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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 8/19号

比較的、真空地帯
下げ場面が急だったので、日経平均は3万6000~3万9000円ゾーンが比較的、真空地帯と思われる。為替で言えば、円安戻りの攻防は150円前後か。真空地帯で売り圧力が比較的薄いとしても、埋めるには、それなりの買いエネルギーを伴う必要がある。いわゆる待機勢が何処まで動けるかが焦点になろう。日経平均は先週4日間で3037円上昇し3万8千円まで真空地帯を駆け上がってきた。今週は3万7千円の値固めの時期になると思う。

日本時間15日夜、ドル円149円台、夜間日経平均先物3万7000円台後半に跳ね上がったのは、米7月小売売上高と見られる。前月比+1.0%と市場予想+0.3%を大きく上回った。一つの統計だけで・・と思うが、米景気後退懸念が後退、モルガン・スタンレーのエコノミストは、第3四半期個人消費予想を前年比+2.1%から+2.8%に引き上げ、GDP予想も+2.1%から+2.3%に引き上げた。

この日決算発表の小売最大手ウォールマートは第2四半期決算好調を受け、通期見通しを上方修正した。引き上げは今年2回目で、株価は6%超上伸し、年初来上昇率は30%を超えた。

8月10日までの1週間の新規失業保険申請件数は前週比7000件減少の22.7万件(市場予想23.5万件)と2週連続減少。一時は8月2日の雇用統計と合わせ、雇用急悪化懸念が材料視されたが、持ち直してきたことで、7月後半の雇用悪化はテキサス州などを襲ったハリケーンの影響が大きかったとの見方に変わった。

つれて、9月0.50%利下げ期待が後退、2年債利回りは4.1%台、10年債は3.9%台に上昇した。今週、恒例のジャクソンホール会合が開催予定(22日~24日)で、パウエルFRB議長の講演に関心が集まる流れだが、米景気に比較的強気の姿勢を示すものと思われる。
蛇足だが、23日日本の国会は閉会中審査を行う。植田日銀総裁は参考人として出席を求められ、各国中銀総裁が一堂に会するジャクソンホール会合に参加できない。鈴木財務相も参加予定はないと述べており、「国会がまた余計なことを」感がある。

また、4-6GDPは2期ぶりプラスとなったが、岸田首相が表明していた「秋の経済対策策定」は次期政権に委ねられ、衆院解散含みも踏まえると、年内は議論も対策もなしの公算が強まっている。日米のギャップ感に繋がらなければ良いが・・と言ったところか。

岸田首相 退陣へ 自民総裁選どうなる?動き本格化へ

岸田退陣、政治不透明感は強まる
岸田退陣に違和感はないが、発表タイミングは? 前例のない「巨大地震注意」が発令されているなかで、首相自らが無視する格好。週末に関東に台風接近で早くも厳戒態勢下にある。ヒロシマ8.6は重視するが、鎮魂の日の終戦記念日は無視する。あくまで個人的印象だが、「日本国を考えて」と言うより「自分の身の回り政治」を象徴する印象を受けた。

功罪半ばするであろうが、バイデンの言いなり、政策は官僚が出してくるもの、身近な者の重用などの評価を投影しているように見える。結局、バイデン撤退でもたなかった感が強い。なお、バイデン氏が褒めた岸田政策は、安全保障戦略、ウクライナ支援、日米韓協力が代表的。

最大の問題は、稀にみる自民党総裁選の混線。
先々週まで、側近が8月解散説を流しているとの噂があったが、麻生氏等との会談で、退陣に追い込まれたと見られる。一旦、決断すれば、閣僚や幹事長らに一日でも早く準備して貰いたいとの思いが、異例のタイミングでの発表になったと思われる。
14日の場中に伝わり、一時、為替、株式とも乱高下したが、ポスト岸田で利上げ政策が推進されるとの見方などは、一種の為にする説と思われる。米市場でも、岸田政策は継承されるとの見方で、政権交代のような波乱要因との見方はないようだ。年内解散・総選挙の見方が強まっているので、それを乗り切れる人材が新総裁候補となる。今現在の個人的な目線は菅(加藤勝信氏)対麻生(対トランプで高市氏を担げば)の構図。高市氏だと中国からの風当たりが強くなるかも知れない。

注目の米7月CPI(消費者物価指数)は前月比+0.2%、前年比+2.9%。前年比の3%割れは21年3月以来(コロナワクチンや本格的な経済対策前の局面)。ほぼ予想通りで、前日のPPI(卸売物価指数)ほどのインパクトはなかった。株式市場は売り買いマチマチだが、S&P500種は小幅ながら5連騰。VIX(恐怖)指数は16.19,順調に低下している。
焦点は9月利下げ幅。大雑把なイメージは、25bp(0.25%)が7割、50bp(0.50%)が3割程度の確率。雇用環境の悪化ペースがカギを握ると見られている。

