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白馬八方フライトエリア(山岳)での西風予報の読み方|パラグライダー

「西風予報だから飛べませんよね?」
なんてパイロットの人から聞かれることが多々あります。

日本でも有数の山岳フライトエリアである当エリア『白馬八方フライトエリア』は北アルプスの東面に位置していて、テイクオフが東向きです。
当然、西風が吹けばフォロー(テールウィンド)で、テイクオフ出来ないコンディションなわけです。

けど、単純に予報が「西風」だからといって西風が吹くわけではないんです。そこが一般的に「山岳フライトエリア」の特徴でもあるわけですが、なかなか読みが難しい。

今日(6/24)は西風強風でフライトできず時間が出来たので、「西風予報の読み方」をざっくりと説明してみます。
今回もいつも通り、パイロット初級~中級の人に向けてなるべく分かりやすく、、、を目指します。

今日の記事の内容は、目次を見れば全体が分かるように意識して作って見ました。

―About me ―
ちなみに、ぼくは気象予報士でもなければ天気予報オタクでもないです。
なんなら気象学という分野に対してはちょっとニガテ意識もあるくらいです。
〇〇hPa高層天気図とか相当温位とか渦度とか気圧傾度とかSSIとか専門用語を2つ以上同時に浴びると目が回って睡魔に襲われます。
規模の大きな天気予報はニガテです。
けど、noteでもちょいちょい書くような、パラグライダーでのフライトに直結して自分で体感できるような気象予報は結構好きです。


西風予報で西風が吹かない理由


▶北アルプスは我らの防壁

白馬岳2932m、鑓ヶ岳2903m、唐松岳2696m、五竜岳2814mなどの後立山連峰が西側の防壁となって、白馬八方フライトエリアは多少の西風の影響は受けないんです。
予報は西風でもよほど強くない限りは、エリア内の日中は対流による風が吹きます。

ようするに、吹く風は予報にでる西風は吹かないってことです。日射があってサーマルが出ればテイクオフにはアゲンスト(ヘッドウィンド)が吹き、サーマルが活発になればエリア内の風は南寄りになります。

▶防壁にも限界がある

とはいえ、すべての西風をブロックしてくれるわけもなく、「北アルプスに守られて穏やか」だった風は、ある程度以上強い西風が吹くと突然「北アルプスのローター域」になるわけです。

防壁の崩壊でコンディションは急変します。

なので、この限界点を見極める読みが重要。

西風強風の限界点


▶どのくらいの西風なら大丈夫なのか?

20年近くこのエリアでフライトしていますが、この判断の線引きは非常に難しい。
正直、当日になるまで判断できず、当日もフライトしつつ雲の様子や風の変化を感じて判断する場合も多いです。

ただ、そんなに曖昧だとこの記事の意味が薄れるので・・・

一番分かりやすい目安がコレ👇

SCWの数値予報「詳細モデル」

SCWのサイトでは「風向を矢印」「風速を色」で表しています。
ざっくりと目安を説明するとこんな感じ。

①の青色は3~4m/sで、この風速ですでにアヤシイです。
②の水色は4~5m/sで、ほぼダメ。飛べても早い時間だけ。
③の青緑色は5~6m/sで、絶対ダメ。もし飛べそうでも飛んじゃダメ。
あとは、それぞれの風速の割合で予測。

ちなみに、この手の数値予報での風速「地上高10m」です。PCでSCWを見ると表記されています。
なので、山岳エリアで局地的な風速を確認する時は水平解像度(メッシュ)が細かくないと地形が反映されないので意味がないです。

SCWで見ている「詳細モデル」5kmメッシュ(水平解像度5km)で39時間先までの予測を出してくれるので一番活用しやすいです。

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「詳細モデル・5kmメッシュ、ってなんのこと?」
っていう人は、この記事の下の方に「数値予報(数値予報モデル)」に関して説明しているから読んでみてくださいな。

