#15 (blog クリップ) フラワー・デザインに使える、美味しいエディブル・プランツ(その2)
前回に引き続き、フラワーデザインに使える、エディブル・プランツ(edible 食用、食用可能な植物)を、アメリカ、ワシントン州にあるフローレット・フラワー・ファーム(floret flower farm)のオーナー、エリン・ベンザケイン(Erin Benzakein) さんのブログから、要約してお届けします。
今回は、誰もがエディブル、の後に続けて言いたくなる、「エディブル・フラワー」と、「パンプキン」をフラワーデザインに使うための、エリンさんおすすめの品種のご紹介です。
日本でも、似たような感覚で、手に入るものから取り入れてみると、アイデアが広がっていくかもしれません。
(はじめに 注意点)
(注1)エリンさんのウェブサイトでの育て方は、冬は比較的温暖で、夏は涼しめのエリンさんの農場を基準にしていますので、混乱を避けるのと、長くなるためとで、今回は省略しています。
紹介されている多くの植物は、「暑さを好むので、早く植え過ぎないよう、地面が温まるのを待ってから直播き(そうでない場合もあります)、もしくは4週間から8週間前に、室内で種子を蒔いて、苗を植え付けるように」と書かれています。
日本でも使えそうなポイントについては、書き足してあります。
(注2)前回と今回、2回にわたるブログクリップに出てくるエディブル・プランツは、カットフラワー・ファーマーの側から見た使い方です。
収穫時期は、フラワーデザインに使うため、ということを念頭において、読んでください。
エディブル・フラワーは、食べる場合は、無農薬、またはそれに準じて、育ててくださいね。
(注3)エアルーム (Heirloom)という言葉について。エアルームは、古くから受け継がれて育てられている固定種(F1ではない)で、その種子を自家採種したものを使っているため、種子の入手先によって、若干の差異が出てきます。
1. エディブル・フラワー をアレンジメントに使うとユニークなデザインと季節感が出せます
(ファーマーズ・マーケットで売られていたエディブル・フラワー)
思った以上にたくさんあるのが、エディブル・フラワー。
料理の上に散らして、見た目の美しさ、食感、大地のよう、とも、ナッツのようなともいえる花の味を楽しむことができます。
早速、エディブル・フラワーにはどんな花があるか、そしてそれをどんな風にフラワーデザインに使うか、エリンさんおすすめの品種を見ていくことにしましょう。
(品種の紹介に使われている植物の写真は、フローレットファームのウェブサイトのものです。All photo credits for the plants used below to show the varieties belong to floretflowers.com )
(1) 金蓮花・ナスタチューム (Nasturtium)
アメリカ読みは「ナスターシャム」。
ピリッとしたコショウのような味は、サラダに散らしても美しいです。
ケーキやカップケーキのデコレーションにも。
育てる時は、ツルが覆いかぶさるように支柱を立ててください。
フラワーデザイン用の使い方
葉は、非常に長持ちします。
スケールの大きいアレンジメントにも、面白くて、動きのある表現を加えることができます。
収穫
お料理用には、朝涼しいうちか、使う直前に花を切り、ビニール袋に入れて、冷蔵庫で保管すれば、2、3時間は持ちます。
アレンジ用として長持ちさせるためには、花が開く寸前に収穫。
葉を使う場合、1枚ずつ、か、ツルを丸ごとか。いずれも、触った時に、革のようにしっかり固い感触になってから摘むこと。
アレンジの寿命は、7−10日。延命保存剤を入れるともう少し長くなります。
おすすめの品種
1. 'Gleam Salmon (グリーム・サーモン)'
エリンさんがずっと探し続けていた色と姿がこれ。
ピーチ色、パステル系の品種で、垂れ下がるタイプのもの。
クリームがかった、サーモンのような桃色の花が夏中咲き続けます。
(2) 矢車草・バチェラーズ・ボタン (一般名:Bachelor's buttons)
昔からおなじみの矢車草。学名(Centaurea cyanus)よりも、バチェラーズ・ボタンで知られています。育てるのも簡単で、ポリネーターたちも大好き。
明るくカラフルな花びらは、サラダや卵料理に。
咲いた花を摘み続ければ、長く楽しむことができます。
また、長い期間、収穫できるようにするには、1ヶ月間隔をあけ、2回種子を蒔くとよいでしょう。
収穫
花が半分くらい開いた頃、もしくは、枝全体の蕾のほとんどが色づいた頃。
おすすめの品種
1. 'Classic Fantastic (クラッシック・ファンタスティック)'
サファイア・ブルー、ライトブルー、真夜中の空を思わせる寒色系ブルーの2色混じり、などのミックス。
