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銀と金 【竜の仔の物語−序夜異譚−】

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虐げられた者たちの、それでも屈することのない意思の話。 【完結済】
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#オリジナル小説

銀と金  −前編

銀と金  −前編

竜の仔の物語 −序夜異譚−

 ルグは、はじまりを思い出そうとしていた。いつからここに居るのか。どうしてここに居るのか。少しだけこの場所に嫌気がさしてくる時には決まって、はじまりを思い出そうとした。

 特に今夜のような蒸し暑い夜。格子窓から湿気った南風が吹き、牢の四隅に積った糞尿の臭いをかき混ぜる時などは、ここに来たはじまりを、彼は必死に思い出そうとするのだった。

 自分の名が『ルグ』だという

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銀と金 −中編

銀と金 −中編

 ミルマが去ると、ルグは牢の隅へしゃがみ込む。藁をかき分け、傷の付いた床を見つけると、床を剥がし、石の隙間に並んだ小瓶を取り出す。

 彼は小瓶のふたを開け、まず匂いを嗅いでみる。腐った匂いがする。違う瓶も試してみるが、どれも同じ匂いがする。ようやくひとつだけ違う匂いの小瓶を見つけると、彼は少しだけ舐めてみる。

 もの凄い刺激臭と酸味が舌の上を伝わり、身体中が痺れる。一口飲んでみると、頭の奥がぎ

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銀と金 −後編

銀と金 −後編

「そういうことか」

 アイカレが杖で痩せた細ったミルマを小突く。彼女は何の反応もしない。すでに気力が尽きてしまったのだ。

 「お前がたぶらかしたのか」アイカレはもう一度彼女を小突き、そうして杖を振り上げる。

 そこで反射的にルグは前へ出る。しかし、彼はなぜそうしたのかが自分でもわからない。

 ぼんやりと佇むルグを見ると、魔法使いは安心し、ルグの肩を強かに打ち付ける。そして何やらぶつぶつと呪

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