【遭難救助にかかる費用と検討すべき対策】フライヤーにとっても備えるべきリスク|パラグライダー
「パラグライダーを楽しむ」ためにはリスクを正しく理解することが大切です。
「遭難救助のことを知っておいて、きちんと対策しましょう」
というのが今回のテーマ。
▼パラグライダーにおける遭難救助
パラグライダーは安全な乗り物、だけど人間は…
それは近年、世間的にも認知されています。分かりやすい根拠は「傷害保険」の適用範囲です。
各種傷害保険には保険金が支払われない場合として「危険なスポーツ」「危険な運動」などの項目があります。
しかし、パラグライダーは危険なスポーツとしては含まれません。(含まれるケースがあればぜひ教えてください)
けど相手は自然であり、操縦するのは人間。そこにリスクがあります。
人はミスをするし、不注意もあるし、欲をかいて自らリスクをとる生き物です。
パラグライダー自体は安全でも、操縦ミスで木に引っかかったり、墜落したりする可能性はあります。
「動力無しに大空を飛び回る」なんていう底なしに魅力的な乗り物を人間が操縦するんだから、安全な遊びではないんです。
まぁそもそも、この手の遊び(アドベンチャー要素のあるアクティビティ)に安全で魅力的なんて存在しない、というのがぼくの持論です。
もちろん、リスクや楽しみ方や魅力の感じ方は人それぞれですが。
大なり小なりリスクがあることは間違いないです。
理由は様々ですが、何が起きるか分からないってことです。
ぼくだって人ごとじゃないです。
すべてのフライヤーは、いつ、どこで、どんな事をやらかすか分からない。
パラグライダーはほとんどの人にとってただの「遊び」です。
だからこそ、思いっきり楽しめるように、リスクも理解して、起こり得る事態に対応できるように、自分なりの対策をする必要があります。
なぜ対策を考える必要があるのか(救助費用)
特に遭難救助に関しては大きな費用が発生する可能性があるので、自分自身だけでなく、家族にも関係してくることなのでしっかりと理解しておくべきです。
理解したうえで、自分にはどんな対策が必要か、どこまでリスクを許容できるか、解像度高くイメージしましょう。
捜索や救助が発生した時どんな流れで、誰が動いてくれて、費用がいくらかかるか、知ってますか?
登山での救助の場合は、数十万円かかるようです。
パラグライダーの場合、登山道とはまったく関係ない山中の可能性も高いのでさらに高額になるでしょう。
「警察や消防が救助してくれたら無料なんでしょ?」
そのとおりです。
けど、必ず警察や消防だけが来てくれるわけもなく、状況により民間の救助隊に依頼する場合も多くあります。なので実際は数十万円かかるということです。
主な費用内訳は、
「救助者手当1名×3万円前後」「消耗品費(救助道具、食料など実費)=数万円」「救助者の傷害保険代」
例えば、遭難場所が明確で救助者5人に助けに来てもらった場合はざっくりと、
救助者手当3万円×5人=15万円、消耗品費=1万円、傷害保険代=2万円
18万円は最低でもかかりそうですね。
ヘリコプターに関しても同様に行政ヘリ(警察、消防)の場合は無料です。けど、民間のヘリにお願いしたら1分1万円といわれています。
(実際は、近年では民間ヘリが捜索救助をおこなうことはほぼ無いらしいですが)
また近年は、行政ヘリコプターによる救助が無料だということが問題視されています。実際に埼玉県防災ヘリコプターは山岳地域の救助は有料化(手数料)されました。
とはいえ、5分8000円なので民間ヘリとは比較にならない安さですが、救助には平均1時間は飛ぶので10万円ほどはかかります。
これら「救助費用」に関して、高いと感じるか安いと感じるか、無料か有料か、など意見は様々でしょうが、それについて議論するつもりはありません。
ぼくらは現状を知り、そのリスクを許容できるのか?できないなら対策(保険など)しなきゃいけないよね。ということです。
保険に関しては、問題になるのは本人とその家族の金銭面だけなので、
「知っていて、内容も理解した結果、加入しなかった」
というのはまさに自己責任です。
けど、
「知らなかった、まさかこんなことになるなんて」
という事態を防ぐのは、ぼくら事業者の役割だと思っています。
参考記事:
▼捜索救助の費用を左右する要因
「捜索の有無」と「救助の難易度」
かかる費用は「捜索の有無」と「救助の難易度」によって大きく変わります。
― 捜索の有無 ―
先に説明したように、費用の大半は救助者の人件費と諸経費です。
場所が特定できず捜索が必要な場合は、捜索してくれた人(警察・消防以外の民間)の延べ人数(人数×日数)の分だけ人件費がかかります。
特にパラグライダーで遭難する場合は、対象となる範囲が広大なので、位置情報の共有がとても大切です。場所が特定できれば、捜索する必要はなくなります。
自分の現在地を伝えれるようにしておくことで、リスクをかなり軽減させることができます。
出来ない人は、今すぐこの記事を読みましょう👇
― 救助の難易度 ―
費用を左右するもう一つの要因は「救助の難易度」です。
