見出し画像

ポーラーカーブ(性能曲線)で作る最良滑空のイメージ|パラグライダー

「こんな難しそうな文章最後まで読めない」
という方のために、この記事を読むと分かることを先にまとめておきます。

▼ポーラーカーブで何がわかるの?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
・「飛行速度と沈下率の関係(滑空比)」
・「風や飛行重量(翼面荷重)の変化(向かい風・追い風・下降気流など)による最良滑空比の変化」

ようするに、
「効率よく飛ぶ方法」
が理解できる。

🔽超ざっくりまとめ解説
【無風の時】
・だいたいトリムスピードかちょこっとだけアクセル踏むくらいが一番遠くまで飛べる(最良滑空速度)
・ちょっとブレーキかけてるくらいが一番長く飛んでいられる(最小沈下速度)

【向かい風の時】
・少しアクセル踏んだ方が遠くまで飛べる
・風が強くなったら、さらにアクセル踏んだ方が遠くまで飛べる

【追い風の時】
・ちょっとだけブレーキかけた方が遠くまで飛べる

【下降気流にあったら】
・アクセル踏んで早く通過したほうが良い

【飛行重量】
・上限に近い人は向かい風に強く、下限に近い人は追い風に強い

さぁ、内容に興味が湧いたらぜひ読みすすめてくださいね。


▶「ポーラーカーブ」って何?【基礎編】


「ポーラーカーブ」は、パラグライダーの飛行特性を表した性能曲線のことです。

なんかこんな感じのやつです。

「ポーラーカーブ」のイメージ

縦軸に沈下速度、横軸に速度(対地速度)をプロットしたもので、通常は無風時の下記の3つの速度を読み取ることができます。

A:失速速度
B:最小沈下速度
C:最良滑空速度

(下図)

ほとんど見かけませんが、メーカーやモデルによっては数値が公表されている場合もあります。
それぞれのモデルが固有のポーラーカーブを持っていますが、目的(エントリー、コンペティション、アクロなど)によって似たような曲線になります。

なので、

  • 「飛行速度と沈下率の関係(滑空比)」

  • 「風や飛行重量(翼面荷重)の変化(向かい風・追い風・下降気流など)による最良滑空比の変化」

を理解するために有効です。
これらを理解すると、

「効率よく飛ぶ」

ことが出来るようになります。

概ね現実的な数値で作ったサンプルポーラーカーブ

A:失速速度

減速していき、この速度に達すると「失速」してしまいます。飛行できる最低速度とも言えます。

B:最小沈下速度

最もゆっくり沈下する速度のことです。つまり、この速度で飛行すると、最も長い時間滞空することができます。

C:最良滑空速度

最も滑空比が良い速度です。つまり、最も遠くまで滑空することができます。
0(ゼロ)から引いた線(図の赤線)が、ポーラーカーブ上で最も右上で接する点が表す速度。

「トリムスピード」

ブレーキもアクセルも使用していないときの速度。
一般的な機体では「トリムスピード=最良滑空速度」と言われていたけど、最近は若干加速したくらいが最良滑空速度になる場合も多いらしい。

「D」はフルアクセル(またはフルトリム)で出せる最高速度。一般的に、ポーラーカーブを読み取る時に重要視されないので別枠にしてあります。

▶ポーラーカーブで分かること【応用編】


通常は「無風時」の各速度を読み取れますが、工夫すると風(向かい風・追い風・下降気流)飛行重量による特性の変化を読み取ることが出来ます。

「ポーラーカーブをグラフ上で動かす」

または、

「シミュレーションしたい風に合わせて起点(無風時は0【ゼロ】)を動かす」

という方法です。
分かりにくいですが、これから出てくる図でこれら2つの方法を実演してます。

下記の「1.」「2.」は「ポーラーカーブをグラフ上で動かす」方法で、
「3.」は「起点(無風時は0【ゼロ】)を動かす」方法で作図してあります。


1. 追い風/向かい風による最適速度の変化

👇「ポーラーカーブをグラフ上で動かす」方法で作図

向かい風追い風それぞれの 風速4m/s 時をシミュレーションしてみます。

ポーラーカーブを左に4m/s分移動させ、0(ゼロ)から線を引き(赤線)、最も右上で接する点が「向かい風4m/s時の最良滑空速度」です。

反対に、ポーラーカーブを右に4m/s分移動させ、0(ゼロ)から線を引き(赤線)、最も右上で接する点が「追い風4m/s時の最良滑空速度」です。

向かい風/追い風による最良滑空速度の変化

向かい風のときは最良滑空速度が高速側に移動し、追い風のときは低速側に移動しているのが分かります。

ということは、

向かい風のとき:少しアクセルを使用した方が滑空比が良い
追い風のとき:ちょこっとだけブレークを引くと最良滑空比

という事が分かります。


2. 下降気流による最適速度の変化

👇「ポーラーカーブをグラフ上で動かす」方法で作図

下降気流 -1m/s 時をシミュレーションしてみます。

ポーラーカーブを下に1m/s分移動させ、0(ゼロ)から線を引き(赤線)、最も右上で接する点が「下降気流 -1m/s時の最良滑空速度」です。

下降気流による最良滑空速度の変化

下降気流:そこそこアクセルを使用した方が滑空比が良い

「シンクに入ったらアクセルを踏め」
と言われる理由の一つはこれ。


3. 飛行重量による特性の変化

(同じ翼に、重く乗ったときと軽く乗ったときの違い)

まずは、翼面荷重(飛行重量)によってポーラーカーブがどう変化するか。
ポーラーカーブに対して最良滑空速度は変化せず、0(ゼロ)から引いた線上を移動します。
軽ければ左上(沈下速度は小さく、対地速度は遅く)に、重ければ右下(沈下速度は大きく、対地速度は早く)に移動します。

翼面荷重(飛行重量)による変化


では続いて、翼面荷重(飛行重量)の違いによる飛行特性の変化を見てみましょう。

👇「シミュレーションしたい風に合わせて起点(無風時は0【ゼロ】)を動かす」方法で作図

向かい風追い風それぞれの 風速5m/s 時の翼面荷重による違いをシミュレーションしてみます。

起点をゼロから右に5m/s分移動(向かい風なので対地速度が5m/s遅くなる)させ、そこから線を引き(赤線)、最も右上で接する点が「向かい風5m/s時の最良滑空速度」です。

向かい風5m/s時の翼面荷重による違い

重い(翼面荷重が大きい)方が滑空比が良いのが分かりますね。
(赤線の角度が水平に近いほうが滑空比が良いという読み取りになる)


反対に、起点をゼロから左に5m/s分移動(追い風なので対地速度が5m/s早くなる)させ、そこから線を引き(赤線)、最も右上で接する点が「追い風5m/s時の最良滑空速度」です。

追い風5m/s時の翼面荷重による違い

軽い(翼面荷重が小さい)方が滑空比が良いですね。(多少ですが)

翼面荷重による飛行特性の違いはもう少し深堀りしても面白いので、別記事で書きたいと思います。

イメージ作り

ポーラーカーブは正確なデータはなかなか入手出来ず、自分で計測するのも結構たいへんです。
なので、自分のグライダーの正確な「失速速度」「最小沈下速度」「最良滑空速度」は分かりませんが、パラグライダーの飛行特性のイメージ作りにはかなり有効です。
効率良いフライトアクセルの使いどころの理解にもつながるので、ぜひポーラーカーブを理解しておきましょう。

また、別角度での考え方にも応用できるので、徐々に記事にしていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?