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ライン強度テストを受けたら思ったより劣化してた件|パラグライダー
たまには備忘録的な記事も書いていようかと。
先日、自分がメインで使っているタンデム機(2人乗りパラグライダー)TAKOO5を使用開始から2年経過での定期点検をしました。
ぼくはパラグライダーの専門家ですが、飛ぶ&教えるのが得意分野です。
機材の修理や(正式な)点検は専門外で、少しかじっている程度です。
(どちらかというとニガテでキライ)
出来ることは自分でやりますが、必要に応じて専門家に依頼しています。
今回のメインテーマの「ライン強度テスト」はアエロタクト社のリペア&チェックセンターに依頼しました。
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今回の結果は、一般フライヤー(パラグライダーパイロット)の人にとっても現実的(自分ごと)な情報です。
自分の機材の状態に関して興味関心を持って、安全に楽しく空を飛びましょう。
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グライダーチェックとは
▶グライダー(機体)の定期点検
パラグライダーの翼にも車検的な制度があって「グライダーチェック」と呼ばれています。
呼び方は他にも、グライダー検査、英語だとGLIDER INSPECTIONなど。
すべて同じ意味です。
日本ではグライダーチェックは任意の状態で、受けなくても安全面以外に不都合はありません。
そう、『安全面』以外は、ね。
実際に、グライダーの劣化(バランス、強度など)に起因すると思われる事故がぼくが知っている中でも年に複数件起きています。
そして、グライダーチェックを受けるべきタイミングはそれぞれの機体のマニュアルに記載されています。
7.3 CHECKS AND INSPECTIONS
Inspections
The TAKOO 5 must be periodically serviced. An inspection must be scheduled every 100 flying hours or every two years whichever comes first (EN/LTF norm).
▶検査内容はこの5項目
目視点検(全体)
破れ、摩耗、ほつれなど、目視による全体のチェックする。
生地(キャノピー)の空気透過率計測
専用の機器で生地(キャノピー)がどの程度空気を透過するか計測する。
生地(キャノピー)の強度テスト
機体リーディングエッジ付近の上面の引き裂き強度をテストします。
L型の針を刺して、決められた強さで引っ張り、裂けなければOK。
ライン強度テスト
2~3本の決められた箇所のラインを、専用の機械で引っ張り、破断したときの強度が基準値よりも高ければOK。
ライン長計測
測量レーザーでキャノピー接続部分~ライザー接続部分のライン全長を計測する。計測した値を基準値と比較し、必要に応じて調整する。
ライン強度テストの内容と結果
▶ライン強度テストの内容
この生地のメインテーマは「ライン強度テスト」の結果に関してです。
グライダーチェックで重要視される項目は技術や知識や実例(事故例)によって変化してきています。
ぼくがグライダーチェックに関して意識して学んだ時(十数年前)には生地とラインの強度テストは無かったのか、重要視されていなかったのか、とにかく知りませんでした。
数年前からは生地とラインの強度テストが行われ、重要視されているようです。
さらに最近はそのトレンドも変わりつつあるとか・・・。
ライン強度テストの流れ
メーカーが定める特定のライン(2、3本)を機体から外す
専用の機械でラインを引っ張り、破断するまでの強度を計測
定められた基準値よりも破断強度が高ければ合格
交換用のラインを作製し、機体に取り付けて完了
ちなみに、多くの場合2本テストするようですが、TAKOO5は3本のラインをテストすることが決められていました。
タンデム機だからかな?
今回はアエロタクト社のリペア&チェックセンターに取り外したラインを送って、テストしてもらいました。
▶テスト結果
送付して1週間ほどでテスト結果が記された紙と無惨に引きちぎられたラインと交換用のラインが送られてきました。
![](https://assets.st-note.com/img/1719131403280-KFYYQUn694.jpg?width=1200)
結論から言うと、合格でした。
けど、気になる点が・・・
![](https://assets.st-note.com/img/1718979025026-3QZwPc1Osq.jpg?width=1200)
ボトムライン(3A1)のテストは、必要強度179.2kgに対して計測値180kg。
ようするに、ギリギリ合格ということ。
同機種でのテストで2年点検時に不合格になったケースもあるようです。
そりゃそうですよね、ぼくもギリギリだったんだし。
「必要強度」は、最大重量(この機体の場合220kg)でスパイラルダイブ(-20m/s程度)時にかかる8Gの荷重(1760kg≒1760daN)を機体のライン数で割って算出(計算方法詳細は不明)するらしい。
チェックセンタースタッフである友人いわく、
その算出方法がメーカーや団体ごとに微妙に違い、NIVIUK(TAKOO5のメーカー)は少し大きめの数値になる、らしいです。
とはいえそれほど大きな違いではないだろうけど。
この結果から分かったもう一つの重要な事実があるのです。
ボトムライン(3A1)に使われている「TNL400」という種類のラインの「400」は「強度が400kg(400daNかも?)」という意味。
ということは、テストには合格したものの、新品のときと比べると強度は半分以下の45%まで劣化しているということです。
まぁ、2年で結構な数飛んでいるので(800本程度)一般的なタンデム機の2年よりもかなり傷んでいることは間違いないですが。
ぼくのメインタンデム機は3年使用したら新品購入することにしていたので、今回も予定通りのサイクルになりそうです。
この相棒との最後の夏がもうすぐ始まります。
グライダーチェックのススメ
「メーカーの定めたタイミングでグライダーチェックをしても、使用状況によってはテストに不合格になるような変化や劣化が起きている可能性がある」
ということです。
グライダーチェックは義務ではないですが、そもそも義務だから受けるものじゃないですよね。
安心して、安全に、楽しく、空を飛び続けるために
ぜひ、良きタイミングでグライダーチェックを受けてみましょう。
所属しているスクールに依頼する、
もしくは各ディーラーでも受け付けているはずなので直接依頼するのも可能です。