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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 10/14号

米利下げには物価と雇用どちらを重視?
米労働省が10日発表した9月のCPI(消費者物価指数)は前年比2.4%上昇した。食品価格の上昇を背景に市場予想の2.3%を小幅上回った。
しかし、2021年2月以来約3年半ぶりの小幅な伸びにとどまったことで、米FRB(連邦準備理事会)は11月も利下げを継続する見通しだ。変動の大きい食品とエネルギー成分を除くコアCPIは、前年比3.3%上昇した。

市場予想は8月と同じ3.2%上昇だった。前月比では0.3%上昇し、伸びは8月と同じだった。市場予想は0.2%上昇。また同日発表の先週の新規失業保険申請数は前週比3万3000件増加し、25万8000件。2023年8月以来およそ1年ぶりの高水準となった。

翌11日、労働省が発表した9月のPPI(卸売物価指数、最終需要向け財・サービス)は前月比変わらず。8月は0.2%上昇で修正なし。前年比では1.8%上昇した。食品価格の上昇を背景に市場予想の1.6%上昇を上回ったものの、7カ月ぶりの小幅な伸びにとどまった。

この日の9月の米卸売物価指数の内容を受け、11月と12月のFOMC(連邦公開市場委員会)でそれぞれ25ベーシスポイント(bp)の利下げを実施するとの見方が維持された。

米雇用関連のデータとCPIやPPIなどのインフレデータのどちらがより重要か、全体として判断するのは難しい。しかし、今回はCPIだろう。CPIは予想を若干上回っており特にコアCPIが上昇した。

次回のFOMC(連邦公開市場委員会、11月6日~7日開催)会合までにデータがさらに発表されるが、今回の統計で0.50%でなく0.25%の利下げが適切だとの見方が強まってきている。

CPIと新規失業保険申請数の2つの米経済指標を受けて11日の東京外国為替市場の円相場は1ドル=148円台半ばで推移。米国で失業保険申請件数の急増を受けて米FRB(連邦準備制度理事会)が利下げを継続するとの見方からドルが売られた。その後はドルを買い戻す動きも見られ、もみ合いとなっている。11日のNY市場では149円台で推移。

接戦の米大統領選、「決まらない」リスクを警戒
一部では 米株式市場では、接戦となっている大統領選について、選挙結果が確定しなかったり、選挙結果に異議が唱えられるリスクがあることが株価の重石になるとの懸念が浮上している。

2020年の大統領選では、バイデン大統領に敗北したトランプ氏が選挙結果を覆そうとした経緯があり、市場関係者は今回も僅差になれば、選挙結果に異議が唱えられるリスクがあるとみている。議会選でも多くの選挙区が接戦となる可能性があり、不透明感が一段と高まりそうだ。

今回はかなりの接戦のため何らかのもめ事が起きる確率が平均よりも高くなると考える市場関係者が多くなっている。投票日から1─2日経っても誰が大統領になるか分からない事態になれば、市場は確実に嫌気する。

現時点では、大統領選の不透明感が続いているが、高値更新を続けるNY株式市場に水を差す展開とはなっていないようだ。
S&P500種は好調な米経済を背景に最高値を更新。年初からの上昇率は21%と、2年連続で2桁の上昇を記録する勢いにある。しかし、投資家が選挙のリスクを意識していないわけではない。
投資家の不安心理を示すボラティリティー・インデックス(VIX指数、別名恐怖指数)は10日20.9(11日は株価高値更新でも20.37)と、8月19日に記録した14.65から6ポイント上昇。これは通常、市場が混乱するリスクが中程度もしくは高いとの見方を反映している水準だ。市場関係者によると、VIX指数の上昇は11月の大統領選の不透明感によるものだと指摘している。

選挙結果が争われた場合、市場が混乱するのは投票日の数週間後になる可能性があるかもしれない。問題は選挙結果そのものより、むしろ、有権者の大半が選挙は無効だと考えるリスクだ。選挙結果が訴訟で争われた場合、恐らく株式市場で売りが膨らむことになると容易に想定できる。

トランプ氏は20年の大統領選結果を覆そうとしたが、市場はおおむね平静を保った。バイデン氏の勝利が正式に宣言されたのは投票日があった週の週末だったが、株価は週内、堅調に推移した。だが、今回は市場が冷静さを失うリスクがある。特に一方の政党が僅差の選挙結果に異議を唱え、同じ党の議員や激戦州の選挙管理当局がそうした動きに加わった場合は市場に動揺が広がる恐れがある。

2000年の大統領選では、共和党のジョージ・W・ブッシュ氏と民主党のアル・ゴア氏が接戦となり、フロリダ州の集計結果にゴア陣営が異議を唱え、結果が確定するまで1カ月以上かかった。この時は投票日から、ゴア氏が敗北を認めた12月中旬までS&P500種は5%下落。ハイテク株や経済全般に対する不安も株価の重石となった。2000年11─12月の同指数は7.6%値下がりしている。

大統領選の年は株価が上昇する傾向があるが、こうした不安定要素は先行きを曇らせる原因になりかねない。過去の結果を見ると、1952年以降、大統領選の年の11─12月はS&P500種が78%の確率で上昇。平均上昇率は3.3%となっている。

選挙結果が僅差になったり争われたりする場合に備え、公益株や金といった人気の高い資金の逃避先も検討すべきかもしれない。しかし、選挙結果が争われて株価の変動幅が大きくなったとしても、不透明感が後退すれば株価は落ち着くだろう。選挙は不透明感を生み出すが、最終的には選挙結果が不透明感を和らげる。結局のところ、選挙後は不透明感が払拭された時点で株価が上昇することになるだろう。

中国、最大42兆円規模の財政刺激策を発表か-投資家の期待高まる
世界2位の経済大国である中国が景気を下支えし、信頼性を高めるため、最大2兆元(約42兆円)規模の新たな財政刺激策を打ち出す可能性があると、投資家はみている。景気刺激策は12日にも藍仏安財政相の記者会見で公表される見込みで、国債の増発で財源を賄う公算が大きい。

特に不動産・インフラ投資を通じた負債を原動力とする拡大を長年続けてきた経済を政府が今後どのように導こうとしているのかは、財政パッケージの規模以上に支援の対象によって示されることになる。
景気刺激策は複数年にわたるもので、不動産投資主導の回復を助けるものではなく、家計を対象とするべきだ。重要なのは刺激策の規模よりも焦点だという意見が多くなっている。

既に中国は9月下旬に利下げのほか、不動産・株式市場への支援強化策を矢継ぎ早に打ち出している。しかし投資家の間では、エコノミストが不可欠と考える財政支援策が待望されている。

上海総合株価指数は9日に11営業日ぶりに下落し、その後は不安定な値動きが続いている。1週間の連休明けに大規模な景気刺激策が発表されなかったことで、失望が広がったためだ。このため、政府は政策を発表する前に、市場の動向を把握することが期待されている。市場の期待を高めたり、裏切ったりして市場センチメントに打撃を与えるような事態は避けるべきだ。

今回、新たな財政刺激策が12日に発表されなければ、市場は荒れるかもしれないが、刺激策は半年以内に示されると予想している。
中国はすでに先月下旬に金利引き下げや不動産・株式市場への支援強化策を矢継ぎ早に発表しているが、投資家は財政出動を強く求めている。財政支援が景気の持ち直しを左右すると考えているためだ。


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■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。

一般社団法人FLSG
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