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#4 ニューヨークのガーデニング、今昔。---過去30年を振り返って

こんにちは。

今日は、アメリカ(特にニューヨーク市、および近郊)のガーデニングが、この30年、どんな風に移り変わってきたかをざっと書いてみます。
仕事を通しての、あくまでも一個人としての経験の部分が多く、かなり独断的な感じになると思います。
いくつかの写真は昔のスライドをスキャンしたため、古っぽい画像です。

ニューヨーク市、および近郊のガーデニングを大きく分けると、次のようになります。

1.  1990年代はイギリスのフラワーガーデンへの憧れからニューヨーク風スタイルの始まり。絵のようなガーデンづくり。緑のニューヨークへ。

2. 2000年代は、コマーシャル化と集客が上手になって、見た目が重要視。新しい品種。そしてまさかの野菜作りブーム再到来。

3. 2010年代は、エコ、オーガニック、環境への配慮。新しいガーデニングのスタイル。ナチュラルガーデン。カットフラワーガーデンが、新しい切り口で復活、一大旋風。

この区分を頭に入れて、全体の大まかな流れをお話していきますね。
それぞれの細かい部分は、少しずつ触れていきたいと思っています。


「ガーデニングの移り変わり」のまとめ

1.  イギリスのガーデンのイメージからスタート

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(↑ 在りし日のワールド・トレードセンターをバックに、ワグナーパーク Wagner Park)

30年前、1990年代は、イギリスのガーデンをイメージしたデザインが主流でしたが、徐々にニューヨークの気候と雰囲気に溶け込んだ、ちょっとシンプルでクールなものになっていきました。

ガーデンのデザインは、園芸もしくは植物の専門家、建築家、ランドスケープアーキテクト(景観、ハードスケープが中心)によってデザインされることが多かったのですが、この頃からガーデンデザイナーと呼ばれる、植栽の専門家のデザインが主流になってきました。

1990年代にカリスマ的な存在だった、数人のデザイナー(別の機会にお話しますね)によって、ニューヨークのガーデンスタイルが確立したと言ってもいいくらいです。

2. 荒廃していた公園や土地が、パーク、ガーデンとして復活


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(↑ 映画「ユー・ガット・メール (You've Got Mail)」のラストシーンに登場したコミュニティガーデン)

ニューヨーク市内の、荒廃して、見放されていた公園や土地が次々にパーク、ガーデンとして復活し、ニューヨーカーに憩いの場として利用されるようになりました。
驚くべきは、持ち主はニューヨーク市であっても、経営、運営は第三セクターということです。
多くの収入が寄付や共同出資金、スポンサーシップなどでまかなわれているんです。恐るべし、ニューヨーク。

開発は次々と進められ、30年前は、人っ子一人寄り付かない場所だったところに多くの人が憩いを求めて集まっています。
中でも最近よく耳にされている公園は、ハイ・ライン(The High Line)と呼ばれる古い高架線を再利用した空中庭園でしょう。

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(↑ ドラッグディーラーがいるような立入禁止区域から
1993年にリ・オープンし、市民の憩いの場となったブライアント・パーク)


3. 地球温暖化に伴って、植物のセレクションにも変化が

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(↑ トロピカルプランツやオーナメンタル・グラスの目立つ夏花壇。NY植物園)

ガーデニングをする上で、イギリスとニューヨークの大きな違い、それは光の強さと夏の蒸し暑さです。
ニューヨークも年々、蒸し暑い日が増え、以前使われていた草花が育ちにくい状況になってきました。
徐々に「ゾーン7より寒いところしか育たない」植物が姿を消しつつあります。

それなら発想の転換で、南の植物であれば育つのでは、ということです。
今まで、トロピカルプランツとして、温室など室内で育てられていたものを夏の間外に出して、もしくは一年草扱いにして使おうというわけです。

