Kingston TrioのVega
キングストン・トリオが使ったバンジョー、一見すると同じように見えるVega Pete Seeger Modelですが、Dave GuardもJohn Stewartも何本か複数の個体を使っていた事が分かります。
1958年、Dave Guardが初期のモデルを買った件は別の原稿にも書きました。Daveが何本のSeeger Modelを弾いていたか?これは定かではありませんが、推測する限りでは「1本ではない」と思います。
その根拠になった写真が・・こちら ↓
この興味深い写真、ピットマン式のチェンジャーが装着され、5弦のペグの位置から「エクセル・モデル」ではないか?と推測されます。
他のアルバム写真に写っているモデルとは明らかに別の個体でしょう。
また、トリオの楽器はサンフランシスコの某楽器店がメンテナンスなどを担当していたので、58年に購入した個体は糸巻きを何かの不具合で交換したのかも知れない写真もありました。
浜辺でのフォト・セッションですが此の個体の5弦ペグ位置は標準仕様です。従って先ほどのチェンジャー装着器とは別個体であろうと思います。
クルーソン・タイプのペグボタンが付いた糸巻きは後藤から出ているので・・
さて、その後加入したJohn Stewartは最初の頃は標準的なSeeger Modelを弾いていました。
写真の通り24ブラケットの60年代Vegaの標準モデルですね。
とは言え・・・1962年 The Gertrude Berg Show にTrioがゲスト出演した映像で一瞬裏側が見えるシーンがあり、この映像からDowel Stick仕様の1959~60年頃のモデルだと推測されます。
記録によれば、彼のバンジョーは何度か盗難に遭って違う個体に代わっていることが記されているので、当然ですが後期になると別の個体を弾いている写真が見られます。
1964年のHungry-iでのライブ直前の写真を見てみましょう。
28ブラケットで、Daveの謎の個体同様Pittmanのチェンジャーが装着されています。此の頃Vega社にオーダーするとオプションでチェンジャー付きの新品が購入出来たのですが、当時の胴体は24ブラケット仕様の筈なのでコレも謎のモデルです。
1965年、テレビ番組Jack Benny showで寸劇を演じた時に一瞬裏側が映ります。
Dowel Stick仕様が良く分かりますが、The Gertrude Berg Showで使った個体よりも古く 58〜9年の初期のSeeger Modelか、戦前のVegaの胴体にロングネックを装着したか?どちらかでしょう。
ちなみに1981年の「Reunion」でRuben Jamesを演奏した際に使った個体も此れだと思います・・
と書いてから何度かリユニオンを観なおしましたが少し違うような気がしています。ネックの塗装が違うように見えるので、この件は保留にさせてください。
JohnはVega以外では「アルバム#16」などに映っているGibson RB-185という機種を弾いていた時期がありましたが、これについては別に書こうと思っています。でも最終的にはVegaに戻りましたね・・・
そして、前述の通りメンテナンスを担当する楽器店によって糸巻きやテールピースなどの小物類が時折違う部品に交換されていて、また識別がややこしくなっています。
どうやらABM社のテールピースだと思いますが、最近リプロ品が出たので・・
ネックの塗装も、ナチュラル仕上げの個体と薄いサンバースト塗装の個体を使っていたようです。
ただし、サンバースト塗装の個体から塗装を剥離してナチュラル仕上げにする作業は然程難しくないので、もしかして其のようなメンテナンスをした可能性も考えられます。
私たちのようなキングストントリオのカバーバンドでは、お手本にする衣装や楽器を選ぶのが楽しみの1つになっています。出来るだけ似たシャツを探し、彼らが使った楽器のディテールに拘ってセレクトするのが「コスプレバンド」と呼ばれる所以かもしれません。
しかし28ブラケットのDowel Stick仕様は生産数も少なく、入手が困難になっているのは残念です・・