Flos filius eius

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  • 創造の小径

    伝説的な編集者 Albert Skira 企画の「Les sentiers de la création」.1970年代、新潮社は全巻の版権を取得し「創造の小径」として連刊した.その全書を評する.

最近の記事

都市に懸ける呪詛: クレジオ『悪魔祓い』

言葉は追われた、沈黙は殺された、海も、星も、大地も喋ることをやめた。その代わり都市が擡頭した。都市は悪魔になって人びとに憑依し、都市の目と言葉を授けた。けれど都市へ呪詛を与え、都市という名の悪魔を肉体から祓った時、わたしたちの肉体はインディオのそれに変容する。 『悪魔祓い』 叢書「創造の小径」の3冊目として出版されたのは、ル・クレジオの『悪魔祓い』(1975)。訳は高山鉄男。原題は『Haï』(éditeur d’art suisse Skira, 1971)。 タヒュ・

    • 構造の呪物「仮面」: レヴィ=ストロース『仮面の道』

      異なる民族間で継承された神話には秘かなる相互の連関がある.同じように仮面の造型の背後にも構造的なイデオロギーがある.では、その構造は芸術家たちの営みにも認めうるか. 『仮面の道』 新潮社による叢書「創造の小径」の17冊目として出版された『仮面の道』(1977)は、同シリーズの最後から2番目にあたる本である[1].著者はクロード・レヴィ=ストロース.訳は山口昌男と渡辺守章による.原題は『La voie des masques』(éditeur d’art suisse Ski

      • 絵画を愛する者は死を愛す: ガエタン・ピコン『素晴らしき時の震え』

        言葉には、彫刻には、陶芸には、そして絵画には堰きとめられた時間が内在する.時間を愛する者は死を愛する.そうであるならば、絵画を愛する者は死を愛す. 『素晴らしき時の震え』 『イカロスの墜落』の記事において、ガエタン・ピコンは作品に内在する流動的な時間について考察している点を指摘した.その言説は同書の出版の1年前に手がけられた『Admirable tremblement du temps』(éditeur d’art suisse Skira, 1970)――邦訳『素晴らしき

        • 堰きとめられた時間: パブロ・ピカソ、ガエタン・ピコン『イカロスの墜落』

          言葉には、彫刻には、陶芸には、そして絵画には堰きとめられた時間が内在する.時間は未だ動きをやめず、過去と現在とを往還し、まだ見ぬ未来へ迸ろうと求進性を守っている.ゆえに、作品とは時間の齎らす運命――破壊を用意する. 叢書「創造の小径」  叢書「創造の小径」(原題: Les sentiers de la création )は新潮社から出版された一連のシリーズである.もともとこの叢書はアルベール・スキラの編集のもとに企画された[1].新潮社は1970年代に「全巻版権取得」し

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          4本