原田マハさんの「黒い絵」を読みました
お久しぶりです。おはなです。
今回は読んだ本の話について、Xの140字では全く足りなかったのでここをお借りしてまとめておこうかと思った所存です。
私は大学生の時に「楽園のカンヴァス」を読んだ時から、もうマハさんのお話にぞっこんでして、「サロメ」「たゆたえども沈まず」「本日は、お日柄もよく」等もう好きな本を上げ始めたらキリがないくらい好きです。
マハさんのおかげで私は美術館の楽しみ方を知り、ゴッホに魅せられて人生がより豊かになりました。
そして今回の「黒い絵」。
帯に大きく『禁断の書』と描かれていて、確実に明るい話や希望の話ではないことがわかります。基本はハピエン厨な私ですが、たまにそういう陰のある話を読みたくなることももちろんあります。そして、マハさんの書かれる話で陰が濃い「サロメ」が群を抜いて好きなので、非常に期待しながら読みました。
収録されているのは6作品です。私は全て初読でした。
まず一作目『深海魚』
主人公である女子高生、真央は押入れに逃げ場をつくりそこを『海の底』と呼びます。一人で学校にも家族にも邪魔をされないその場所は、彼女にとって聖地であり、聖地から一番かけ離れた欲望を満たす場所でもありました。
そこに唯一立入が許されるようになる流花との再会が、彼女の現状大きく変化させます。
この話を一作目に掲載されるのはマハさんに試されているなぁと感じました。真央の現状を思うとこの話でほしいのは間違いなく救いです。でも、今作のテーマを考えると彼女たちに本当の救いはもたらされないんです。その中でどう結末を持ってくるのか、ページを捲る手が震えながらも一気に読んだところ、あぁ…こうなるのかと痛む心臓をさすりながら一度本を閉じました。
ただ、そこに至るまでの官能的で甘美な言葉の数々は、ぜひ味わっていただきたいです。
二作目『楽園の破片』
マハさんらしいアートが密接に絡むお話です。今作のテーマとして必ず不倫は外せないだろうと短編集であることを知った時に予想しましたが、やはりきました。
断言するのもあれですが、「不倫」というテーマはいわゆる私にとって地雷の一つです。特に人生で何があったとかでは全くなく、今まで読んできた不倫が絡む小説でちゃんと幸せを掴む人など100%いないからです。ハピエン厨であり、主人公への感情移入をしてしまう自分にとって、早くそんな人捨ててしまえ、そんな人といてもあなたは幸せになれないからと叫びたくて仕方なくなります。
だから不倫だ…と気づいた時に一気に読むのが怖くなったのですが、キョウコのレイに対する愛情をマハさんは本当に真摯に大切に描くから、結局引き摺り込まれてしまいました。でも、そこの行き着く先は絶対に楽園ではありません。
三作目『指』
読了された方はお察しかもしれませんが、まさかの二作連続不倫小説です。ただ、こちらに関しては家庭のある男性ばかりに惹かれてしまう女性の話。感情移入は一切できない分『楽園の破片』よりは落ち着いて読むことができました。
こちらに関しては何よりも身体、特に手、指先の描き方が大変魅力的で、ドキドキしながら読みました。今作は不満の方が強かったのですが、それが愛に溢れた行為の場合、マハさんはどのように描くんだろうと気になりました。ぜひ読んでみたいものです。
四作目『キアーラ』
あっという間に半分を超えました。ここでは修復家のアキが主人公です。
この話のテーマは「誤ち」かなと個人的には思っています。
倫理的に許されてはいけない行為、修復家として許されてはいけない行為、人として許されてはいけない行為。それらが少しずつ絡み合いながら物語は完成されています。潔白な人など存在しなくて、誰もがどこかおかしくなっている。
五作目『オフィーリア』
こちらと一作目の『深海魚』が群を抜いてドキドキしました。
テーマである絵はとても美しく、見ていて惚れ惚れする作品ですが、この話を読んだ後私はこの絵に込められた想いを何も知らないで見ていたなと気づきました。
実際彼女がなぜ水に浮かんでいるのか、表面的に絵を見て楽しむのももちろん大事で、その感覚は初見の一度しか味わうことができない大事なものですが、一度見て綺麗だと思った絵についてもっと自身で調べてみたいものです。
六作目『向日葵奇譚』
大好きなゴッホの作品をテーマにした話。必ずマハさんはゴッホを取り上げてくださると思っていたので、トリで読むことができて嬉しかったです。
そこにあるのは白い紙の上に黒い文字で綴られた言葉だけのはずなのに、舞台における緊張感、ゴッホの作品から溢れる色彩、彼の過去と現在を生きる俳優の繋がり、そして真っ暗な闇の中で感じる視線を浴び、感動しました。
やはりマハさんの話は大好きだと実感する久々の読書でした。
七月は新潮、角川、集英社で例年通り文庫のお祭りもされると思うので、それを楽しみに日々頑張ります!
ここまで見てくださりありがとうございました。