# 10 (blog クリップ) 魅惑の「コスモス」をファッションショー風に見てみましょう
こんにちは。
今回は、「#5 ポピー入門」でご紹介した、アメリカ、ワシントン州にある、「フローレット・フラワー・ファーム (Floret Flower Farm)」のエリン・ベンザケインさん(Erin Benzakein。以下、エリンさん)のブログから、コスモスの魅力についてのご紹介です。
「コスモス」、と聞いて、日本の多くの方は、山口百恵の「秋桜」、秋に咲く花、群生したコスモス畑、などを思い浮かべるのでは、と思います。
日本で販売されている種子のカタログを見ると、白、薄いピンク、濃いピンク、濃い黄色とオレンジ、で一重咲き、が中心です。
以前、日本の種苗会社の方からお話を伺った時、「丈夫であって、背丈が伸びないもの」を中心にした品揃えを されているようでしたが、おそらく手がかからず、育てやすいコスモスの需要が多いのでしょう。
エリンさんは、ご自分でコスモスを切り花として栽培すると同時に、ウェブサイトで、コスモスの種子も販売しています。
その種類は、12品種、色別などを含めると、合計16種類にのぼります。
それでは、エリンさんのガイドによる、魅惑の「コスモス」ファッションショー、ご一緒に見ながら、色や形のトレンドを発見していきましょう。
(photo credit: 以下の写真で、商品名が入っているもの、エリンさんがコスモスの花を抱えているもの、等は、すべてエリンさんのウェブショップのものを使わせて頂いております)
1. ブーケに映える「八重咲き」
ふわふわとした八重咲きの花は、ブーケにすると豪華に見えます。
’ダブル・クリック・シリーズ’は、花色が豊富。
'ダブル・クリック・ミックス' ('Double Click Mix')
雪のような真っ白、鮮やかなクランベリー色、ローズ色がかった藤色、柔らかい極薄ピンク、の花色のミックス。
単色で売られているものの中で、特に(エリンさんが)好きなのは、
'ダブル・クリック・スノー・パフ' ('Snow Puff')、
'ダブル・クリック・クランベリーズ'('Cranberries')
'ダブル・クリック・バイカラー・ローズ' ('Bicolor Rose')
2. やっぱり「白」
純白の白いコスモスは、カントリー風の可愛いイメージには欠かせません。
その白いコスモスの中で、(エリンさんが)好きな2品種。
'ピュリティ' ('Purity')
花つきが良く、一重で、まるで野原に咲いているようです。
'プシュケー・ホワイト' ('Psyche White' 読みは、"サイキー")
大きな純白の花は、一重だったり、半二重だったり。
小さなリングのような花びらが、中心にぐるっとついています。
波打つような花弁は、雪の結晶がそよ風に踊っているかのようです。
3. 「妖精のよう」にロマンチックなニュー・フェイス
新たにご紹介するのは、バレエ「くるみ割り人形」に出てくる「金平糖の精(アメリカでは、シュガー・プラムの精)」を思い出させるような品種です。
'カップケーキ・ブラッシュ' ('Cupcake Blush')
花びらが、くっついて、ティーカップのようになっている、極薄のピンク色。
花は、手のひらサイズ、と大きく、花びらの端は、ピンキングばさみでカットしたようにギザギザ。
一重と半二重、単色か、若干刷け毛目が入ったものが混ざっています。
ウエディングの場面では、絶対に必要な品種です!