気象庁の公式サイト内で「気象に関する数値予報モデルの種類」という解説ページもあります。

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SCWの使い方は、

  1. 「詳細モデル」(右下)に設定

  2. 「気圧・風速」(右メニュー上から2番目、スマホだと吹き流しアイコン)をクリック(タップ)して表示

  3. 下部にある「日時バー」をスライド or 日時の横にある矢印「>」「<」をクリック(タップ)して確認したい時間に合わせる

これだけです。
画面中央に小さな四角と「+」が重なって表示されていますが、左下のマップと連動しています。目的の場所がピンポイントで分かりやすいです。
(もしマップが表示されていない場合は、左下にある「右上に向いた小さな矢印」をクリック(タップ)すると表示されます)

▶西風が強いけど飛べる程度の時

上昇気流で高度を上げていくと、どこかで防壁の影響下から出てしまい、北アルプスを越えてきた西風の影響を受けます。
地上からの対流北アルプスを越えてきた西風がぶつかり合い、非常に乱れた空域(層)です。
もちろん、稜線に近づけば西風による北アルプスのローター域が存在します。

この乱れた空域(層)よりも下は、通常のサーマルコンディションとしてフライトすることが出来るので、少し安全マージンを多めにとって、稜線に近づきすぎず、高く上げすぎないようにソアリングしていれば怖い思いをすることもなくフライトが楽しめます。

北アルプスに守られてる範囲内を飛ぼうね、ってことです。

▶西風強風がフライト空域に影響してくる時

ある程度以上に西風が強くなると、北アルプスは西風に対しての防壁として機能しなくなり障害物になります。

フライトエリア全体が、大きな障害物(山脈)の風下のローター域になります。

▶【余談】絶妙な西風がスパーコンディションを作る!?

余談ですが、昨年の夏に上級者がみんな3000mオーバーでほぼ4000m到達、テイクオフ上空でも3700mくらい!?みたいなエリアでは初めてのスーパーコンディションがありました。
繁忙期だったので、細かな予報は見ていなかったのですが、どうやら適度な気温減率と適度な西風が作る山岳波(ウェーブ)が噛み合って生まれたんじゃないかな、という結論に至りました。

いつか再来すると信じて、次の機会を虎視眈々と狙っております😎

数値予報モデルによる西風予報の違い(Windy)


気象庁のMSM:メソモデル(水平解像度5km)との高い予報精度の実績があるECMWF:ヨーロッパ中期予報センター(水平解像度9km)の2つの代表的な気象予報モデルで今日の11時の予報を比較してみます。
中央にピンポイントで風速が表示されているのが白馬八方フライトエリアのテイクオフ地点です。

👇まずは地表風(地上高10m)

MSM=3m/s、CMWF=1m/s

👇続いて1500m(850hPa)の風

MSM=7m/s、ECMWF=1m/s

👇続いて2000m(800hPa)の風

MSM=10m/s、ECMWF=4m/s

👇続いて3000m(700hPa)の風

MSM=9m/s、ECMWF=12m/s

まとめると、

先に貼り付けたWindyの比較画像で少し広域を見ると、なんとなく違いの理由が見えてきます。

水平解像度5kmのMSMはある程度地形を考慮(どの程度の強さで風が山を越えていくのかを計算)した風の流れになっていますが、水平解像度9kmのECMWFは北アルプス全体をぼんやりと大きな山として捉えているので稜線より低い部分の風が淀んでいる予報になっています。

ちなみに、標高1700mに設置してある風速計での11:00の実測を数分間観察したら、「平均4.4m/s」「瞬間風速14.2m/s」でした。
瞬間風速に対して平均風速が低いので、かなり不規則な突風が吹いているのが分かります。

このような特性の違いを理解して、気象予報モデルを活用しましょう。
MSMが優秀、ECMWFがダメという話ではありませんのであしからず。

当エリアに飛びに来る際に参考にしてみてください。
この記事が、みなさんのパラグライダーライフへのスパイスになれば幸いです。

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