短編小説 l 満月を食べてみたい
満月を食べてみたい。表面がザクザクしているから、クッキーみたいに甘くてほろほろしてるのかも、と紺色の制服をまとって夜に馴染んでいる君のとなりで呆れたい。真っ黒のコンクリートの上にぽろぽろと落ちて沈んでいく月のかけらを眺めたい。横断歩道の白い線だけを渡る君が眩しくて、齧ったあとのような淡い三日月のせいにして目を細めたい。
満月を食べてみたい。レモネードにして飲むのが良い。透明な瓶に月とはちみつと砂糖を入れてスプーンでくるりと混ぜたものを、冷蔵庫に大切に仕舞いたい。冷蔵庫を