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お客様や社員をおもてなしする「お茶出し」「見学ツアー」がしたい(知的障害・発達障害のある社員のためのお仕事ハック)~ 総務からはじめる、障害者雇用ノウハウ ~

はじめに(チームより)

「こどもたちのために、日本を変える。」事業開発、政策提言、文化創造の3つの軸で、こども・子育て領域の社会課題解決活動と価値創造を行う国内最大規模のNPOである「認定NPO法人フローレンス(詳しいご紹介はこちら>>)」において、総務関連チームで障害者雇用スタッフのサポートを担当しているジョブコーチ*1の和田です。自己紹介はこちら>>

知的障害・発達障害のある社員が持つ悩みに対して、本人やサポーターが今日から取り入れられる「ちょっとした、お仕事ハック」をご紹介しています。

フローレンスの障害者雇用についての視察・講演の問い合わせは、 https://florence.or.jp/contact/よりご連絡ください。


▼本日のお悩み
「障害のあるスタッフに、お客様に来客対応をしてもらいたいのですが、どのような準備をしたらよいでしょうか」

お仕事ハック①飲み物を提供する(お茶出し)

お客様がいらした時の来客対応の王道に「お茶出し」があります。日本茶を急須で入れるだけでなく、給茶機で入れたお茶を提供したり、ペットボトルでお出しする企業も現在では多いでしょう。

障害者雇用のスタッフに「お茶出し」の業務を依頼する場合は、何度か練習が必要です。

■飲み物提供の仕方(例)
・ドアを3回ノックします。会議室に入ったら「失礼します」と一礼する
・「失礼いたします」と言いながら、上座(出入り口から一番遠い席)の方からお配りする。
・お盆を脇に抱え、一礼して退出する
・来客が帰られた後には片付けをする(コップやペットボトルの処分、机やお盆の消毒)

フローレンスでは、社内イベント参加者に、障害者雇用のスタッフが飲み物の提供をする場合があります。お客様と接する機会がないスタッフも多いので、お客様とコミュニケーションがとれる良い機会です。

また、フローレンスには、「フィーカ」として社内に親しまれている毎日15分程度の休憩時間があり、障害者雇用のスタッフが、本部スタッフにコーヒーを提供する業務を請け負っています。コーヒーを提供しながら、業務で関わることがないスタッフとコミュニケーションをとることで、楽しさを共有したり、他部署からの切り出し作業のきっかけになったりします。

フィーカでのコーヒー提供業務は、コーヒーメーカーを使ってコーヒーを作り、お菓子の準備を行って、休憩に来たスタッフに紙コップで飲み物を提供し、片付けまで行います。

お仕事ハック②オフィス見学ツアー

お客様がいらした時に、オフィスを案内する「オフィス見学ツアー」の役割を障害者雇用のスタッフが請け負っています。

紙芝居のような形式で裏面にセリフを書いておき、読み上げられるようにしておくことで、暗記の必要がなく、内容が紹介者によって違う、ということも避けることができます。フローレンスでは、このオフィス見学ツアーキットを使い、15分ほどでオフィスを案内しています。

「オフィス見学ツアー」で使う案内板(表)
「オフィス見学ツアー」で使う案内板。裏面には読み上げる原稿が書いてあります。
フローレンスの事業等についてご紹介する裏面原稿。読みにくい漢字には練習時にカナを追記しました。
質問タイムの裏面原稿。わかる部分は自分の言葉で答えるようにしています。

「オフィス見学ツアー」をはじめたきっかけは、フローレンスの障害者雇用の視察が増えたことでした。

障害者雇用のスタッフが、組織の説明、オフィスの説明、障害者雇用の説明をしながら、最後に自分の一日のスケジュールを説明し、質問なども受け付けています。
視察に来てくださった皆さんの共通の「フローレンスの障害者雇用のスタッフはどんな仕事をしているんだろう?」という疑問に、短時間かつ具体的にお応えできる取り組みになっています。

今では、障害者雇用の視察だけでなく、インターン学生やフローレンスを寄付で応援してくださっている法人、個人の皆さん向けのイベントでも見学ツアーを担当しています。

お仕事ハック③社員向けオフィスツアーをする

フローレンスの本部オフィスでは、入社者や産育休などのお休みからの復職者向けに、オフィスの使い方や、郵便物の出し方、備品のありかなどを伝える「社員向けオフィスツアー」を定期開催しており、その案内役を障害者雇用のスタッフが行っています。

オフィスツアーでは、写真のようにオフィスのことをまとめたマニュアルを見ながら、説明していきます。

このようなこともお伝えします。

「オフィスの防災情報マップを確認する」
「入室や最終退出方法を確認する」
「落とし物をした時の対応方法」
「備品の借り方・返却方法」
「会議室の予約方法」

現在は、2024年3月に特別支援学校を卒業したばかりの総務の障害者雇用のスタッフが、ツアーを担当しています。ツアー担当になったスタッフが総務業務全般を覚える機会にもなるだけでなく、見学に参加した入社者や復職者としても、総務に「ツアーを担当してくれた顔なじみ」がいることで、オフィスの使い方を気軽に聞ける関係性をつくることができます。ツアー担当者、参加者双方にとってプラスの施策となっています。

最後に

オフィス勤務をしている障害者雇用のスタッフは、特定の事務作業に従事することが多く、業務に関わらない他のチームメンバーや、お客様やユーザーと関わる機会が少ないかもしれません。

お客様や他チームのメンバーへのお茶出しや、オフィス見学ツアーを通じて、自分の仕事を知ってもらうことは、「顔なじみ」を増やし、業務の切り出しや、仕事への意欲向上に役立ちます。まずはチャレンジしやすい社内向けの取り組みから、始めてみませんか。

*1「ジョブコーチ」 企業に在籍し、同じ企業に雇用されている障害のある労働者が職場適応できるよう様々な支援を行う人を、企業在籍型ジョブコーチといいます。

執筆の背景

障害者雇用関連の情報は、採用・育成の事例やノウハウばかりで、採用した障害者雇用の社員に「どのような業務を、どうやってもらうのか」のノウハウが足りていません。

そこで、実務ノウハウや、障害者雇用チームの立ち上げ経緯などを公開することで、障害のある社員自身や総務担当者が、はじめの一歩を踏み出せるシリーズを立ち上げました

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ここまでお読みくださりありがとうございます。一つだけお願いをさせてください。
認定NPO法人フローレンスは障害児の保育・支援問題、ひとり親の貧困問題、赤ちゃんの虐待死問題、などの子どもや子育てに関わる社会課題の解決に向けて多くの方からのご支援をいただきながら取り組んでおります。何かの形で応援したい、と思ってくださった方は、フローレンスへの寄付をご検討ください。

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