2. 'Classic Romantic (クラッシック・ロマンティック)'
薄いほお紅色、ピンク、白、それに2色混じり、のミックス。
ロマンチックなブーケや、ウエディングに。
(3) キンセンカ・カレンデュラ (Calendula)
カレンデュラの花びらは、キッシュやフリッターなどの卵料理、サラダに散らしたり、水の中に入れて氷を作って、夏のドリンクに浮かべても。
よく乾燥させることができれば、冬にも使うことができます。
収穫
花が半分開いた頃。葉っぱがベタベタするので、手袋をして。
切り花としての寿命は、6〜7日くらい。
おすすめの品種
1. 'Ivory Princess (アイボリー・プリンセス)'
大きな花の色合いは、クリーム色と黄色の間の色味で、まるでアヒルの赤ちゃんの羽毛のようです。
花の中心は、焦げ茶色。花びらの先に少しだけ茶色の線が入っていて、それが波立ってレースみたいな効果を与えています。
この世のものとは思えない美しさの、この品種は、花束やウエディングに。
2. 'Zeolights (ジオライツ)'
庭に植えても一目でわかる、濃い褐色の目(中心)とアプリコット・ピーチ色の花びら。花びらの裏側は、少し色あせたような赤錆色。
花つきがよく、背が高くて丈夫な茎は、ファーマーズ・マーケットの花束用、大きなアレンジメントにピッタリ。
暖かい桃色の花は、花瓶に活けると、そこから光が放たれているようです。
(4) マリーゴールド (Marigold)
学名(Tagetes)よりも、断然、マリーゴールドとして親しまれています。
一度、サラダに花びらを散らしてみることをおすすめします。
サフランの代わりとして、オムレツやお米料理、スープに使えます。
フラワーデザイン用の使い方
花束に使う時は、その枝の3分の1くらいの花が半分くらい開いた頃に収穫。
切り花の寿命は、7−10日くらい。
おすすめの品種
今回のおすすめは、背丈が75cmくらいと高くて、一円玉くらいの大きさの輝く光にも似た花を山ほどつけてくれる2つの品種。
羽のような切れ込みの入った、軽やかな葉っぱは、しおれない上に香りも素敵。
夏の花束には、欠かせない品種です。
1. 'Tangerine Gem (タンジェリーン・ジェム)'
ミカン色の花びらと、濃いめのオレンジ色の中心。
2. 'Starfire Mix (スターファイアー・ミックス)'
赤、オレンジ、金色で、それぞれが、少しずつ異なる色合いの混合種子。
(5) パンジー&ヴィオラ (Pansies and Violas)
(上の2つの写真:フローレットファームより)
老いも若きもパンジーは、みんな大好き。
パンジーの花びら、ヴィオラの花は、サラダや料理に彩りを添えます。
ヴィオラの花を砂糖菓子みたいにもできるので、面倒だけど、やってみたいと思われる方はぜひトライしてみて。
収穫
花が開き始めた頃。
おすすめの品種
エリンさんは、切り花としてパンジー・ヴィオラを使うことを率先してプロモートしています。おそらく数少ない、初春の花として重要なのでしょう。
「日本には素晴らしい品種がたくさんあるので試してみたい」、と話していたので、日本ではおなじみの品種も入っています。
エリンさんのサイトでは、14種類もの種子を販売していますが、その中でもおすすめがこちら。
色の表現が、とても細かくなされているのにもご注目ください。
育て方には、詳しく書かれていませんが、付け加えるとすると、「やや密に植えて、花茎を伸ばすように」、と以前、エリンさんは話していました。
1. 'Frizzle Sizzle Yellow Blue Swirl (フリズル・シズル・イエロー・ブルー・スウィール)
花が咲き進むに連れ、だんだんと花の色が濃くなっていきます。花は、スモーキーなラベンダーブルーと金色で、顔に見える中心の部分がチョコレート色。
こんな色のパンジーは今までにみたことがありません。
2. 'Envy (エンヴィ)'
チョコレート色から、メタリック系のラベンダー色、緑色が入った黄色、と色幅が広い、注目の新品種。
香りが強く、セピア色のトーンに塗られたみたいで、まとめて束にすると見事。
茎の外に向かって花がついているので、花が潰れることなく、アレンジメントが仕上がります。
3. 'Rococo Frill Mix (ロココ・フリル・ミックス)'
試作した中で、一番茎が丈夫な品種の一つで、ほのかに香る中輪。
黄色、ベルベットっぽい紫、ラベンダー、褐色の花びらには、筋が入って見えます。ひらひらとした花びらの先は薄めの色になってレースの縁かがりのよう。
4. 'Aalsmeer King Size Mix (アールスミーア・キングサイズ・ミックス)'
