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自分らしく生きることとは
ある日突然、誰かの何気ない言動や、偶然の出来事によって、自分が無意識に抱えている悩みや迷いに気付かされることがある。
それがあまりに唐突に、そして的確に、強く太く心を貫いてきたら、その貫かれた部分の根本には、一体どんな思いが隠されているのか、知るべき時なのだと思う。
なかったことにはできず、その気持ちを避けることもできない。
自分がこの先進んでいく未来のために、蔑ろにはしておけないのだと、心と頭と体が本能的に反応して、知る衝動を止めることができなくなるのだ。
目に映るもの、聞こえてくるもの、思考、感情のすべてに疑問が生まれ、その意味を知るために、深く、深く深く、自分と対話する。
そこから、これまでの自分の過去、経験の中に、納得することなく過ごしてきた出来事や思いがあったことに気付いた時、その悩みの根本の片鱗に触れる。
抑え込み、諦め、ごまかした心は、たくさんの言い訳で隠し続けてきたので、なかなか本心にはたどり着けないものだ。
過去の自分自身と向き合うことは、決して簡単なことではないけれど、
「本当はどうしたかったのか」と、現在の自分が過去の自分に問い、答えを明らかにすることで、やり場なく押し込まれてきた思いが解き放たれ、これまでの自分を慰め、癒すことができるようになる。
クリアになった心で想像する未来は、これまでとは違う世界観が広がり、とても安らかで清々しい。
軽くなった心は、行動することを促し、今までためらっていた一歩を踏み出す勇気を与えてくれる。
不思議なことに、人生を変えるような出会いは、驚くほど絶妙なタイミングで訪れる。
心の底にある本心は、自分の無意識のうちにすでにうずき出していて、声を上げていたのかもしれない。
その声を聞きつけ、引き寄せられたかのように遭遇する。
このところ、自分らしさについて考えていた。
ふわっとしていて、どんな風にも解釈できる言葉だけど、自然体で生きることは、実はとても難しく、尊いことだ。
人は、他者と関わり合いながら生きている以上、相手への配慮が欠かせず、気遣うことを求められる。
本当の願望があっても、期待に応えるためだったり、優先すべきことだったり、機嫌を伺いながら過ごしたりしているうちに、その願望がなんだったのか、自分らしさとは何なのか、わからなくなってしまう。
穏やかに日々を過ごすために、傷つくことを避けて無難に生きることは、ある意味で幸せなことかもしれないけれど、本心はどうだろうか。
人との出会いや出来事が本心を貫いてきたとき、気づかぬふりができるだろうか。
それでも現状に納得しながら、同じように生きることはできるだろうか。
自分の心と向き合うときは、たいてい人生の岐路に立っているときだ。
未来への理想は、実は過去の自分の中にすでにあって、理想を叶えるためには、心の状態を知っておかないと先には進めない。
どんな時も、自分の心の声を聞きながら、納得できる答えを探して、丁寧に選択していくことが、自分を大切にするということなのだと思う。
『自分らしく生きる』とは、
これまでの選択や経験と向き合い、弱さを認めて、自分に正直になること、そして、どんな未来にしたいかを常に心に思い描きながら、自分との約束を守り、新たな経験を積み上げていくことだと、私は思う。
花の仕事をしていると、人の、人生の節目に立ち会っているような気持ちになることがある。
励まし、労い、感謝、慰め、和み、癒し、喜び、悲しみ…
人生の節目を迎えたときや、新しい一歩を踏み出すとき、別れを経験したときなど、人は様々な感情を抱く。
そしてその想いを、花に込めて贈る。
花は人のさまざまな思いを受け止めて、どんなときでも優しく寄り添い、心を穏やかにしてくれる。
ただ、贈る相手は、他者や家族であることがほとんどで、自分自身であることはとても少ない。
それほどに人は、自分への労いや励ましのために花を飾ることを意識していないのだろう。
どうか、日頃を頑張り抜くあなた自身のために、花を贈って欲しい。
一番大切なのは、自分自身の心身が健やかであることだ。
他者を気遣う優しさを、あなた自身にも向けて欲しい。
花があるだけで、気持ちは明るくなり、悩みや迷いと向き合うあなたを勇気づけてくれるだろう。
花があって良かったと思える瞬間、その優しさを感じたとき、花のある暮らしがより身近になるはずだ。
人生は長く、何度も岐路は訪れる。
自分らしく生きるために、暮らしの中で寄り添う花の温もりを感じながら、あなたの心を大切に育んで欲しいと思う。
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