「忘却の創造」(2019年2月)
●2月1日/1st Feb
昨日の神戸新聞に先日のアシアアートプロジェクトでのコシノヒロコさんとの対談の事が掲載された。
ここでは僕は単なる聞き手として登壇したけど、事前に「まなざしのデザイン」もお渡ししたこともあり、日常へのモノの見方のデザインについて彼女の言葉で引き出せたので良かった。
次回のトークは3月16日に旧宮塚邸住宅にて。
●2月2日/2nd Feb
拙著「まなざしのデザイン」が、年末の駿台の全国模試の国語の問題に採用された。まさか自分の文章がセンター試験に向けた全国模試で選ばれると思っていなかったので青天の霹靂ではあったが、全国各地の受験生の目に触れたことは素直に嬉しい。
また現代文の問題に選ばれた理由として、「文化・芸術論をベースにして知や社会の枠組みを問い直そうとする論旨の文章を出題した。」と書いていただいたのも大変光栄に思う。
事前に駿台予備校からは出題に使う箇所のことは聞いていたが、試験が終わるまでは口外できないので問題を見たことが無かった。しかし先日ようやく手元に届いたので、実際に問題を解いてみることにした。
問題文として引用された箇所は本書の第6章「日常を冒険する」の中の”風景のリミックス”、”ブリコラージュが開く想像力”、”分類を変える”という三つの節からだ。ゲンバリミックスという僕の作品の解説にあたる部分だ。
著者として自分が書いた文章から出題された設問を解くのは奇妙な感じがしたが、7つに設けられた設問の11個の選択問題で、一応すべて正解を得てホッとする。
●2月8日/8th Feb
パッケージよりも品質の方が大事だし、ファッションよりも心もちの方が重要だし、建物よりも生活の方が大切だ。
デザインとは見せかけを作ることでは無いはずだろう。
Quality is more important than package.
Mind is more important than fashion.
Life is more important than building.
Design doesn’t mean creation of pretense.
●2月10日/10th Feb
世界的な現代美術家であるクリスチャン・ボルタンスキーのトークセッションと展覧会の印象について、また後ほどブログでの私見を書きたいと思うが、一部のアーティストの仕事は、次の数十年間でより重要な意味を人間の実存にもたらすことになると確信している。 今から我々はAIとブロックチェーンシステムに基づいた特殊な社会の時代に入っていこうとするからだ。
コンピュータは「削除」はできても「忘却」は出来ないのだ。
I want to write my opinion later about impressions from talk session and exhibition of Christian Boltanski who is the world wide contemporary artist.
But I have confidence that some part of works by artists will give more important meaning to human existence in the next decades. Because we are going to enter the period of particular society based on AI and blockchain system.
Computer can “delete” but not can “forget”.
●2月10日/10th Feb
投資家というのは世界の”変化量”に着目している。だから未来を予測するためには、本物の投資家の意見は一考の余地がある。例えそれが世界の破局へ向かう方向を指し示していても。
Investors are focusing on “change amounts” of this world.
So we should consider opinions of genuine investors, for predicting the direction of the world, even if it indicates catastrophe.
●2月10日/10th Feb
冷静に考えると、確かにもし今の政治状況がこのまま続くなら、日本は100年以内に消滅するのだろうなと想像する。一方で北朝鮮のおかげで台頭するのは朝鮮半島だろうと。
Thinking objectively, if this political situation will keep going on, I imagine JAPAN will disappear within 100 years.
On the other hands, KOREA will rise up because of North Korea.
●2月12日/12th Feb
少々わけあって、今なぜか海賊の歴史について勉強している。
Because of some reasons, now I am studying about histories of pirates.
●2月14日/14th Feb
ようやく学部の講義の採点が終了。「地域価値創造論」という講義だが、246人の学生がいるのでレポートを読むだけで一苦労。
だが何人かの学生が、今まで受けた中で一番面白かった講義と書いてくれていたのを見つけて、採点が大変でも幸せな気分になる。
I just finished to give scores of all student in under graduate class at my university.
This class is named “creation of regional value”, and there are 246 students. So it is very hard work to check their reports.
When I read their writing, I found some opinions which they feel my class is the most interesting among classes they had taken. I turned to be very happy ,even if the work is so hard.
●2月16日/16th Feb
これから大阪府立大の現代システム学域のシンポジウムに登壇する。
それぞれ財政、マーケティング、教育、緑地環境の専門家とともに「活力ある社会・まち・ひと」というテーマでパネルディスカッション。
しかし15分でプレゼンしないといけないので、結構プレッシャー。
●2月14日/14th Feb
昨年の7月にMCEIで講演した時のことを理事長の橋詰さんがレポートして下さっている。僕が講演でお伝えした以上のことを、時代背景や知識と文脈を織り交ぜながら整理して綴って頂き冥利に尽きる。90分ぐらいの時間でお話しするが、その背後に膨大な背景があるので、いつも全てお伝え出来ない。でもこうして奥まで洞察して読み取って頂けることに心より感謝。
●2月16日/16th Feb
大阪府立大学の現代システム学域のシンポジウムでの講演とパネルディスカッションを終える。
たとえ要約版でであっても、15分以内に全部のプレゼンテーションを通せるとは思っていなかったが、何と14分40秒で終わることができた!