とはいえ、カリフォルニアのようにドライではないので、多肉植物やサボテンが育つ環境ともまた違うのです。

オーナメンタル・グラス (Ornamental grasses)と呼ばれる、観賞用のイネ科の植物なども容易に育つ植物として多用され始めましたが、のちにススキのようなアグレッシブに育ちすぎる植物の使用は減っていきました。

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(↑ 葉ものだけで絵になるような組み合わせ)


4. ルーフトップガーデン(屋上庭園)も

アパートやビルディングの屋上に植物を植えることも、ニューヨーク市の夏の気温を下げるのに効果が認められたために見直され、多くのルーフトップガーデンができました。多くのものは、ペントハウス(最上階)に住む個人のお庭ですが、話題を呼んだのは、ブルックリンの屋上農園、イーグル・ストリート・ルーフトップ・ファーム(Eagle Street Rooftop Farm)です。上から見ると畑のようです。

5. オーガニック、エコブーム到来。 野菜作りが再登場。

2000年に入ると、次第に、花の種の部分が分厚かったカタログが、徐々に野菜中心に変わってきました。

オーガニック(有機栽培)、環境について考える動きが出てきたのと同時に野菜作りも復活です。特に若い人、都会や郊外に住む人が始める アーバン・ファーミング(urban farming)といって、大規模農家ではないところがニューヨークエリアの特徴です。
ニューヨーク市が、使用できる農薬をかなり厳しく制限たのもこの頃です。

ファーマーズ・マーケット(近郊農家が自分の育てたものを持ってくる青空市)もニューヨーカーのサポートを得て拡大していきました。

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(↑ 最も規模が大きいユニオンスクエアのマーケット)

6. ネイティブ・プランツ復活

環境問題がクロース・アップされるにつれ、野菜だけでなく、庭の植物も見直されてきました。
外来種よりも在来種。それも身近に育っている自生の植物=ネイティブ・プランツ(Native Plants)に注目です。
そうすれば、気候に強く、ワイルドライフ、野生動物たちのエサにもなってうまく自然が循環して行く、と考えたのです。

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(↑ 日陰の花壇。ネイティブ・プランツの組み合わせ)

7. メドウスタイル(草原風)

ネイティブ・プランツを使うことでデザインが自然の風景に近いものになってきます。
特に話題を呼んだのは、メドウ・スタイル (Meadow Style)。
草原のような感じです。
アメリカにも大御所のような方がいますが、世界的に有名なのは、オランダ人のガーデンデザイナー、ピエット・ウードーフ(Piet Oudolf)氏でしょう。
このメドウスタイルに使われる植物でアメリカのネイティブ・プランツ、エキネイシャ(Echinacea)などが、ヨーロッパにたくさん渡り、使われるようになったみたいです。
前述のハイラインの植栽も、ウードーフ氏が手がけ、多くのネイティブ・プランツを使っています。

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(↑ 秋のハイラインの様子。メドウスタイル)

8. 現在、カットフラワーが大ヒット

そして今は、カット・フラワーブーム真っ盛りです。
フラワーアレンジメントに使うお花を育てるんです。
インスタ映え、というのもあるでしょう。

西海岸、ワシントン州に住むエリン・ベンザケイン(Erin Benzakein)さんが経営するフローレット・フラワーファーム (Floret Flower Farm)が、世界中で注目の的になっています。つい最近2冊目の本を出し、いきなりニューヨークタイムスのベストセラー入りを果たしました。インスタグラム(@floretflower)でも65万人のフォロワー数。
ローカルで育った切り花に目を向けよう、という運動です。

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(↑ エリン・ベンザケインさんの最初に出版した本、「Cut Flower Garden」)

フローレット・フラワーファームのエリンさんが紹介する花はどれも色合いが美しいんです。アレンジメントも今までにない組み合わせが可能になります。ダリアにしても、ラナンキュラスにしても、うっとりです。
ということで、今の主流の色は、アンティークシェイドのようにくすんだ色合いだったり、微妙な色が混ざり合った絵画のようなパステルカラー。

さて、これからどこへ行くのでしょうね。


今日も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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