1.ゆらぎの種類
ある程度の年配の人なら記憶されていると思いますが、1980年代に1/fゆらぎで回転する扇風機というものが販売されたことがありました。私は当時そのようなゆらぎのことは知りませんでしたので、興味を持ち色々と調べた事があります。その結果1/fゆらぎは我々の身の回りに度々見かけられるにも関わらずその発生機構がよく分かっていない事を知り驚きました。そこで仕事の合間に色々と調べてゆく過程でこの機構を説明できるあるモデルを考えつきました。そのモデルに沿って考えを深めまた理論計算も行ってきた結果、最近確信の持てる結論に達しましたので、それを踏まえて1/fゆらぎ全般やサイエンス(論理性・実証性という意味での科学)と仏教との関連性などを書いてゆくつもりです。
そこでまずゆらぎとはどういうものかということから始めます。
「ゆらぎ」という言葉は時には「雑音(ノイズ)」という言い方もされます。
自然界あるいは我々の身の回りにあるゆらぎには、大きく分けて三種類のものがあります。
まず「ホワイトノイズ」、そのスペクトルがあらゆる周波数においてほぼ同じ強さ(強度)を持っているゆらぎです。光の場合には白い光が全ての周波数の光を同じ強さで持っているので、そのことからこの様なゆらぎを白色雑音(ホワイトノイズ)と言います。ここでスペクトルというのは、ノイズ信号を色々な周波数fの正弦波(三角関数)の重ね合わせと考えた時、それらの正弦波の強さを周波数で分類したものです。プリズムによって光が七色に分けられる様(これこそが光のスペクトルです)を想像してもらえればある程度理解できるかと思います。周波数の小さい赤色から可視光線としては周波数の大きな紫色まで並んでいて、強い周波数部分は明るく弱い部分は暗く現れます。この記事の冒頭に虹の写真があります。虹は空気中水蒸気内の水滴がプリズムの役割をして太陽光のスペクトルを見ているものです。スペクトルの更に詳しい説明は https://jokyoji.wixsite.com/website/ をご覧下さい。
ホワイトノイズでは信号間に相関関係がなく、全く不規則なノイズです。
次に「ブラウンノイズ」です。水中に微粒子を浮かべると、多方面からの多くの水分子の衝突によってその微粒子は一見不規則な運動をするのですが、ブラウンノイズはその運動から生成される信号雑音とよく似た雑音のことです。この運動はロバート・ブラウンが最初に発見したので、それに因んで付けられた名前です。ブラウン運動は酔っぱらいの動きに似ていることから、「酔歩」とも言われます。この雑音あるいはゆらぎのスペクトルは、周波数fの二乗に反比例つまり1/f²(エフの二乗分の一)の形をしています。従って周波数の小さい成分が非常に強く、周波数が大きくなると急激に弱くなるというスペクトルです。周波数が小さい成分というのは、光で考えれば「赤い光」のことですから、「レッドノイズ」とも言います。酔歩では次の一歩はその直前の位置から始まり、そことは全く関係のない位置からは始まらない言うことからも理解できるように、ある時刻の変動の値がその直前の値に強く影響されているというゆらぎです。このような変動の仕方をマルコフ過程と言います。
最後に私の関心対象である「1/fノイズ」です。これはその名の通りスペクトルが周波数fに反比例するゆらぎです。このゆらぎのスペクトルもその成分の強さが周波数の小さい領域で強く大きい領域で弱いのですが、ブラウンノイズ程ではないので、レッドとホワイトの中間という意味で「ピンクノイズ」とも言います。
これまで述べてきたように、これら三つのゆらぎの中で最初の二つまではその発生機構が分かっています。しかし最後の1/fノイズ(ゆらぎ)がどの様なメカニズムで発生するのかは明確には分かっていません。
これ以後の記事ではしばらくこの1/fゆらぎの焦点を当てて、その発生機構についての私の考えを述べてみたいと思います。
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