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蛙の色は何色か

「私が呑んだくれて強暴するのは、ほとんど自己防衛からでした。昔から男にしては警戒されにくい体躯で無警戒に人が近づいてきました。それは手放しで助かると言えるものでなく、ある意味の期待だったのです。
 「この人間は無害で柔和な賢人である」
とでも言いたげな眼差しが、たまらなく恐ろしかったのです。だから私は身に合わぬほどの酒をかっくらって、私は危険である、と警戒色を発するのでした。根っこから育ちの悪い愚かな人間でしたから、その正体を明かされるのが恥ずかしくて、もっと変わった人間なのだと主張するのです。皆が艶やかな翠を湛えたアマガエルだとすれば私はウシガエルのような下品た田舎者でした。ならばせめて「私はヤドクガエルである」と暗穴の中から発してやれば、誰も近付くことはなく、近付かない理由も作れるのです。きっと周りも薄暗の奥に卑近な色を見たのでしょうが、あまりに声高に叫ぶものだから私がヤドクガエルだということにしてくれているのです。観衆に笑ってもらう道化なんて、滑稽なことこの上ないでしょうね。人様に迷惑をかけないよう生きるつもりが、気を遣わせて、体裁を保とうとするなんて。卑しい人間ですね。」

早口に言い終えた私が、さも俯瞰していますよ、なんて顔をして息を吸うとその人は不思議と上機嫌そうに頬杖を組み替えて

「そんなことないさ、君は賢いよ。」

とただの相槌を打った。
ああ、君に認めてもらいたいのに、また私は言い訳を長々と。自分を変える気なんてない癖に自分は間違っていると筋道立てて主張する。気障な例えまでしてみて、何をムキになっている。目の前の課題に1つも取りかからず、後ろを振り返っては何か考えているように上を向く。私はいつも持ち歩くリュックサックを無意味にまさぐって言った。

「ああそういえば、君と行きたいところがあるんだけど、どうかな。」

その人は瞬間目を大きく見開いたかと思うと猫みたいに目を細めた笑顔で呟いた。

「どうって。」

ああ、またこうやって僕は。

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