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解散宣言
『最近めっきり寒くなりましたね。』
『そうですね。』
『この前ね、うちの家の前の水溜りに氷が張ってたのでその上を恐る恐る歩いてみたんですわ。』
『あー分かります。割れるかどうか分からないドキドキ感、乗りたくなりますよね。』
『そうなんです。それで右足を乗せて体重をかけてみたら見事に割れまして…』
『あら、靴が濡れてしまったんじゃないですか?』
『靴が濡れるどころか、そのまま足がどんどん沈んでいって割れた水溜りの中に全身飲み込まれてしまったんですよ。』
『それはどういうことですか?』
『底無し水溜まりだったんです。』
『初めて聞きましたが、底なし沼のような水溜まりということですか。』
『その通りです。』
『それではどうやって助かったんですか?』
『私昔スケートやってたんです。』
『はあ。』
『それにストレッチが得意でして。』
『ええ。』
『おまけにその時ガムテープを持っていたんです。』
『それの何が関係しているんですか?』
『何も関係してないですよ。』
『は?』
『関係ない事を関係あるかのように言う事にハマっているんです。』
『やめてほしいですね。』
『それはそうと、なぜ私が助かったかという話でしたね。』
『ええ。』
『答えは簡単です。そんな水溜り存在しなかったんです。』
『あなたは一体何を言ってるんですか。』
『底無し水溜りは存在しませんがぼくの胃袋は底無しです。』
『話に脈絡がありませんね。それでは食べ放題で元を取りに行きましょうか。』
『食べ放題で元を取ろうとしてる人はめちゃくちゃ頭が悪いと思います。』
『そうですか。残念です。』
『食べ放題の話をしたらお腹が空いてきました。』
『大福ならありますよ。』
『甘い物でお腹を膨らますのは好きではないので。』
『そうですか。』
『ミスドに行ってきます。』
『甘いですよね。』
『ミスドは美味しいので大丈夫です。』
『大福も美味しいですけどね。』
『価値観は人それぞれだと思います。』
『あなたにだけは言われたくないですね。』
『ミスドでは何が一番好きですか?』
『わたしはオールドファッションが好きです。』
『僕はホットコーヒーです。』
『珍しいタイプですね。ドーナツでいうとどれが好きなんですか?』
『ミスドでドーナツは食べません。』
『非常に珍しいタイプだ。』
『ホットコーヒーはおかわりできるので好きです。』
『理由も変ですね。』
『ドーナツは太るので。』
『美意識が高かったんですね。』
『僕は化粧水を一日で一本使いきります。』
『それはさすがに使いすぎなのではないですか。』
『そう思います。』
『そう思っているんですね。』
『でも美味しいのでついつい飲んでしまうのです。』
『怖くなってきました。あれは肌に塗るものですよ。』
『体の内側から保湿させたかったのです。』
『効果はないと思いますよ。』
『そんなことよりこの間、町を歩いていたら凍った水溜まりがありましてね。』
『ええ。』
『その水溜まりの上に足を乗せて体重をかけてみたんです。』
『これはデジャブでしょうか。』
『そしたら水溜まりが割れて足がどんどん沈んで僕の体を飲み込んでしまったんです。』
『さっき聞きましたよ。』
『その水溜まり、底無しだったんです。』
『あなたの話は底をついてるみたいです。もう結構。どうもありがとうございました。』
台本をなんとか読み終えた小山は、増谷の顔を見てこう言った。
「解散しようか。」
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