奨学金の話。

昔話をしよう。
ぼくが大学に通っていたころの話だ。

ぼくは奨学金を借りている。
大学に通うために借りた。月に10万。4年間。
おそらくメジャーであろう某機構から。利息有りの第2種だ。

ぼくは当時よくわかっていなかったので端的に奨学金の利用理由を記入したのだが、どうも後々聞いてみると、第1種に当たるには申し込み書類に真剣に理由を書くべきだったらしい。もっと情に訴えるような言葉で書けばよかったのに、と。まぁ本当かどうかは知らないが。
実際のところ兄が大学在学、弟の高校進学。経済的な問題から進学が困難なため。とか書いたように思う。
現実的に我が家の状態はそうだったのかもしれないが、結局のところ兄の学費は大半親が出していたらしいし、弟もなんだかんだ生活費だけで奨学金を使ってしまって親に学費分出してもらっていたので、なんだかなぁ、というところである。
まぁ兄は途中から奨学金借りたりバイトしたりで実家にお金を入れていたらしいし、弟は一応親から借りた形にはなっていると聞くが、この辺はぼくには関係のないことである。
一応元々の約束として、ぼくの入学金と半年の学費、引っ越しの初期費用は親が出してくれていた。(バイトするくらいなら高校辞めて働けと言われていたので、その条件だった。)

とりあえずそんなこんなで、ぼくは奨学金で大学生活を始めた。
初めての一人暮らしである。

奨学金が月に10万。バイトで月に2~3万。当時最低賃金630円の県にいたので、まぁがんばっても収入はこんなもんだった。
学費は半年で払っていたが、だいたい月割すると5万くらい。
残りが生活費。
家賃、水道光熱費、食費、教科書代、交際費。

学費は免除申請をしてギリギリまで延ばし、
電気と水道はわりと滞納してた。
大家さんに滞納させてくださいとごめんなさいしたこともある。
4年の間に一度、どうしても臨時で発生した学科の宿泊研修に費用が足りなくて親に借りた。それで借りられる親がいたのだから、自分はまだ平和な生活だったのだろう。

奨学金と自分の費用負担でほぼ卒業したとはいえ、
それを自分に課していたとはいえ、
どこかで甘い気持ちはあったのだろうから。

まぁしかし、今考えればなかなかスリリングな生活をしていたな、と思う。

学費の最終締め切りのときって、退学届けが同封されてきたんだ。
さすがにあれはいつもひやひやしていた。

まぁでも、そんな感じでなんとか生活をしていたぼくであった。


奨学金にも賛否あるとは思う。返還が困難になった際の取り立てや亡くなってしまったあとの遺される負担。それでなくても借金を背負って社会にでていくのだから、いろいろなニュースもみる。
そもそも授業料が、なども取りざたされている。

ただ、あの時。
少なくともぼくが一人で生活をし、その生活をするために。
あの時のぼくには必要なものだった。

奨学金がなければ一人で生活して大学に通うことも、
今の職に就いていることもなかったことだろう。


さて、ぼくはなんで奨学金の話なんて言いだしたのか。


終わりが見えてきたのである。
繰り上げた。
半分くらいの期間になっているので、自慢してもいいのだと思う。
ぼくは頑張った。

ぼくは社会人9年目になる。
奨学金は就職した年の10月から返還が始まった。

学生時代のおかげで基準の生活費用があまりかからない生活に慣れてしまい、わりと安上がりな生活が続いている。
あまった収入はコツコツと貯めて使ったり、繰り上げに使っていた。

そう、終わりが見えた。
まだ完全に終わったわけではないけど。
もう、いつでも終わりにすることができる。

困ってしまった。
いいことのはずなのに、今のぼくは困っている。

ぼくにとってはある意味クエストのようだった。
人生に残ったタスク。
やるべきこと。
終わりにするために、終わらせること。

その最たるもの。


今のぼくにだってやりたいことはそれなりにたくさんある。
あるのだ。

そうであるならば、なぜなのか。

簡単にいってしまうと、これといって他に熱心になる目標がないのである。
これまでには、免許を取るためにお金貯めてみたり、脱毛に行くために貯めてみたり、旅行にいってみたり、なんか自分がやってみたいことってそれなりにあったのだ。
今だって自分ではそれなりにはやりたいことはある。
でもそれって、今のぼくの延長なのだ。
劇的に変えるようななにか、ではない。


周りの人たちは、結婚して、とか、子どもがいて、とか、家を買って、とか、そういったよくある人生の目標だったりがいろいろあるんだと思う。
そういうのを眺めながら、ぼくはこの先、どうやっていきようかなぁと考えている。

でも、もう落ち着いてしまったのだ。
満足してしまった。
向上心とかがマジでない。

というより、なんかもう、めんどくさくなっちゃってる。

いいじゃん、もう。
今の仕事してれば、続けれれば、仕事があれば。
あるいは自分一人生きていくだけなら、そんなにがんばらなくたっていい。
あと何がしたい?って、
もう、今の生活続けられたらいくない?ってなる。
住むところがあって、
好きに食べていたって高が知れているし、
せいぜい好きなだけ本を買いたいくらい。

なんにせよ、もう背負うものがなくなる。
自分一人生きていくには、もうそんなに頑張らなくていい。


という、なんというか、気が抜けているのだ。とりあえず。

気が抜けちゃったので、ぼんやりしている。


しばらくぼんやりしてもいいなぁとは思っている。

思ってはいるのだけど、30なのだよなぁ、とか思うとつい、
どうやって生きようかなぁとか悩んでしまうのだよね。

家でも買ってみればいいのだろうか。
また支払いというタスクを作って。

まぁ半分くらいは冗談なのだが。

そんなことを考える今日この頃である。

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