとどうやってできるようになったかの情報を書き留めておくこと。です。
教官として最悪なのは「あなたができないのが理解できない」「あなたがわからないところがわからない」という状態です。教官失格!
そのために日頃から自己の思考と行動の分析と他者への教える練習をしておくべきなのです。
学校の先生になるには大学の授業で、教材研究と言われる教える内容を徹底的に分析して、お互いに教え合う練習を徹底的にし、そして学校現場で本物の生徒たちへの教育実習をします。実習後は指導教官から指導を受けます。それでも教職について1年間は初任者研修として徹底的に先輩教員から指導を受けます。
インストラクターになるまでの課程でここまでしていないと言うのがエリックさんの「教える練習とカスタマーサービスの練習しよう」なのです。
それを解決するための一つとして、同じくRedbird Migration2020でプレゼンした玉那覇のNew online learning platformというシステムです。所属スクールの訓練生だけではなく多くの訓練生(一人一人全員違う)へ教える練習をして欲しいという考えから開発しています。
え?そんな人たちから学ぶの?と心配されている方。ご心配なく。全員プロのパイロットです。より良い教育の質向上のためのシステムです。生徒から評価をつけることができます。そのため教育の質は向上します。私は教官だ!私の言う事を聞け!と言う時代は終わります。
技術のレベル
Private Pilotから始まりCommercial Pilotまでのいくつかの訓練と試験をこなしてきた方々がいよいよインストラクターの訓練に入る時に出てくる障害があります。
右席で飛ばす事(これまではずっと左席=機長席)操作も逆で計器も斜めから見えにくい
しゃべる事(これまでは教官との会話=どちらかと言うと受け身)いちいち説明しないといけない
気を使う事(これまでは外を見る・操縦する・管制官との交信・教官との会話)訓練生の目線は?何考えてる?手足はどう動いてる?
これらをそれぞれの段階でトレーニングしていきます。
右席で飛ばす事
まずは右席でこれまで学んだ全ての課目を一通りやってみましょう。
慣れない場所なので、右手と左手が逆の操作になり、正面で見えていたアナログ計器であれば斜めから見るのでずれて見える。ずれた状態が正しい!って訳わからなくなります(笑)
できない事をリストアップしてどうしたらできるようになったかを書き留めておきましょう。これが訓練生がやってしまう事を教官が指摘する内容になる非常に重要なポイントです。
左席では無意識的有能(無意識でできる)でしたが、慣れない右席では意識的有能(知っているができない)まで落ちるのです。それを意識的無能(意識すればできる)までのコツを自分で分析しておくのです。
次に実地試験に合格できるレベルでできるようになりましょう。無意識的有能(無意識でできる)まで持っていくのです。
実地試験中のフライトは試験官のデモフライトと受験生のデモフライトの二種類あります。
試験官のデモフライトは訓練生を模擬したミスをわざとします。
受験生のデモフライトは正しくするもミスをすることもありますが、ミス自体はあまり問題になりません。
試験官はいずれのミスについて同じ事を聞きます。
ミスはなんだったのか?
それをどうすれば修正できるのか?
分析力と指導力が必要となるのです。
しゃべる事
無意識的無能(知らない)の人に対してデモをすることが最初の教育訓練のステップです。
訓練を受けたことがある人は覚えているはずです。教官は飛ばしながら説明してくれていましたね。
その練習です。これが慣れないとなかなかできないんです。なのでひたすらしゃべる事を練習します。スポーツのラジオの実況中継のようにです。
操縦している時の一挙手一投足である手足の動きだけではなく、視線や考えている事全てです。
気を使う事
目線が大切です。手足の動きも観察します。
どこをみているのか?外のどこ?中のどこ?スキャンしてる?一点集中になっていない?思考停止していない?
他のパイロットを一緒に飛んで観察してみてはいかがですか?
これらの技術がマスターできた事を試験で証明されて初めてCertified Flight Instructor(CFI)の資格を得ることができるのです。
ただ前述したようにエリックさんの動画にもあるように、資格取得と実践能力がかけ離れている現状があります。だからそこ教官資格を取得する前のタイミングでこのような練習をしておく必要があるのです。
このような訓練をタイムビルディング期間中にやっておけば、もっと言うとCommercial Pilot資格取得前にやっておけば、Commercial Pilot資格取得の翌日にCFIを合格することもできますし、そうやっている人もたくさんいます。