デザインと摩擦 【#005】
デザインというのは、摩擦の調整だとおもう。
ここでいう「摩擦」というのは、物理的なテクスチャーのことではなく、人に与える感情や感覚における「ひっかかり」のようなもの。
例えば、「わかりやすい」というのは「理解に対する摩擦が小さい」ということになるし、「キャッチー」というのは「(とりわけ視覚や聴覚における)情報取得に対する摩擦が大きい」といった具合になる。
摩擦が大きければ何らかのストレス(負荷)がかかり、小さければストレスフリーになる。
ストレスがかかったほうがいいのか、かからないほうがいいのかは、場合による。
なので、デザインをするときには、この摩擦の調整をどうすべきか、を考えるというわけだ。
例えば、駅の改札でSuicaをタッチする部分の傾斜は〈13度〉になっている。
この角度がもっとも読み取りエラーが少ないとして、意匠権を取得しているほどだ。
こういう、だれも気づかないようなところに仕込まれた配慮は、摩擦のほとんどない、なめらかなデザインだとおもう。
一方で、ひっかかりを生むがゆえに優れたデザインもある。
広告やポスターなんかは、人の記憶に残った方がいい。
つまり、摩擦は大きいほうがいい。
クールで洗練されていることが、必ずしもデザインの正解ではない。
場合によっては、ダサい方がいいデザインになることだってある。
デザインの良し悪しを考える尺度のひとつとして、この「摩擦調整」の概念をもっておくといいかもしれない。
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