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マイ・フェバリット
私は一人でボーッとしたくなると、動物園の猿山に行くと決めている。
園内で売っている一つ百円の餌を買って、子猿めがけてヒョイと放り投げるが、横から大人の猿が奪っていくのだから困ったものである。
どうも様子を見ていると、いつも決まった猿ばかり餌にありついているようだ。
私は、隅っこにいる小さな小さな猿に、どうにかして餌をあげたいと思った。
そして、コントロールが今一つではあるが、「あの子猿に届け」と強く念じ力一杯、餌を投げてやったのだ。
すると、あろうことか子猿は、伸ばしたその両手でしっかりとキャッチしたではないか。
何か満たされた心地がして、ふっと肩の力が抜けた。
空の色も幾分さっきまでとは違って見えた。
こうして私は、猿山に来ると、日々のあれこれを忘れ、新たな気持ちで岐路につくのだった。