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【レビュー】これは悲しくて優しい物語『レイトン教授VS逆転裁判』

 私の本作関連作品のゲーム歴は、逆転裁判シリーズは逆転検事2と大逆転裁判1、2以外。レイトンシリーズは今回が初めてです。元々レイトンの方は夫が追いかけていたのを横で見ていたので、何度かナゾトキはさせてもらったことがあるのですがそれだけでした。そのため今回はどちらかというと、逆裁ファンとしてプレイに至っています。

 今回レビューする『レイトン教授VS逆転裁判』は、コラボだし、スピンオフだしと気楽に始めたものなのですが...なかなかとんでもなく良作でびっくりしました。こんなに上手く融合したコラボ作品ってあるんだ!!

発売日:2012年11月29日
プレイ機種:Nintendo3DS
プレイ時間:30時間ぐらい

ーあらすじー
レイトン教授と助手のルークの元にある日、魔女に追われていると言う不思議な少女マホーネが訪ねてきます。教授達が暮らすロンドンを知らなかったり、魔女を信じていたりと彼女の言動はとても現実離れしていました。状況がお互い飲み込めないままそこに魔女がやってきて------
一方、国際弁護士協会の技術交流としてロンドンにやってきていたナルホド君とマヨイちゃん。いつものピンチ体質が災いしたのか、到着早々法廷に立つことになったのですが、被告人はまさかのマホーネで------?
全く異なるジャンルの2組が織りなすナゾトキ法廷バトル開幕!!

ーどんなゲーム?ー
タイトル通り、レイトン教授と逆転裁判が一緒になったゲームです。ナゾトキパートと法廷パートが分かりやすく分かれていますが、ナルホド君がナゾトキをしたり、レイトン教授が異議を唱えたりと面白いコラボレーションを見ることができます。

良かったところ

ストーリーが良すぎる

 本作にはとてもたくさんの魅力があるのですが、遊んでいて何度も痛感したのがストーリーの良さ。レイトン組と逆裁組の両方がバランスよく活躍でき、かつ本作オリジナルキャラクターにもとても愛着の湧くお話になっています。感情を揺さぶられるようなエピソードや、この先どうなるんだろうと気になって仕方ない展開、一見露骨に思えるほどたくさん張り巡らされた伏線など良いストーリーに必須な要素がたくさんありました。ロンドンの考古学者と日本の弁護士という、どう考えても絡ませるのが難しすぎる組み合わせを、これ以上ないくらい自然に合流させた流れにはただただ感心しました。違和感がない...!

お互いのゲームシステムを堪能できる

 冒頭でも書いたように本作ではナゾトキと法廷バトルは綺麗に分かれています。コラボだからといって、ナゾトキに法律が絡んできたり、裁判中にナゾトキがあったりはしません。ちゃんと各々で楽しめるようになっています。それぞれのファンがこれまで通り楽しめるように、そして片方を知らない人がこれから知っていけるようにできているようでそこが良いなぁと思いました。それぞれのパートは必ずしもオリジナルのキャラクターが担当しているわけではなく、そこはコラボらしくクロスしている時もあり、まさかこのキャラのこれが見れるとは!という喜びもありました。

追求するレイトン教授や
ナゾを解明するマヨイちゃんだって見られる!

法廷パートには新しいシステムあり

 これまで新作が出る度に何かしら新しい要素が登場していた逆裁シリーズ。(『サイコロック』だったり『みぬく』だったり)本作にもなんと新システムとして群衆裁判が行われます。いつもなら1人しかいない証人が複数人いるのです。そこに潜む証人同士の間のムジュンを突くことが今回の法廷バトルで大きな武器となります。

新しいセリフ「ちょっと!」
ルークがいるこの席は...?

アニメやボイスの量がとても豪華(逆裁ファン視点)

 私の記憶違いじゃなければ、レイトン教授シリーズは物語の最中に結構アニメが挟まれていましたよね?一方逆転裁判シリーズは章の冒頭、事件発生シーンのみアニメが流れるので、ナルホド君やマヨイちゃんは事件に関与していない限りあまりアニメシーンには登場しません。そんな2つのコラボである本作はレイトンシリーズ並みにアニメパートが入っていて、これまで以上に喋って動くナルホド君とマヨイちゃんを見ることができます。キャラデザの全く異なる2作品ですが、レイトン組は頭身を少し高く、逆裁組は少し低くして上手く違和感のないよう馴染ませているようです。すごいテクニックだ!

クリア後コンテンツでは製作の裏側を
キャラ達が直接教えてくれる
メタすぎてずっと笑ってしまう

さらに、おそらくストーリー上重要なところでは、セリフにボイスも付いているので、逆転裁判ファンとしてはなかなか豪華で新鮮みがありました。ただ、そのボイスにちょっと気になる点はありましたがそれはレビュー後半にて。最後の方におまけでミツルギも喋るぞ!やったね!

