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非反復的音楽/『Microjunglizm』から『E-Boyz Revenge: 230 BPM Eternal』まで

先月放送したMxCx Show@PRSPCT Radioは、Murder Channelの18周年記念としてMedici Daughter、Dev/Null、2methylが参加してくれた豪華な内容となった。Medici DaughterはポストIDM+UKGなフレッシュなサウンドを聴かせてくれたし、2methylは新曲と未発表曲だけで構成したスペシャルなセットであった。そして、15年以上の仲であるDev/NullはポケットサイズのサンプラーPO-33 Pocket Operatorで作った自身のジャングル・トラックをミックスしたセットを披露してくれた。この日の放送はPRSPCT Radioのアプリにてアーカイブが公開れているので、是非ともチェックして欲しい。

近年、Dev/NullはPO-33を使ったマイクロ・ジャングルなるスタイルの曲を製作しており、それらのジャングル・トラックを2020年にModern Urban Jazzから『Pocket Selector: A Selection Of Micro Jungle』というアルバムで発表。去年はEvar Recordsから『Microjunglizm』という12"レコードを発表している。

PRSPCT Radioに提供してくれたミックスでは、上記の作品から厳選されたマイクロ・ジャングルがプレイされ、他のジャングル・トラックとはまったく違った斬新なサウンドと展開を味わえる。ベーシックな部分は王道的なジャングルのフォーマットに忠実であるのだが、Dev/NullらしいBPM以上の高速感とアグレッシブな姿勢が活かされており、彼独自のスタイルを確立している。

スウェーデンの電子楽器メーカーTeenage EngineeringによるPO-33はレコーディング用のマイクとサンプル・メモリーが搭載されたサンプラー。小型のポケット・サイズで可愛らしいデザインとなっており、価格も安価で入手しやすい。

Dev/NullはPO-33について、ジャングルを生み出した当時の機材と同じようなローファイなサウンドが魅力的であると発言。『Microjunglizm』のアレンジとシーケンスはPCを使わずに行ったらしく、『Pocket Selector: A Selection Of Micro Jungle』の頃よりもPO-33を使いこなしている印象を受ける。

『Microjunglizm』では、ダンスホールやオールドスクール・ハードコアのサンプルが散りばめられているが、Rebound Xのグライム・クラシックをサンプリングした現代的なジャングル(レコード盤に収録)も披露。『Microjunglizum』はジャングルを軸として現在までに生まれた数々のダンスミュージックとその手法、情熱を繋ぐ壮大な音の旅を楽しめる。

我々の世代からすればDev/Nullといえば、ブレイクコア・シーンの中で最速最狂の地位におり、グラインドコア・バンドのドラマーであったキャリアを反映させたブルータルな曲から、レイヴ・ミュージックを切り刻んだハイパーな曲、フリージャズを連想させる即興性の強い高度なビートの展開を駆使した曲など、唯一無二な存在であった。

当時から既にジャングルへのアプローチは行っており、2007年には「92-94 Oldschool Jungle Mix」というDJミックスをCock Rock Discoで公開し、2010年にDros:tikkからリリースされた『Shards Of Rhythm』のタイトル曲は『Pocket Selector: A Selection Of Micro Jungle』に通じる伏線が感じられる。

僕にとってブレイクコアとの出会いはグラインドコアのそれと同時期で、12か13歳くらいのことだった。完全に「情報過多」って感じだったよ。グラインドコアはギターとドラムを追いきれないくらい速く演奏して、何が起きているのか理解して、それを維持するために神経を研ぎ澄まさなければいけない。コンピュータでだったら、人間の演奏に縛られず、もっとパワフルで、もっと速く、クレイジーな方法でそれをやる方法があるはずだと僕はいつも想像してた。ジャングルやドラムンベースにも興味があったんだけど、すごく複雑で、極めて反復性の少ない作品を僕は常に求めていて、そういうものっていうのは当時(ジャングルの全盛期が過ぎ去ってテックステップが出てきた頃、だからほとんどの楽曲はとても反復性が強かった)から多くはなかったんだ。
当時は高速なガバやスピードコアなんかもいくらか聴いていたんだけど、繰り返しばっかりで僕にとってはクレイジーには聴こえなかった。それらの極端に高いBPMでさえも、反復の性質はそれらを感覚的に「遅く」聴こえるようにするんだ。幾重にも重なったブレイクビートが速くなっていったのとは反対にね。