討論の中で、僕からは日本の財政政策のサステイナビリティの限界ついての質問を投げたのは、日本の財政政策はプライマリーバランスの議論だけでは不十分だと最近ずっと気になっていたからだ。そもそもお金の発行の仕組みが間違っていると思うので聞いてみたが、経済の専門家も明確な答えを持っていなかった。
また、”活力ある社会”ということについては、成熟化社会に入っているのに、なぜ私たちはまだ活力を上げて行く方向にだけまなざしを合わせていて、衰退や縮小を受け入れられないのかという疑問を投げかけた。こうした上向きへのモノの見方だえにとらわれていることのほうが本当の問題ではないかと。
聴衆は高齢者が多かったが、皆うなずいていたので、ある程度は共感得られたかと。
I finished my presentation and open discussion in the conference of the department of sustainable science of Osaka Prefecture University.
I never imagined I could complete my whole presentation within 15 minutes even if it was summary. But I could finish at 14 minutes and 40 seconds!
In open discussion, I threw the question about financial policy of Japan. Because recently I have been wondering that the discussion of primary balance is not enough for Japanese financial defaults.
I agree the opinion which the system of money production have been wrong from the beginning.
However a professor of economics didn’t have an answer clearly.
And I put the question why we are only focusing to have vitality for living, and why we can’t accept the declining or shrinking in this matured society. This is the true problem of our perspectives.
●2月17日/17th Feb
本日は顧問を務めさせて頂いている人工知能学会仕掛学研究会に出席。
スタンフォード大学でのアメリカ人工知能学会以来、発表はしていないので、そろそろどこかで。
●2月17日/17th Feb
人工知能学会の第6回仕掛学研究会終了。
この研究会の顧問は僕だけでなく、京大博物館の塩瀬先生と、越前屋俵太さんの3人でしている。
結局、今日の研究会ではみなさんの発表に対して、この3人が突っ込みを入れる形にはなったが、80名ほどの参加者が集まり、仕掛学も立ち上げ当初から随分と育った感があり嬉しく思う。
帰り際に、俵太さんから僕と塩瀬さんとのトークバトルをプロデュースしたいと言われた。俵太さんが出すお題にアドリブで僕らがトークするのを見たいという。(俵太さんらしく上岡龍太郎と笑福亭鶴瓶のパペポをイメージしてるらしいが...)
塩瀬さんは同年代で同じ目線で話が出来る貴重な研究者仲間の一人。僕らが基調講演で呼ばれた長崎の全国大会では、二人とも一緒のホテルだったけど、チェックインした足で部屋に入らずにそのままロビーで朝まで議論したのを覚えている。いつも凄い勢いで二人で話しているが、確かに勿体無いので公開でやると面白いことになるかもしれないと思ってしまった。
仕掛学だけにすっかり俵太さんに仕掛けられてる感じがあるが...
●2月18日/18th Feb
前々から主張している、「小さな問題解決が大きな問題を隠してしまう」ことをこの週末にも改めて実感している。私たちは目の前に今見えている問題解決に簡単にとらわれる。しかし真の問題は見えないのだ。だから正しい方法でまなざしをデザインせねばならない。
In this weekend, I deeply recognize again that “small solutions hide huge problems”.
We are easy to fall in solutions which we can see now. However true problems is invisible. So we have to design our perspective in the correct way.
●2月18日/18th Feb
ついにアトリエの巨大な活版印刷機2台を撤去する。これがフラットをめぐる3800日の長い演劇のエンドロール。
次はこの建物の解体というラストシーンとなる。
At last, 2 huge printing machines of my atelier were removed.
This is the end roll of my long theatrical performance of 3800 days at my flat.
Next cut will be the last scene. it is the destruction of this flat.