'カップケーキ・ホワイト' ('Cupcake White')
先ほどの'カップケーキ・ブラッシュ'の姉妹版が、こちらの純白バージョン。
花の大きさはもちろん、いろんなアレンジメントで活躍してくれる品種です。
4. 「ディープで、リッチ」な色
深くて濃い色(ディープでリッチな色)、ドラマチックな色をお好みのあなたには、こちらで決まり。もうこれ以上探す必要はありませんよ。
' ル(r)ーベンザ' ('Rubenza')
鮮やかな色のグラデーションが、珍しい品種。
一重咲きのこの花は、咲き始めは、深いルビー色。
咲き進むにつれ、次第に、くすんだローズ色、テラコッタ色(赤褐色)になって行きます。
このように色が変化していくのは、この’ルーベンザ’だけ。
'ヴェルゥエット' ('Velouette')
すでに(エリンさんの)ファームで、またたく間に人気を獲得したのが、この'ヴェルゥエット’。
花は、深みのあるマホガニー色に白のストライプ。
背丈があって、次々と花をつける、ドラマチックなこの品種、腕いっぱいに抱えたブーケにしても素敵。
5. はっとする、「目新しい色」、登場
草丈が、カットフラワー用には短めなのですが、それでも捨てがたい特別なこの色合い。
'ザンソ(th)ゥス' ( 'Xanthos')
優しい薄いイエローの花は、グリーンのトーンを含んでいます。花びらのふちはギザギザして羽のよう。
波打った花の内側は、立て襟のような小さな花びらがあってその根元は、薄い色。
花の中心は、濃い黄色の瞳です。
'アプリコット・レモネード' ('Apricot Lemonade')
「こんなコスモス、見たことない」、と言えるほどの美しさ。
この色合いは、(以前のポッドキャストでも話題に出ました)「ディスタント・ドラムス ('Distant Drums')」というバラを思わせる、水彩画のよう。
まず、ソフトなアプリコット色の花弁が、裏側にくすんだラベンダー色を伴って開き始め、最後にはバターのような黄色になっていくんです。
同じ品種でも、出てくる色に差があって、花の中心近くにぐるっとモーブ色のリングができるものもあります。
花びらと花びらの間に隙間があるので、ピンウィール(風車)のような印象を受けます。花びらのふちのギザギザ同士を、二つ合わせると一枚についだ板に見えそうです。
イベント的なもののアレンジメントには、絶対不可欠です。
6. ガーデンにも、アレンジメントにもお役立ち
お庭でも、アレンジメントでも、普通とは一味違った、ワクワク感を得られる、パフォーマーをお探しでしたら、こちらのコスモスをどうぞ。
'デイドリーム' ('Daydream')
とびきり薄いピンク色に、花の中心近くは濃いローズ色。
ボーダー花壇のデザインの中に植えても人目を引きますし、カティング・ガーデン(cutting garden=切り花用に一種類ずつ区切って植えられたガーデン)でも可愛らしい。
何と言っても一番の魅力は、(エリンさんが)育てている品種の中では、「一番暑さに強いこと」です。
'ゼニア' ('Xsenia')
まだ(エレンさんの)農場でも育てて間もない品種ですが、すでにスタッフの間でも人気になっています。
花は、早咲きで、光沢を帯びたようなマジェンタ、紫、ラズベリー系の色合いから、咲き進むにつれ、アプリコットの色味を帯びていきます。
色の出る幅がカメレオンのよう。多くの色のアレンジメントに広く使えます。
花の大きさは、他のコスモスに比べて小さめ(中輪)ですが、強く、真っ直ぐな茎につく花はとても丈夫です。
7. やはり「定番」は欠かせない
最後に、しっかりとコスモスとしての役割を果たしてくれている、ピンク系の2品種を紹介しておきましょう。
'シーシェルズ・ミックス' ('Seashells Mix')
信頼の美しさ。
大きくて目立つ花弁は、縦にウネが入って、貝殻のような管状の形をしています。
色はパステル系のミックス(ピンク、ローズ、ホワイト、カーマインレッド、そして時々バイカラー)です。
’ロ(r)ゥゼッタ' ('Rosetta')
一番最後になりましたが、アレンジメントに欠かせない品種で、ひとまとめで束にすると見栄えがします。
花は、半二重咲で、ヒラヒラしたペチコートみたいです。
