新聞白旗8号:甘々王国で
精神的にとてつもなくしんどくなって、朝から小さな家出をして、海辺のデニーズに入って、キャラメルハニーパンケーキを注文したのです。
あまり食欲もなかったし、「身体に合っていない」とかかりつけの先生にも言われているから普段小麦粉は控えているし、そもそもデニーズに入ること自体が年に1度あるかないか、なのに。
それなのに、デニーズで、キャラメルハニーパンケーキ。
何の期待もなしに食べたのです。むしろ自分をいじめるような感じで食べ始めたかもしれない。
それが……、ガツンと甘いキャラメルソースが心に触れて、涙が出ました。その半端ない甘さが、なぐさめてくれてるのを感じた。
普段もストレスがかかると甘いものが欲しくなる傾向はあるのだけど、「あまりにも」な甘さだったこのキャラメルソース。普段なら甘すぎ!となるほどの甘さに、なぐさめられたことが意外でした。
甘さ。
比喩でなく、味覚としての真正の甘さ。
こんなふうになぐさめになってくれるなんて、どういうことなんだろか。子どもの頃に、何かつらいときに甘いものを母からもらったこととか、あったんだろうかな。もしかして、それが甘いキャラメルだったりしたのかな。
亡き母のことを思い出したら、また少し、なぐさめられました。
この歳になって、ひとりでデニーズでキャラメルハニーパンケーキを朝から食べて、泣いているって、客観的に見るとかなりやばい状況だったなあと思います。
でも泣けたことでからだがゆるんで、心がちょっとほどけて、自分を立てなおす糸口を、精神の指先でつまむことができた。
心を取り巻く環境に甘さが足りないときは、身体を取り巻く環境から物理的な甘さをガツンと補充するのもアリだ、と、身をもって知りました。
太るとか、甘いものは脳にも体にも負荷をかけるとか、いつも罪悪感を持ちつつ甘いものを食べているフシがあるけど、本当に困ったときに助けてくれるいいものとして、まっすぐ感謝して食べたらいいんでした。
江ノ島のデニーズさん、キャラメルハニーパンケーキさん、ありがとう。
取り組んでいることについて一方的に厳しい意見を投げつけられたり、セクマイであることは病的だと断定されたりすることが続いて、私は本当に、甘やかされたかったみたいです。
甘々に甘やかされたかった。そんなじゃいけない、あなたのやり方はなってない、あなたの在り方はどうかしている、そもそもあなたは病気だ、と断定されると、確かにそれはその通りかも、とまず思ってしまうから。
そんな辛口さを帳消しにしてくれる、圧倒的甘さに、救われたみたいでした。
ひとごこちついて、感じていることをばーっと書き出していったら、あ、あのときほんとはニコニコ笑って聞いていたかったんじゃなかった、こちらの状況を説明してあなたの言ってることは当てはまらないと伝えたかったんだった、と気づけた。
そういう機会さえももらえないなら、静かに距離を置きたいんだ、ということにも。
誰もがよかれと思って、信念みたいなものを持って、ものを言ったりしたりしているのはわかるので。
静かに距離を置いて、私はこの甘々王国でリカバリーを図るのだ。
泣き寝入りに見えるかもしれないけど、前向きなとこが違う。白旗を上げながら進むのがわたしの流儀。
元気が出たら、また愉快に歩き出せると思うのだ。