●2月21日/21th Feb
皆さまには暖かい誕生日のメッセージを賜り、心より感謝いたします。
昨年はユーラシア大陸の西の果てにてこの日を迎えましたが、本年は関西でいつもと変わらぬ日常の中で迎えたことにも感謝しております。
人生の後半戦に入りそろそろ大人として成熟していかねばならない身ですが、学問も芸事もまだまだ一知半解から脱せれない日々です。
この世界とは一体どういうもので、これから何が起ころうとしているのか。
人間とは一体どういうもので、これからどこへ向かおうとしているのか。
私たちには何が可能で、何を本当はなすべきなのか。
こうした答えなき問いを抱いてしまったが故の苦しみもありますが、それを探す旅の途上で多くの方々に支えていただいております。
思えばこの身が今ここにこうしてあるのも、私の父母、祖先の存在はもちろん、ありとあらゆる命の連鎖と因果の中にあるのですが、そのことをついつい忘れ、慢に陥りがちになる心が潜んでおります。
連綿と紡がれる命の連鎖の中でわが身がどのような役割を果たせるのか分かるはずもありませんが、己の未熟さと愚かさを常に戒め、日々の精進を重ねて参りたいと思う次第です。
未熟な身ではありますが、今後ともどうぞよろしくお願い致します。
2019年2月20日
ハナムラチカヒロ
●2月21日/21th Feb
いくら誕生月とはいえ、ちょっと一気に本買いすぎたか...。しかもジャンルはバラバラ。
Even if because of my birthday month, it wad too much to buy books... In addition, these are every different categories.
●2月24日/24th Feb
敬愛する能勢伊勢雄さんに会いに岡山まで来た。ゲーテの色彩論の話を改めて聞き、またその後のカフェで能勢さん率いる写真家集団Phenomenaの皆さんと一緒に写真集「フトマニクシロランドスケープ」の話、またその続きとして日本の誕生を追いかける彼らの調査のディスカッションをする。僕自身はシュタイナーからシャウベルガーの流れに以前より注目していたが、能勢さんも実は同じまなざしを向けていたことを共有。至福の時間だった。
●2月24日/24th Feb
能勢伊勢雄さんと岡山の聖地巡り。今回の調査は時間がそれほどなかったので、岡山の中でも必ず見ておくべき三箇所を能勢さんが選んでくれて導いて頂く。
一つ目は岩倉神社。田園の中に突如として積まれ巨石の塊が置かれている。遥拝所と本殿、そして御神体が一直線に置かれるという神社の基本形を一番理解できる元型のデザイン。
二つ目は王の墳墓。おそらく弥生時代にこの一帯を治めていた吉備王国の王の墓がストーンサークル状になっている。その中央に祀られた石には奇妙な文様が施されているが、その造形には太古の呪術的なものを感じる。
三つ目は石畳神社。高梁川の屈曲点にある60mの岸壁に巨石が積み上げられた素晴らしい空間。拝殿と岩との配置関係の正確さもさることながら、ロケーションと造形の素晴らしさに心奪われる。これを積み上げねばならなかった切実な動機があったのだろうが、それを近代的なまなざしで理解しようとしてはならないのだと思う。
能勢さんは昨日の講演、そして夜通しの遊会で絵巻物の勉強会の後に、わざわざ駆けつけてくれて各地をご案内してくれた。かたじけなさに心の底より涙こぼるる。
歩きながら聖地や太古の日本人のまなざし、そして近代文明の超克を巡り様々な対話をする時間は本当に学びが多い。
二人の会話を映像記録してアーカイブしながら、後ほどきっと貴重な調査記録になるかもしれないと予感している。
能勢さんとは同じ誕生日だが、親子ほども歳が違う僕に、本当に丁寧に言葉を重ねて対話を導いてくださる姿勢に頭が上がらない。
僕が歳を重ねても能勢さんのような心優しき賢人にはなれないのかもしれないが、ほんの少しでもその思想と知恵、アティテュードを受け継ぎたいと感じた。心より深く感謝。
●2月26日/26th Feb
I am going to Tokyo.
東京へ向かう。
●2月26日/26th Feb
マハンやマッキンダーに共感する人とエリアーデやベルクソンに共感する人との間でどういうコミュニケーションがあり得るのだろうか...。
What kind of communication can be between people sympathizing with Mahan and McKinnard and those sympathizing with Eliade or Bergson...
●2月27日/27th Feb
東京から福島へ移動する。
あれから8年か...
I am going to Fukushima from Tokyo.
It is 8 years after that...
最近、地政学を勉強している。
未来を予測したいのであれば、経済学を理解するだけでは十分ではなく、戦争や戦略に対する各国の指導者のまなざしを考慮する必要があるからだ。
地政学を勉強し始めてから、新聞の読み方が徐々に変わって来た。
世界の潮流を理解することは、世界へのまなざしをデザインすることにつながるだろう。
Recently, I have been studying geopolitics.
If we want to predict the future, it is not enough to understand economics but necessary to consider the perspectives to wars and tactics of leaders in each nation.
After studying geopolitics, my style of reading newspapers have been changing little by little.
To understand the tide of the world will leads to design our perspectives to the world.
福島の猪苗代での現地調査を終える。
福島の風景には見えない要素が溶け込んでいる。
I finished field work in Inawashiro of Fukushima.
Invisible elements are melted in the landscape of Fukushima.