本望でございます
南国少年パプワくんが好きだ。
前半のギャグテイストももちろん好きで、くだらなくてずっと笑ってられるんだけど、後半になって始まるシリアス展開がたまらない。特に、「男の子はいつかシンタローになる」とまで言われているように(言っているのは僕です)、主人公のシンタローが、パプワに泣きながら叫ぶシーンがあります。
シンタローは物語の中でわりと散々な目に遭って、アイデンティティを見失うレベルで傷を負い、死ぬほど打ちひしがれてるシンタローとパプワのシーンなんですよね。
シンタローは24歳で、わりと年齢的にはもう大人という設定なんだけれど、大人が泣いたり喚いたりすることがみっともないと思いながらも、大人になってからのほうが辛いことだらけだと、パプワに叫ぶ。歳をとるほど人は弱くなるんだと。
この独白がすごく強烈で、当時読んでいた子供心にも、大人ってそうなんだ…という印象が深く、いまだに忘れられなくて、そして自分も歳をとり、「本当じゃん……」となる。人は歳をとると弱くなることばかりで嫌になる。
シンタローにめちゃめちゃ共感する。何回読んでも共感する。読むたびに弱くなっている自分が、深く共感をしている。そんな俺とシンタローに、パプワはこう言う。
「シンタロー 泣くのって悪いことか?」
大人になればなるほどこの一言が刺さる。たしかに泣くこと自体は悪くない。悪いと思ってしまうことが、もしかしたら悪い。パプワは、大好きなじいちゃやみんなとの別れのときは「泣けなかった」し、「泣かなかった」。それでもシンタローが島を出て行ったときには
「泣いていたんだと思う」!
この、泣いていたんだと思う、がまたいい。たぶん泣いてはいないんだろうけど、泣いていたんだと思う!と表現する。ここが本当に上手い。
そして極めつけは
「ぼくは強くなったぞ シンタロー」
泣くことが弱いとかみっともないとか言っていたシンタローに対して、泣けなかった自分が泣いていた、だから強くなったんだとパプワは言って、シンタローとすべての大人を肯定する。対比もうまいし絵の構図も本当にすごく良くて、さすが柴田亜美って感じですね。
パプワくんには他にも良いシーンがたくさんあるので是非読んでみてください。ちなみに私がいちばん好きなシーンは、重度のブラコンであるシンタローのこれです。