「ロゥゼッタ」の色合いは、ソフトピンク、ブラッシュ(ごく薄いピンク)、ローズ。そして花びら一枚、一枚がまるで手描きのようです。
コスモスを種子から育てる
外に植えるのは、遅霜の心配がなくなってから
コスモスは、種子から簡単に育てることができます。
発芽まで1週間、花が咲くまで3ヶ月程度。
直接、戸外の、育てる場所(畑、花壇)に種子を蒔くこともできますし、植え付け予定日から逆算して4週間ほど前に室内でトレイなどに種子を蒔いて育てることもできます。
エリンさんの住んでいる地域では、遅霜の恐れがある最終日が4月20日頃なので、外に植えるのは、それ以降、土がよく温まってから。
早く植えてもあまりメリットはないようです。
苗が若い間は、柔らかい芽を求めてナメクジがやってくるので注意しましょう。
時期を4週間ずらせて2回蒔くと花が長く楽しめる
コスモスは一株で長い間花を楽しめますが、もっと長く、カットフラワーとしてのクオリティーをキープするため、となると最初に種子を蒔いてから、4週間後にもう一度蒔いてオーバーラップさせ、花の期間を長くする方法がエリンさんのおすすめです。
苗を育てる間のポイントは摘心と支柱立て
苗の植え付け、エリンさんは、大きく広がることを想定して30〜45cmくらいの間隔をあけて植え付けます。
苗の高さが、20〜30cmくらいの時、先端から7.5〜10cmくらい下の部分で、ちょうど一対の葉の上になるあたりをよく切れるハサミでカット(摘心)します。
そうすることで、その下の脇芽が伸びてきて、大きく茂るようになります。
まだ大きくならないうちに 早めに支柱を立てるのは、とても重要なポイント。
一株ずつではなく、ひと枠が10cm四方の網目のネット(えんどう豆などを育てる時に使うネット)を地面と平行に高さ、30〜50cmくらいのところに張っておくと簡単です。
ガーデンで、花を長持ちさせるコツは、種子ができる前に花を摘んでしまうこと。栄養がいつまでも花の方にいくからです。
アレンジメント用に 花を収穫する時期は、蕾の頃
コスモスの花一輪ずつの寿命は4〜6日と、決して長持ちする、とは言えませんが、一つの茎には複数の蕾がついていますから、次々と開いて、1週間は楽しむことができるでしょう。
生花として長く花を楽しむための、摘み取るタイミングとしては、蕾に色がついたけれども、まだ開いてない状態。
虫が受粉にやってきていない分、2、3日長く持たせることができます。
(貸し農園で育てたコスモス)
まとめ
育てるのも簡単で、長く花を楽しめるコスモス。
ご自宅のお庭で楽しむのはもちろんのこと、フラワー・アレンジメントにも重宝がられています。
エリンさんの選ぶコスモスは、色と形のセレクションが卓越しており、その花の美しさを表現するエリンさんの言葉も魅力的。
アメリカのガーデナーたちにとって、見慣れた「コスモス」に新風を吹き込んでくれています。
「ほんの少しの時間とガーデンスペースで、あなたのお家に元気一杯のコスモスの花を夏中飾ることができますよ」と、エリンさんは、結んでいます。
残念ながら、エリンさんは、種子を日本へ輸出していないので、日本で入手できる、似たようなものを探すか、早く日本でも入手できるように祈るしかありません。
また、日本の気候でどこまで、うまく育つかも、わかりません。
でも、トライする価値は大いにあると、思っています。
(’ディスタント・ドラムス’のバラの花びらとコスモス)
追記(個人の記録)
私は、昨年滞米中、フローレット・ファームから種子を購入し、ニューヨークで、アメリカ農務省の検査、成田空港での検疫を通って持ち込んで(長い道のりでした)育ててみましたが、うまく育てることができませんでした。
蒔くタイミングが早すぎたのかもしれません。
その後、日本で、品種名のない、固定種の種子を購入して8月すぎに蒔きましたが、背丈が伸び過ぎることなく、無事に秋に開花し、11月いっぱい楽しめました。
苗から購入した’ダブル・クリック’は、うどん粉病にかかって弱かったです。
これからも色々試してみたいと思っています。
個人的には、ニューヨークの光を浴びて綺麗に咲いていた’ル(r)ーベンザ’が私のお気に入りです。
今日も最後までご覧いただき、ありがとうございました。
注:植物の読み方は、アメリカ風に発音する英語になっています(#2参照)ので、日本での品種名と若干異なる場合があります。