FFF『Part Of The Order』
僕の自慢の友人であり、素晴らしい音楽家のFFFが先日ニューアルバム『Part Of The Order』を発表した。
近年、FFFはMYORとそのサブレーベル、7th Storey Projects、Foxy Jangle、Vibez '93などのモダン・ジャングル・シーンを盛り上げている先端的なレーベルからコンスタントに12"レコードをリリースし、Parallax RecordingsやFuture Retro Londonのコンピレーションへの参加などでも、ジャングル・ファンを中心にオープンマインドな音楽好き達から熱い支持を集めていた。
個性派ぞろいのモダン・ジャングル・シーンにおいて、FFFは豊富なサンプリングソースと情熱的なアーメン・ブレイクを重ね合わせた深みのある唯一無二のジャングル・トラックで常に同業者とコアなファンからの信頼を勝ち得ている。
2020年には自主レーベル3AM Eternalを立ち上げ、Artificial Red、Duburban、Coco Bryce、そして自身の12"レコードを発表。FFFのビジョンが反映された3AM Eternalの作品は、ジャングルとブレイクビーツの濃い魅力を固めた良作ばかりであり、レーベルオーナーとしても素晴らしい才能を発揮している。
そして、つい先日Fresh 86からフルアルバム『Part Of The Order』を発表。レコードは2枚組仕様となり、Vol. 1が6月にリリースされ、Vol.2が8月にリリースされた。
『Part Of The Order』に収録されている曲には、FFFの拘りの強いアーティスティックな側面と、常に探求心に満ちている音楽愛好家な側面が非常に良いバランスで注ぎ込まれており、ソウルフルでエッジさがある。現代的な空気感も良い味付けとして反映されており、プロダクション面において更なる進化を果たしている。
『Part Of The Order』のオープニングを飾る「Planet's Rhythm」は、高揚感を煽るフットワークのビートと心地よいメロディが合わさった緩やかな曲で、アルバムのオープニングに相応しい。限られた音色だけで極上のグルーブを生み出しており、どんなテンションのときに聴いてもフィットする。
続く「My All」「Art School Crush」は透明感のあるアンビエンスが充満するアートコア的フィーリングのあるジャングルで、Fresh 86のレーベルカラーにマッチしており、90'sドラムンベースのファンにもオススメだ。こういった方向性では、2018年にリリースされた『Never Give Up』も印象深かった。
FFFの低音の美学を感じさせる「Disco Under Taker」は、クールかつファットなベースラインとクラッシュ・サンプルが印象的でUKダンスホールのデジタル感と、偉大なサウンドシステム・カルチャーからの影響を感じさせる。
FFFはサウンドクラッシュのサンプル使いが非常に上手く、まだ誰も使っていないワード/スピーチ/ラガマフィンを的確な場所に配置し、トラックの爆発力を上げ、曲にストーリー性を付け足している。『Part Of The Order』でも、サウンドクラッシュのサンプルが随所で使われており、Remarcを筆頭としたオリジナル・ラガジャングリスト達が開拓した表現方法をアップデートし続けている。FFFがサウンドクラッシュのサンプルを使う際には、自身のアティチュードを込めていると思われ、そこに静かな熱を感じさせる。
2019年作『The Dance EP』では、FFF流のルーディーなラガジャングルが堪能出来る。
ブレイクコア・メンタリティがどことなく表れた「Ambush」は、FFFがPRSPCTからリリースしていたフットワーク・ジャングルの進化系と言える。巷のフットワーク・ジャングルよりも、表面的じゃない部分でハードさが埋め込まれており、FFFが2000年代に展開していたラガコアのフィーリングを思い出させる。The Duke Of Juke(Noize Creator)とも近しい独自のフットワーク・ジャングルはブレイクコアのファンにこそ聴いて欲しい。
『Part Of The Order』は中盤から後半に掛けてFFFのコアなパートを映し出している。「J.W's Experiment」や「Time Displacement」で分かりやすく表れているかもしれないが、デトロイト・テクノとジャングルを融合化させた曲が幾つかあり、「Time Is Eternal」は直球にデトロイト・テクノに挑戦している。
FFFはデトロイト・テクノから強い影響を受けており、本人もそれを公言していた。以前からメロディやフレーズの音色にそれらの影響は表れていたが、『Part Of The Order』では今までとは違った形でデトロイト・テクノの要素を落とし込んでいる。FFFのデトロイト・テクノ+ジャングルなスタイルは、Urban TribeやDrexciya周辺のディープでオルタナティブ性のあるテクノとの親和性を見出せ、熟年層のテクノ・ファンやDJにも刺さるはずだ。
『Part Of The Order』は、もしもオリジナル・デトロイト・テクノ勢がジャングルを作っていたら?という回答と言えるかもしれない。今年アルバムをリリースしたLord Of The Dも、同じ流れにあると思っている。
『Part Of The Order』はFFFのBandcampにてデジタル版が購入可能となっており、国内のレコードショップでLPが販売されている。このアルバムは絶対の自信を持ってオススメ出来るので、是非チェックして欲しい。もし、アルバムを聴いて楽しめたのなら、周りの音楽好きにも教えてあげて欲しい。『Part Of The Order』が一人でも多くの人に聴かれるのを願っている。