やっぱり曲も良い

 どちらの作品もサントラが出るほどBGMに定評がありますが、やはり本作の曲もとても良かったです。最後の法廷パートの曲が自分は1番好きでした。作品単体だとSpotifyにも配信があるのですが、残念ながら今回のコラボ作品は権利が難しいのか配信されていませんでした。ソフト内にBGMを聴けるところはあります。

気になったところ

逆転裁判組の声優が...

 レイトンシリーズといえば、声優に大泉洋さんや堀北真希さんがいることで有名で、この2人は現在発売されている最新作までレイトン教授とルーク少年を演じていました。(堀北さんは芸能界を引退されているので、次作でルーク役は交代が決まってます)一方逆転裁判のナルホド君とマヨイちゃんはタレント声優ではありません。だからなのでしょうか...今回はなぜか実写映画のキャストでタレント声優として揃えちゃってるんですよね。ナルホド君に成宮寛貴さん、マヨイちゃんに桐谷美玲さんが参加しています。これがタレント声優特有の違和感がなかなかにすごい。レイトン組も本職の声優さんと比べてしまうと、多少は劣りますが、シリーズを長く務めている分慣れている感じがします。やっぱり普通の演技と声の演技って違うんだなぁと思わされました。終盤ではだいぶ聴き慣れたかな。

 作品名を検索するとサジェストであがるくらいには評判が良くなかった模様

マヨイちゃん、ちょっと空気読んで!

 これはマヨイちゃんの元々の性格なのか、それともマヨイちゃんの天真爛漫具合を表すために少し過剰にしているのかわからないのですが、いつもよりマヨイちゃんの空気の読めなさ具合が目立つなぁと感じました。その原因が脚本なのか、取り巻く環境の変化によるものなのかはわかりません。

ナルホド君にいつも呆れられているような調子で、レイトン教授に話しかけるのですが、「これをレイトン先生なら上手くかわすんだろうなぁ」と思ってたら「そんなことはありませんよ、ミス・マヨイ」みたいな感じで真顔で真面目にバッサリ切られちゃうみたいなシーンもあって勝手に共感性羞恥心を発動してしまうことが少しありました。逆裁の世界では周りに変わった人が多いから気にならなかったのが、ものすごく真面目なキャラが近くにいるだけで悪目立ちしちゃってるなぁと気になってしまいました。これは人によって感じ方が違うかも。

フレームレートが落ちる時がある

 本作のキャラクターはほとんど3Dモデルで描かれています。(ちなみに逆裁組は初3D化が本作らしいです。)そして会話中はそれぞれのキャラクターの性格を表すようにたくさん動きを交えながら喋ってくれます。なかなか見応えがあるのですが、その分重いのかフレームレートが落ちてるなぁと感じるシーンもいくらかありました。ちょっと勿体なかったかも。

総合:★★★★★

 冒頭にも書いた通りコラボと油断してプレイしていたこともあって、内容の良さを実感した時は何度も「ストーリー良すぎだろ…」と悶絶してしまいました。ストーリーでは2つの作品のキャラクターがしっかり交流するのに、システム的にはナゾトキと法廷パートが綺麗に分かれているため、逆裁ファンとして新しい法廷バトルを楽しむこともできましたし、レイトンシリーズ初心者として、じっくりナゾトキを楽しむこともできました。下手にコラボらしく混ざっていないことで両方の面白さが味わえた気がします。

ナゾトキで描かれるデフォルメのキャラが
とってもかわいい

 また話を進めていると本当に露骨に怪しい伏線がたくさん張られていて「えっ、やっぱりこの人はこれなんでしょ?」「こうなったと見せかけて実はこうなのでは」と、先の展開を予測させては意外な展開でひっくり返されたりして、読めるようで読めない展開が続くのも面白かったです。最後の真相は絶対に予想がつかないと思います。たぶん。レイトンシリーズ経験者だったらもしかしたら気づくのかな?

 大きな秘密を抱えてそうな本作のメインヒロインのマホーネ、今回検事役としてナルホド君と対峙する検察士のジーケン、明らかに裏がありそうな検察士長ジョドーラなどなど、表面的に見ればめんどくさそうなキャラがそれはもうたくさん登場するのですが、話を掘れば掘るほど好きになっていくような内容でした。クリアする頃にはみんな好き、幸せになれ。って思えます。

 シリーズの中ではスピンオフの扱いになってしまうのでしょうが、これはなかなか捨ておけない名作でした。今回Xにて感想をちょこちょこ呟いていたのですが、わりとフォロワーさんからの反応もあったくらい、人気作であったのも納得のクオリティーでした。コラボ作品なので、きっとリメイクやリマスターは難しいとは思いますが、現状3DSでしかできないというのはなんとも勿体無く感じます。せっかく逆裁シリーズが全部リマスターしたのだったら、これも現行機でできる機会があればいいのになぁ。新規の逆裁ファンの方にもぜひやってほしい。

 今回この作品をやってみて、レイトンシリーズも気になりましたし、未プレイの逆裁シリーズも早く遊びたいなぁと刺激されました。そう思ってしまうくらい、この2作品の魅力をギュギュっと濃縮して黄金比率で作り上げられた、そんなコラボ作品でした。

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