ゴールド、クランベリー、ラベンダー、二色混合、のミックスで、’ロココ・ミックス’ に似ています。顔にあたる花の中心部が、チョウチョのように見えて、個性的なアレンジメントを作ることができます。
5. Viola 'Gem Pink Antique (ジェム・ピンク・アンティーク)'
鉢植えにしても、庭に植えても可愛いこのヴィオラは、グループにして庭に植えると見映えがします。
一株でも色のバリエーションを楽しめます。
最初は、すみれ色から紫色。少しずつ藤色に変わり、
最後には、ほんの少し、ターコイズ色がかかってきます。
まっすぐに育つので、小さなブーケにはもってこいです。
2. オーナメンタル(観賞用)スクワッシュ(ウリ)とパンプキン(西洋カボチャ)は、置くだけで存在感。 そして食べても美味しい。
エリンさんとご主人が家を買った時、一番最初に植えたのが、冬用のウリ(ウインター・スクワッシュ、パンプキン)だそうです。
飾る方がメインになるものと、食べるのがメインになるものがありますが、
基本は食べられる、と言えます。
切るのに、大きなナタやノコギリが必要かもしれませんけれどね。
日本のホクホクのカボチャは、アメリカでは、「カボチャ・パンプキン」、と呼ばれています。
アメリカ人の言う、スクワッシュとパンプキンはどちらもほぼ同じような味と質感です。ちょっと水っぽい感じです。
ここで使われているものの多くは夏の終わりから秋にかけて収穫されるものです。
収穫
完全に熟してから、首(果実のヘタから出ている、へその緒のような部分)を7〜10cm程度つけて切り離します。
すぐに使わない場合は、暖かくて乾燥した場所に1、2週間置いて保存処理をしておくとよいでしょう。
おすすめの品種
エリンさんがウェブショップで販売する13種類のスクワッシュは、どれもエアルーム(Heirloom; 昔から、世代を超えて受け継がれてきた、自家採種の種子から育てられたもの)。その中からお気に入りをいくつかあげてあります。
1. 'Rouge Vif D'Etampes (ルージュ・ヴィフ・デタンプ)'
燃えるようなオレンジ色のフランスの品種。
シンデレラのお話の中の、馬車になったパンプキンとしても知られています。
主に飾り用ですが、マイルドな味わいがあって、スープに使えます。
2. 'Long Island Cheese(ロングアイランド・チーズ)'
温かみのあるピーチ色のパンプキン。平べったい形がチーズの塊のようです。
甘い風味で知られていて、パンプキンパイなどのレシピに選ぶととびきり上等のデザートに。長期保存もできます。
3. 'Zapallo Plomo(サパーリョ・プローモ)'
中くらいの大きさで、彫りの深い丸型。
色は、グレーがかった緑色にポツポツと肌色の斑点、そして長い首。
その色合いの美しさだけでなく、味も良い上、長期保存も可能。
4. 'Galeux d'Eysines (ガルー・デジーン)'
今まで馴染みがなかった、フランスのエアルーム品種。
暖かい肌色の皮の表面にピーナツの粒がポツポツとくっついたように見えます。
この見た目は、好きか嫌いか、意見が分かれるところですが、
エリンさんは、好きに一票。
ベーキングやスープにしても美味しい。
3. 追加:ラズベリーの葉。夏の葉ものには、絶対欠かせません
ラズベリーほど何役もこなしてくれる植物は、多くはありません。
数年前、花束に入れるようになってからは、いつもエリンさんのお気に入り。
広い地域で育ち、春の終わりから夏、秋にかけての長い期間、葉を利用することができます。
夏に実がなる昔からあるタイプ、(例えば 'Tulameen' タレミーン’)だと、3、4週間もの間、その実を使ってアレンジができます。
それに比べて、長い期間実がつく、'Summit (サミット)’ や金色の実がなる種類では、実がなった枝を長期にわたって使うことができる上に、冬は、地面からバッサリ切れるのでお手入れも楽。夏に実がなるタイプよりも、丈夫で育てやすいです。
3. まとめ
2回にわたり、エディブル・プランツをフラワーデザインに用いるアイデアをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
今回は、食用に使われている「フラワー」と「パンプキン」でした。
食べるだけであれば、もっとたくさんお花もあると思いますが、アレンジメントなどに使うものを、生産する、ということになると、エリンさんのセレクションは、参考になると思います。
エディブル・プランツをフラワーデザインにするためには、茎の強さ、育てやすさ、アレンジメントとしての寿命、特徴のある色・形、他の花材との組み合わせ、などを考慮に入れることが大切です。
どれも聞き慣れた野菜、花ですが、エリンさんのマジックで、素敵な花材に早変わり。
今回もご覧いただきまして、ありがとうございました。
サポートありがとうございます。