遭難場所が、アプローチ(現地まで行くこと)の難しい場所や搬送が困難な地形の場合、必要な救助者人数や必要な道具(ロープなど)が増えていきます。
特に、救助者の安全を確保するためにはギリギリの人数で救助に行くことは避けるべきなので必然的に人数は増えていきます。
一次捜索と二次捜索
要救助者の場所が特定できない場合は「捜索」することになりますが、大きく「一次捜索」と「二次捜索」に分けられます。
― 一次捜索 ―
警察や消防が捜索救助を行います。
けど、特に山岳での捜索はその山に詳しい人の協力や人手が必要になることもあります。その場合、遭対協(長野県の場合は「長野県山岳遭難防止対策協会」)など民間に協力要請が出されます。
一次捜索にかかる費用は前述したとおり、
一次捜索は、1週間~10日間程度で打ち切られます。状況によって警察や消防の方が判断するんでしょう。
― 二次捜索 ―
一次捜索が打ち切られると、それ以降は家族の依頼で民間による二次捜索となります。ここからは完全に有料での捜索です。
かかる費用は、期間や範囲によってかなり違いますが、人件費(1人1日3万円)や民間ヘリコプター(1分1万円)の金額から想像してください。
▼具体的な対策サービス
いろいろと考えるべきことはありますが、ここではあくまでも「遭難救助費用」に関してのみ考えます。
対策は大きく分けると2つ、
①遭難救助費用保険(山岳保険)
実際に遭難救助にかかってしまった費用を補償してくれる保険です。
よく聞く「山岳保険」という保険商品は無いそうです。定義としては「遭難救助にかかる費用をカバーする保険の総称」といった感じです。
保険商品はいろいろありますが、パラグライダーのために加入するのであれば日額制などの短期保険は除外して、年単位でかけれる保険がいいです。
ネットで探して見つかった保険を3つほど紹介しておきます。
※詳細は必ずご自分でご確認ください。
1つ目は、ABC少額短期保険株式会社の「レスキュー費用保険」です。
『レスキュー費用保険』
https://www.abc-rq.com/
※なぜかnoteの自動ブックマーク化がされないのでURL表示
2つ目は、登山アプリや情報サイトで有名なYAMAPの
「外あそびレジャー保険」です。
3つ目は、アウトドアメーカーのモンベル会員限定ですが「モンベル野外活動保険」です。
この保険はプランが細かく選べるので、モンベル会員の方は要チェック。
②山岳遭難対策制度(ココヘリ)
最近よく耳にする「ココヘリ」や「ジロー」です。
さらに、2023年6月1日から【新しい遭難対策制度】として進化しました。
従来のココヘリサービス(捜索)の中にジロー(捜索救助費用補てん)のサービスがバージョンアップして組み込まれたという形です。
現状では、ジローとして単独でのサービスも継続しているようです。
ココヘリ/ジローは保険ではありません。捜索救助にかかった費用をあとから補償してくれるサービスではない、ということです。
両サービスに共通するのは、
「ココヘリ事務局が民間捜索救助組織の手配を行い、年間550万円までの捜索・救助を実施してくれる」
というサービスです。
ココヘリではさらに、加入者が専用発信機を携帯することで、受信機を使用してヘリコプター(3フライト)やドローンでの捜索してくれます。
2つを比較するとこんな感じ、
パラグライダーのフライヤーでもあり、実際にココヘリと連携して捜索活動をしている太田 毅彦さんが自身のYoutubeチャンネルでココヘリとジローの山岳遭難対策制度に関して解説してくれている動画があります。
それぞれのメリット/デメリット
▼【結論】おすすめは「ココヘリ(ジロー)」
パラグライダーによる遭難救助が発生した場合、可能な限りエリア管理者などにより捜索や救助が行われます。
もちろん人命最優先なので、重大事故や急を要する事態、また自分たちで救助が困難な場合は即座に警察・消防に連絡します。
また、現場は登山道などのない山中であることも多く、そのような場所への救助の場合は突発的な民間救助者への依頼(近くの山小屋のスタッフに助けてもらうなど)はあまり考えられません。
そうなると、ココヘリ(ジロー)のサービス外の費用が多額になるケースはほぼ発生しないだろうと推測できます。
さらに、今後もココヘリと民間救助組織の連携は強まり広がっていくでしょうから、デメリットも少なくなっていくと考えられます。
さらに、フライト時に何らかの方法(TRACKER、LiveTrack24など)で位置情報共有をしていれば、大掛かりな捜索の必要もほぼなくなります。
その場合は ジローの2,200円/年 だけでもいいという考え方もアリだと思います。
もし山岳保険を選ぶなら理由としては、傷害保険との組み合わせでしょうか。
いかがでしょうか?
万が一の備えなので、考え方は人それぞれでしょう。
けれど、そもそも知らないというのはあまりにもお粗末なので、まずは遭難救助に関する最低限の理解はしておき、対策方法も知ったうえで判断しましょう。
今回の記事も、パラグライダーが大好きな方に少しでも役に立てば嬉しいです。