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カブトとクワガタ 5
電話を切った兜は携帯をポケットにそっとしまった。
『マズいな…。』
兜は無意識にそう呟いていた。
『なんだ、お前も飲み過ぎたのか?』
鍬形はニヤニヤしながらそう言った。
『お前と一緒にするな。そんなんじゃない。』
『だったら何があったって言うんだ?』
兜は鍬形を見ずに前だけを見つめてこう言った。
『鴉(からす)が俺達の仕事を狙っているらしい。』
鍬形は一瞬固まり、再び口を開いた。
『そいつは確かに…マズいな。』
"鴉"という名を知らない者はこの業界にいない程その存在は有名であった。
基本的に業者同士の潰し合いは業界のタブーとされている。お互いがなるべく干渉せずというのがこの世界の暗黙のルールであった。
そのタブーを破ったのが鴉である。
獲物の横取り、依頼人の暗殺、業者同士の殺し合いなど自分の利益の為なら手段を選ばぬ方法で仕事を行うのがこの鴉という人物なのだ。
その標的が自分たちに定められていることを知った2人は言いようの無い焦りに包まれていた。
『スナックのママが殺された。
恐らく鴉の仕業だろう。俺たちにたどり着くのも時間の問題だ。
いざとなったらやり合う覚悟はしておけ。』
『ああ…。
最近ちょうど暴れ足りないと思ってたとこだ。』
鍬形はニヤリと笑いながらそう言った。
つくづく厄介な仕事だ
兜は思わずため息をついた。
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