米PPIに反応、動きは速い
先々週までの波乱を受け、今後の展開予想に関心が集まるなか、13日の米株式市場はナスダック+2.43%主導の強い戻りとなった。S&P500指数は4営業日で今年最大の上げ展開。

CPI発表の前哨戦となる7月PPI(卸売物価指数)が前月比+0.1%(前月、市場予想とも+0.2%)とインフレ沈静化を示し、9月利下げ期待を強めたことが契機。前年比では+2.2%、前月の+2.7%から低下した。財価格が前月比+0.6%と2ヵ月連続の下落から上昇に転じたものの、サービス価格が0.2%下落(前月+0.4%)し、抑制的となった。

インフレ沈静化は景気減速懸念と背中合わせだが、ホームセンター大手ホーム・デポが売上高見通しを下方修正、「消費者に先延ばしマインドが広がっている」としたことは響かなかった。株価は一時の下落から1.2%高で終了。市場の買い戻し圧力を示した可能性がある。

同様に、ハイテク大手株が牽引したが、グーグル(アルファベット)が13日、新製品発表会を行い、AIとの統合を深化させたスマホ「ピクセル9」最新シリーズなどを発表、安心感を与えた可能性がある。急伸はスターバックス。好成績経営者の起用を発表し、24.5%高の急伸。買い戻し相場を印象付ける。

短期売買の横行で市場の動きは速くなっているが、背後には「押し目買いの短い好機到来」とのラフなデッサンがある様だ。6月末での売り推奨を当てた米GSのルブナ―氏が「押し目買いの短い好機到来」と主張。9月中旬のFOMCでの利下げ期待に向かうことと、8-9月は米企業の自社株買いが活発な点を理由に挙げた。ただ、FOMCの結果がどうあれ、消化後は秋の軟化局面に向かい、「11月の大統領選結果が出るまで、明確なトレンドライン上昇はない」との見方。

需給関係の報道では、取り残された売り圧迫が未だ残っているとか、キャッシュポジションを高めているとか、慎重姿勢を伝える報道も多いが、米株主導の展開は変わらないと見られている。不安心理の収束度合いとして、VIX(恐怖)指数の低下度合いが注目される。米VIX(恐怖)指数は8月5日のピーク38.57から15.27に順調に低下、日経VI指数は5日の70.69から26.54まで急速に低下してきた。

中東、ウクライナ緊迫
日本株暴落の後も、酷暑、地震、台風と不安心理を高める要素が続いていたが、円キャリートレードの急手仕舞いは一旦終息、やや円安含みのドル円安定を睨みつつ、戻りを試す動きが想定される。
「巨大地震注意」の説明はないが、9日の神奈川西部震度5弱で、関東地方に緊急地震速報が鳴り、一気に緊張感が高まり、自粛ムードが広がった。同地域は関東大震災の震源地。

日向灘地震の解説として出ているのは京大防災研。宮崎観測所を持ち、この方面の解析を行っている。それによると、8日のM7.1地震で割れ残った領域が日向灘北東域にあり、再びM7級の地震が起こる可能性があるとの見解。1996年に10月M6.9,12月M6.7の地震が起こっており、2ヵ月程度は要注意としている。南海トラフ巨大地震を引き起こすリスクは「今のところ高くない」としている。

11日、イスラエル―米国の国防相電話会談で「イランが大規模攻撃を準備している兆候がある」と伝わり、米空母、原潜派遣で緊張感が高まった。パリ五輪終了を待っていたとの見方もある。12日、カービー戦略広報調整官が「早ければ今週にも」と発言し、一段と緊張感が高まっている。12日のイスラエル金融市場で、通貨シェケルが対ドルで1.5%安、テルアビブ証券取引所で株価は1%超の下落。

ウクライナ軍によるロシア越境攻撃が続いている。ロシアはクルスク州に続きベルゴロド州に住民避難指示を出した。ウクライナ軍司令官はクルスク州約1000平方kmを制圧としている。ロシアの後退は防衛体制の不備と制空権の無さが致命的と見られている。
12日、米と独仏英伊の5ヵ国首脳が電話協議。主に中東情勢を協議したようだが、形だけども”ガザ停戦”に持って行けるかが一つの焦点と思われる。ガザ停戦交渉は結局16日現在でまとまらず、今週再開で結論は持ち越された。


■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。

一般社団法人FLSG
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