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アイルランドの修道院の「大事な記憶」

30年以上前に、英会話の先生と友人と三人でアイルランドに旅行に行きました。
その時、一緒に行ったアメリカ人の先生がカトリックだったご縁で、
ダブリンの修道院に泊めていただきました。

今考えると、キリスト教徒でもない私たちが、かつての修道女の方が使っていた部屋に泊まるなど、大変貴重な経験でした。

修道院は広大な敷地の中にあり、遠くにあの「タラの丘」が見えました。
一人部屋には、簡素なベッドと机だけ。机の上には聖書があり、
壁には、十字架がかかっていました。

夜は真っ暗で、緊張して、少し怖いような、厳かな気持ちで過ごしました。

朝、早く目が覚めて、庭に散歩にでた時のことです。

向こうから、シスターが歩いてきました。
前日にはいなかった方でしたが、とても優しい眼差しの
すらっとした上品な方でした。
そのシスターが、私に何か英語で話しかけてくれたのですが、
私はそれが聞き取れず、よくわからないというようなことを言ったのだと
思うのです。

すると、そのシスターが穏やかに微笑んで、
青い空を指さし、
「sky」
次に、片手を耳にあてて、聞いてごらんなさいという仕草をされて、
「bird」
少し腰をかがめられて、すぐそこに咲いていた花にそっと触れて、
「flower」
そして最後に、ご自分の胸に手のひらをあてて、静かに、
でも心を込めて
「Peace」とおっしゃいました。

言葉はたったそれだけでした。
たった四つの単語です。
時間にすれば、ほんのわずかな、たぶん10分もなかったのではと
思います。
名前も知らない方で、おそらくもうお会いする機会もないでしょう。

けれど、私はその場面が忘れられず、今でも鮮明に覚えているのです。

あの頃は、まだ若くて、シスターの深い思いはわかっていなかったように
思います。
しかし、自分が、あの時のシスターと同じくらいの年齢になり、
いろんな経験や思いを経て、その時のシスターの言葉のその奥にあった
深いものが、今頃わかったような気がするのです。

「美しいものを美しいと感じる心で、それを喜び、感謝して、
またそうできる環境(平和)に感謝し、
自分自身の心の中を常に平和にしておくのですよ」と、
そう言ってくださったのだと、思うのです。

きれいごとではなく、それが本当に大事なことなのだと、
今頃わかったのです。

今日も、感謝と喜びを心に過ごしていきましょう。

読んでくださってありがとうございます。



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