Dev/Null『ブレイクコア・ガイドブック 上巻』

更に辿れば、2004年にTigerbeat6のサブレーベル Violent Turdからリリースされた『E-Boyz Revenge: 230 BPM Eternal』にも現行のDev/Nullに通じる側面が随所で表れており、本作のサンプル素材として使われているジャングルのルーツであるブレイクビーツ・ハードコアやダークコアといった90年代初頭のレイヴ・ミュージックはDev/Nullの音楽のコアパートにずっとあった。
Dev/Nullは反復性の高いもの、つまりは通常のダンスミュージックに対する反骨精神的な姿勢を自身の曲に込めていたので、そんな彼がジャングルを深く探求するのは必然であったのだろう。

デスメタルとブレイクコアに熱中してた頃、同じくドラムンベース、ジャングルにも夢中だったんだけど、常にもっと細かく刻まれてて、風変わりで、密度の高い、複雑な作品を求めていたんだ。1999年から2001年頃、ドラムンベースはそこから離れていって、よりテクニカルにはなったけど、より反復性が高く分かりやすいものになってしまったと感じた。だから、1992年から1995年頃の、より古いハードコアやジャングル作品を掘るようになったんだ。僕にとって、それらの音楽が僕が聴きたいものに近いんだ。それらの楽曲はシンコペーションを使ったブレイクの複数のレイヤーをもっていて、より複雑でクレイジーなサウンドのビートになっていたからね。それに、もっとローファイで確固たる信念があって、ちょっと汚さもあって。だから僕はオールドスクールなレイヴやジャングルに完全に恋に落ちて、それらと、非常にクレイジーで情熱的で複雑に刻まれたドラムとを組み合わせてみたくなったんだ。

Dev/Null『ブレイクコア・ガイドブック 上巻』

2010年代に入ってからは、Blog To The Oldskoolで入手困難なジャングルのレコードを紹介し、定期的にDJミックスを放送。出所の分からないウルトラレアなジャングル・トラックや、皆が忘れている重要な曲やサブジャンルなどを丁寧に纏め上げ、埋もれてしまっていた数々のプロデューサー達に再び光を当てている。Dev/Nullの尋常じゃないディグ力と行動力は世界中のジャングル・マニアからリスペクトされ、ジャングルだけではなく様々なシーンのトップ・プロデューサーやDJ達もDev/NullのDJミックスやSNSを熱心にチェックしている。

自分はDev/NullのBlog To The OldskoolでのDJミックスでジャングルへの見方が随分と変わり、それによってドラムンベースやダークコアへの注目も高まった。お気に入りのDJミックスは沢山あるが、特に以下のミックスは素晴らしい。

ここ数年は定期的にジャングルのリリースを行ってくれており、盟友Tim Reaperとのコラボレーションはどれも良作だ。Dev/Nullのジャングル・トラックは伝統的なジャングルの濃い部分を凝縮しつつも、何か新しい要素や他とは違った要素を付け足すのを忘れていない。豊富な知識とピュアな情熱を捧げたDev/Nullのジャングル・トラックはジャングル以外のリスナーにも好まれるはずだ。

Dev/NullはBlog To The Oldskool以外にも、90年代に作られたジャングルの未発表曲やダブプレートを公式にレコード化する動きにも力を入れている。DJミックスでは最新のジャングル・トラックもプレイし、新旧全時代を混ぜたジャングルの魅力を発信し続けている。

Dev/Nullに関しては他にも紹介したいDJミックスや過去の作品はあるのだが、かなりの数になりそうなのでまた別の機会にする。まずは、PRSPCT Radioに提供してくれた最新のDJミックスをチェックして欲しい。『ブレイクコア・ガイドブック』でのDev/Nullのインタビューは10ページあり、グラインドコア・バンド時代やブレイクコアとの出会い、日本に来た時の思い出や近年のジャングルの活動についてなど話してくれているので、こちらも是非ご覧頂きたい。







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