すばひび所感
この記事はゲーム『素晴らしき日々』を私がプレイし終えた後の感想を記すものであり、単なる自己満足により制作されたものである。故に文字が見づらい可能性が大いにあるので留意してほしい。
さて、私がすばひびをプレイし終えた後に感じたことは大いなる満足感のみであった。これは名著と言われている小説を読み終えたあの読後感に近いものがあるだろう。綿密に構成されたシナリオ、見事な筆致により繰り出される文章、声優の名演、ゲーム内BGM、どれをとっても見事としか言いようが無かった。また、すばひびには多くの文学書、哲学書、詩集からの引用があり、それもまた私の満足度を高まらせた。具体名を挙げるなら、『論理哲学論考』『シラノ・ド・ベルジュラック』『学識ある無知について』『猫とともに去りぬ』等々…様々な書籍からの引用、ゲーム内での解説も詳しくなされており理解も容易かった。このゲームが萌えゲーアワードの大賞に輝いたのは至極当然だと思う。
ここからは個人的に良かった点を詳しく順々に述べていこう。
まずは、なんと言っても作中に登場するキャラクターの良さについて語らなければならない。1章は水上由岐、2章は間宮卓司、3章は高島ざくろ、4章は悠木皆守、5章は間宮羽咲、6章は同じく悠木皆守となっている。勿論ゲームは第1章から始まり、水上由岐の視点から始まる。この水上由岐を私は作中で最も好きになった。その理由を説明しよう。
ゲームが始まってすぐ、水上由岐が屋上で青空を眺めながら煙草をふかしているシーンがある。ここで私はよくぞ煙草を吸ってくれたと感謝を申し上げたい。これは完全に私の性的嗜好の問題だが、私は煙草をふかしている女性に魅力を感じ、ついつい好きになってしまう傾向がある。可憐なイメージとは裏腹に害のある煙草をふかし、物思いに耽っている様を見るのは美しい以外の言葉では表わすことはできない。また、水上由岐の声も、大人びた印象があり、私の好みに完全に一致する。実際は私より遙かに年齢も下のはずだが、どこか姉を想起させる声質で、私もいないはずの姉の記憶が脳裏に蘇った。私も幼い頃にゆき姉のような人と遊びたかったとつくづく思った。
忘れないように一応他のキャラクターについても語っておこう。まずは間宮卓司だ。間宮卓司は2章の主人公だが、この章を見るのはなかなか辛かった。集団による肉体的、性的虐待からはじまり、気が狂い救世主となり人々を導き、終の空へ…といった感じのストーリーだが理解不能な箇所がいくつもあり、時間が進む毎におかしくなっていく様を端から見るのが大分きつかった。だが、橘希実香との心中?ルートは綺麗に終わっていてEDの「ナグルファルの船上にて」は傑作だと私は思う。あとリルルちゃん可愛かった。
続いて高島ざくろについてだ。この章は2章よりも見るのがきつかった。何故なら正史ルートに救いが無いからだ。赤坂、北見による執拗ないじめは間宮卓司のいじめより惨憺を極め、見ていると精神が参ってしまいそうだった。ネチネチとした女子のいじめを更にひどくしたような感じだったのでどうにか救われてくれ…とずっと思っていた。その後は宇佐美らと出会い、マンションの屋上で…となる。唯一高島ざくろに救いがあったとすればifルートではあるが、橘希実香と共に素晴らしい日々を手にすることが出来たことだけだろう。そういえばゲーム内で高島と宇佐美、亜由美は自分たちの前世は戦士だと自称していたが、これはどうやら80年代に流行った戦士症候群が基となっているらしい。
次は皆守と羽咲一緒に語ろう。その方が説明もしやすいし彼女も嬉しいだろう。ここからはネタバレだが、皆守は間宮卓司の人格の内の一人である。ついでに水上由岐も人格の内の一人である。間宮卓司は解離性人格性障害、いわゆる多重人格である。ここが作品の最も重要な要素であり、前章までに多くの伏線が張られていたが私は多重人格だと予想は出来なかった。多重人格であることを知ってもう一度1~3章を見てみると違った見方が生まれてくるだろう。また、私は4章をプレイするまで皆守に対し、良い印象を抱いて無かった。間宮卓司に対する理不尽極まる暴力やカツアゲを行っていたため寧ろ嫌いだった。しかし、4章で印象が180度変わった。この印象変化はシナリオライターの手腕が光っている。羽咲の視点からも卓司と由岐、皆守の行動が描かれており、客観的視点でのストーリーだったので我々の理解も容易だった。
BGMについても語らなければならない。BGMとしては「夜の向日葵」「夏の大三角」「Tractatus Logico-Philosophicus」と名BGMばかりである。ぜひ一度「夜の向日葵」は聞いてみてほしい。また、OP、EDも素晴らしい曲しかない。「空気力学少女と少年の詩」「終末の微笑」「ナグルファルの船上にて」も聞く価値のあるものばかりだ。
時代背景も語りたい。すばひびは2010年に発売しており今から15年も前の作品であって今とずいぶん変わった様相が見られる。学校の裏掲示板なんて言葉は今や誰も使わないだろう。ぜひ当時の空気感を体感してほしい。かなりオタクに対して厳しい視線が向けられていた時代なので見ていて辛くなるかもしれんが。
ここまで感想を書いてきたがもう一度やりたくなった。あと、7月12日か20日に聖地にでも行ってみようかなとふと思った。最後に一言付け加えて擱筆としたい。
幸福に生きよ!