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【ふわっと便りvol.4】“詩を作ってみる!”講座から

このテキストがあまりたくさんの人に読まれないこと、つまりインターネットに載って拡散されたりしないことを願っているけれど——

フラットおおたのみなさんは詩がうまい。

詩の講座の様子

わたしは詩人で、あちこちで詩の講座をしている。なかには経験者も来るカルチャーセンターの講座や、学校の先生を対象とした研修会なんかもある。

それと比べてもうまい。読むのも、書くのもうまい。詩にまちがいはないけれど、うまい、へたはそれなりにある。あったとしてもそこまで重要でないから気にしなくていいのだが、しかしあるにはある。

フラットおおたでは、読むほうを惹きつける引力を持っている作品が、毎回の講座でかならず出てくるのだ。

ここで生まれる詩には、だめな自分を笑いとばすような強さがある。

私へ。できればでいいんだけど。
切っといてください。
関心と電源。

けんちゃん「手紙」

僕は僕に不採用の通知を渡した。

関柊二「履歴消迷書」

あの人は言った 「ひくつになりすぎですよ」と
あの人は言った 「悪い想像力が強すぎる」と

いぬ「雪どけの路上」

日常に対する、まっすぐな洞察がある。

息を吸う。
息を吐く。
日に一度と言わず笑っているのだ。

「感動」青見鳥

私は人と人の間でつくられるのだ

「差異」なかじー

忘れることとは記憶である
ぼんやりとかすむりんかくを
何度もなぞることで
くりかえした心をしまうことである

きつね「無題」

そしてなにより、言葉を書くことに対する好奇心がある。

どこの銀河系で待ち合わせようか
泳いで何億光年も越えられるだろうか

「ペンギン・ランデブー」桜花

私はAの全てを否定する
私はAのことが好き

タマムシ小五郎「私とA」

降ったかと思えば
カラッと晴れる。
しかし太陽はキリっと
私を見ている。

KS「梅雨と雲」

ふだん、危惧していることがある。社会は詩がへたになっている。そして、詩がへたな社会は、きっとあまり長続きしない。

冗談と思われるかもしれないけれど、けっこう本気だ。詩なんか書いてもなんともならない、と言われても、べつに言いかえすつもりはないのだが、問題は詩は詩だけではないということだ。

らんぼうなことを言えば、大切な人にかける言葉にも、電車の中で聴く音楽の歌詞にも、仕事で使う言葉にも、人を呼ぶためのチラシに書いたメッセージにも、本当はすこしずつ詩が混じっていないといけない。けれどそれが減ってきている。

だから、おおたのみなさんが頼もしい。みなさんが詩を持っていまの場所で暮らしているだけで、社会から詩がなくなっていくのが一歩食いとめられるような気がしている。

ということで、これからも毎月詩を持ってやってきますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします!

詩人・向坂くじら

詩人。1994年名古屋生まれ。「国語教室ことぱ舎」(埼玉県桶川市)代表。Gt.クマガイユウヤとのユニット「Anti-Trench」朗読担当。著書にエッセイ集『夫婦間における愛の適温』『犬ではないと言われた犬』(百万年書房)、小説『いなくなくならなくならないで』(河出書房新社・第171回芥川賞候補作)ほか共著など。慶應義塾大学文学部卒。

※「詩を作ってみる!」講座は、毎月第四金曜日に行っています。

1年半の間利用者さんが書いた詩をまとめた詩集『ことのは』

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