元FAA試験官として思うこと(まとめ)
これまで6回に渡って書いてきた記事。ここでまとめてみたいと思う。
その道のプロが見極める
元FAA試験官として思うこと(任命までの過程編)で書いたこと。
フライトインストラクターとしてソロフライトや実地試験の見極めの経験
航空会社のチェックエアマンとしてプロとして見極めの経験
いずれもFAAから直接指導されて見極めのプロになっていること
許可される試験も試験官の経験によって異なる。最初はPrivate Pilotだけ。徐々に増えてくる。タイプレーティングの試験は規定の機長時間以上の経験。
試験を受ける方も納得安心。落とされても文句は言えるはずがない。逆に教えてくれてありがとうの領域。
自分を審査する&審査される
元FAA試験官として思うこと(任命前の研修会編)で書いたこと。
サービス業として、そして国家資格試験の実施者として、その姿勢・態度・言動・表情を多角的にみる研修会がある。
個人事業主である民間人試験官。緊張感と責任感を持って実施。全てはその人の責任。
とはいえお山の大将にはなれない。いつも審査されるのを承知でその立場になるのだから。1年間の契約期間を満たさずにFAAから契約を切られることもある。
国が定めた試験内容をどれだけ自分流に作れるか
元FAA試験官として思うこと(任命前の実地試験のオーラル試験編)で書いたこと。
Plan of Actionという実地試験の台本。国が定めた試験内容を、実地試験を実施する空港・機体・環境に応じてどれだけフレキシブルに実施できるか。
一律で同じことをすることの無意味さ。
本質を見る
元FAA試験官として思うこと(任命前の実地試験のフライト試験編)で書いたこと。
実戦空手の実践を見る。やるかやられるか。相手は常に変化する。型は見ない。
野球で言えばヒットが打てるか。フォームは各自変わってていい。うんちくも要らない。全ての試合を見なくても、数打席でセンスがわかる。
サバイバルに目の前にあるツールが使えるか。ツールは人それぞれ色々違う。生きるか死ぬか。
一律で同じことをすることの無意味さ。
積み上げ式の育て方
元FAA試験官として思うこと(任命前の実地試験のデブリーフィング編①)で書いたこと。
基準に達しない箇所だけを再試験。非常に合理的。
全て再試験する事による時間的損失(=経済的な損失)を知っているから。
やっぱり本質を見る
元FAA試験官として思うこと(任命前の実地試験のデブリーフィング編②)で書いたこと。
実地試験の究極目的は安全に飛ばしてくれるパイロットかどうかの見極めに尽きる。
もちろん説明責任のような法的なタスクは全て実施する。
本質をみる試験だからこそ、色々なバージョンを経験することにつながる。なぜなぜ?という探究心も生まれる。根本を知るようになる。
型だけをやる試験だとそうはいかないはずだ。
4+5=9
という流れではなく
9という結果にはどのようなプロセスがあるか?
という流れ
足し算・引き算・掛け算・割り算などいくつもの方法があることに気づく。
遊びごごろを持って
FAAから実地試験の最初の指示が「リラックスさせろ」だ。
研修会も笑いが絶えない。
空を遊びから入る大切さはとても大切なことだと思う。
パイロットはエリートしかなれない。アメリカ人に日本人はパイロットを医者か弁護士と同じレベルのエリートと思っていると話すと飲んでるビールを吹き出した。
試験中も冗談を交える文化。
そんな色々な文化の違いを教えてくれたFAA試験官の経験であった。
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